戦乙女の選ぶ道

藤原遊

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7章 影との戦い

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谷での戦闘を終えたフィオラたちは、簡易的な陣を組み、影との戦いで消耗した兵士たちを休ませていた。
フィオラは地図を広げ、影の中心にあった異様な光が何を意味しているのかを考えていた。

「影が見せた光……あれが何か分かれば、この戦争の鍵になるかもしれない。」

ロイドが水を飲みながら彼女の隣に腰を下ろした。

「光だろうとなんだろうと、あれをぶっ壊せば影は消える。それで十分じゃないのか?」

ロイドの単純な提案に、フィオラは苦笑した。

「それが分かれば簡単だけど、影がどこで生まれて、何を目的に動いているのかを知る必要があるわ。」

「相変わらずだな、お前は。」

ロイドは短く笑いながら、剣を磨き始めた。その目には、いつもと変わらない彼女への信頼が宿っている。

少し離れた場所で、ライナーは兵士たちに指示を出しながら、影との戦いを振り返っていた。
彼の頭には、影が発した言葉とも取れる音が残っていた。

「均衡……か。」

彼は独り言のように呟いた。影が人間の争いを均衡と称して操っているという事実。その均衡を崩そうとするフィオラの存在が、彼にとってどれだけ意味を持つのかを考えていた。

「お前がいることで、この戦争の形そのものが変わるかもしれない。」

ライナーは遠くに座るフィオラの背中を見つめた。彼女が戦場で見せた力と信念が、彼自身の思考を揺るがしている。

その夜、フィオラたちは影の出現地点と光の謎を調べるため、翌日の行動を話し合っていた。
地図の中央には、次なる目的地として指定された古びた塔のマークが記されている。

「影の痕跡が続いているのは、この塔の周辺よ。何らかの力が集まっている場所だと思う。」

フィオラの言葉に、ロイドが険しい顔をして地図を見つめた。

「塔か……防御が固い場所だと厄介だな。影だけじゃなく、敵軍も絡んでくる可能性がある。」

「それでも進まなければならないわ。」

フィオラの決意に、ライナーが静かに頷いた。

「塔には影の本拠地に繋がる手がかりがあるはずだ。だが、それを守るために奴らはこれまで以上に強い力を使ってくるだろう。」

「つまり、一歩間違えれば全滅の危険もある、ということだな。」

ロイドが低く呟く。だが、彼の目にはフィオラへの揺るぎない信頼が見えた。

「だが、お前が行くなら俺も行く。それが俺の役目だ。」

その言葉にフィオラは小さく微笑んだ。

「ありがとう、ロイド。あなたがいる限り、私は絶対に諦めない。」

翌朝、フィオラたちは塔へ向かう進軍を開始した。
道中、森を抜けるたびに影の気配が強くなり、兵士たちの間にも緊張が走っていた。

ライナーが馬上から周囲を見渡しながら声を上げた。

「影の存在が近づいている。ここからは慎重に進む必要がある。」

フィオラも魔力を高めながら、兵士たちに指示を出す。

「隊列を整えて。誰も単独で行動しないようにして。」

ロイドは剣の柄を握りしめながら、彼女の隣に並ぶ。

「奴らの狙いが分からない以上、最前線に立つのは俺だ。お前は無理をするな。」

「分かってるわ。でも、私は指揮官として、この場を守らなければならない。」

二人の短いやり取りが、戦場への覚悟を象徴していた。

塔に到着した彼らを迎えたのは、またしても影の軍勢だった。
黒い霧が塔を覆い、その中から異形の影が現れる。これまでの影よりもさらに強大な力を感じさせるその姿に、兵士たちがざわめいた。

「落ち着いて!私たちは必ず勝てるわ!」

フィオラの声が兵士たちの動揺を抑える。彼女は杖を高く掲げ、水の盾を展開した。

「ライナー、ロイド、協力して影の動きを封じるわよ!」

「了解だ。」

「分かった!」

三人が再び力を合わせ、影の猛攻を受け止める。
ロイドの剣が影の動きを制し、ライナーの戦術が敵の隙を作る。その間にフィオラが魔力を放ち、影を一つずつ消し去っていった。

「影の中心を狙って!」

フィオラの声が響き、ロイドがその指示に応えるように剣を振り下ろした。剣が影の中心を貫いた瞬間、塔全体が大きく揺れ、影の軍勢が霧散していく。

戦いが終わり、塔の中に入ったフィオラたちは、中央に奇妙な装置があるのを見つけた。
それは黒い石でできた円形の台座で、中心には青白い光が漂っていた。

「これが……影の力の源?」

フィオラが手を伸ばそうとした瞬間、ライナーが制止した。

「待て。それに触れるのは危険だ。」

「でも、これを調べなければ次に進めないわ。」

フィオラの言葉に、ロイドが彼女の隣に立った。

「俺が触れる。それで何か起きるなら、俺が防ぐ。」

「ロイド……。」

フィオラは彼を見つめたが、ロイドの決意の表情を見て頷いた。
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