戦乙女の選ぶ道

藤原遊

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7章 影との戦い

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影が低い唸り声を上げながら周囲の空気を揺るがせた。
その異様な振動にフィオラの体は一瞬震えたが、すぐに集中を取り戻し、再び魔力を練り上げた。

「これ以上好き勝手させない!」

フィオラの声が戦場に響くと同時に、彼女の手から放たれた水の波が影を包み込む。影はその動きに一瞬たじろいだように見えたが、次の瞬間には水をかき消すように動きを変えた。

「やはり簡単には倒せない……!」

その時、ロイドが再び影に突進した。彼の剣が黒い身体に深く切り込み、火花を散らしながら影を後退させた。

「フィオラ、準備はできているか!」

ロイドが振り返りながら叫ぶ。その顔には、彼女への強い信頼が浮かんでいた。

「ええ!今がチャンス!」

フィオラは全ての魔力を集中させ、影の動きを封じ込めるための一撃を準備した。
その時、ライナーが前に出て冷静に言葉を発した。

「俺も加勢する。こいつを止めるには、全力を合わせる必要がある。」

彼の声にロイドは一瞬だけ険しい表情を見せたが、すぐに頷いた。

「分かった。だが、こいつを仕留めるのは俺たちだ。」

ライナーは短く笑みを浮かべながら、剣を構えた。

「なら、その覚悟を見せてみろ。」

三人の力が同時に影を狙う。
ロイドの剣が影の防御を打ち砕き、フィオラの水がその動きを封じる。その隙にライナーが鋭い突きを放ち、影の中心に迫った。

「これで終わりだ!」

ライナーの一撃が影の中心を貫く。その瞬間、影は激しい光と共に膨れ上がり、不気味な叫び声を上げた。

「……消えない?」

フィオラが驚きの声を上げると同時に、影が再び動き始めた。その動きは荒々しく、まるで最後の抵抗を試みているかのようだった。

「フィオラ、もう一度だ!あいつが弱っている今が好機だ!」

ロイドの声にフィオラは頷き、再び魔力を練り上げた。
水の波動が影を包み込み、その動きを封じる。その瞬間、フィオラは影に向かって叫んだ。

「もうやめて!あなたが何を求めているのか分からないけど、この戦争をこれ以上壊させない!」

その声に影が一瞬だけ動きを止めたように見えた。
次の瞬間、不意に影が形を変え、人間のような姿に変わった。

影が形を整えると、そこには一人の人間のような存在が現れた。
それは黒い鎧をまとい、目のない顔をこちらに向けていた。声がどこからともなく響いてきた。

「……私はただの影ではない。我はこの世界の均衡を保つ者。」

その声に、フィオラは息を飲んだ。

「均衡……?」

影は静かに頷くような動きを見せた。

「この世界において、平和と争いは均衡を成す。争いがなくなれば、また新たな争いが生まれる。我はそれを監視し、導く存在。」

ライナーが剣を構えながら声を荒げた。

「そんな言い訳で戦争を延ばす理由にはならない!」

影はその言葉に何の反応も示さず、静かに言葉を続けた。

「この戦争は均衡を保つための一手。だが、汝らの行動がそれを崩そうとしている。」

フィオラはその言葉に拳を握りしめた。

「あなたが言う均衡のために、どれだけの命が奪われたと思っているの!私たちはそのために戦っているんじゃない!」

影は一瞬沈黙し、低い声で答えた。

「汝らの意志が均衡を崩すというのならば、試してみるがいい。我を打ち破り、その意志を示せ。」

影が最後の猛攻を仕掛けてきた。
その動きはこれまで以上に荒々しく、全てを飲み込もうとするような力を見せた。フィオラ、ロイド、ライナーはそれぞれが全力で立ち向かう。

「ロイド、私が魔力で押さえるから、最後の一撃を任せるわ!」

フィオラの声にロイドが頷き、剣を振り上げた。
その剣が光を放ちながら影の中心に向かう。

「これで終わりだ!」

ロイドの剣が影を貫き、その存在は激しい光と共に霧散した。

戦いが終わった後、フィオラはその場に崩れるように座り込んだ。
ロイドがすぐに彼女の隣に駆け寄り、肩を支える。

「大丈夫か?」

「ええ……なんとか……でも、あれが本当に終わったのか分からない。」

ライナーは剣を収めながら、静かに呟いた。

「影の一部を打ち破ったにすぎない。本当の戦いはこれからだ。」

その言葉にフィオラは顔を上げ、力強く頷いた。

「分かっているわ。でも、私たちは進むしかない。」
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