亡命した混血の俺と天使の幼馴染、七斗学院で新しい人生を始めます

藤原遊

文字の大きさ
19 / 19

19

しおりを挟む
七斗学院──かつて生徒として通ったこの場所に、今度は”教職”として戻ってくる日が来るとは思わなかった。

「──緊張してる?」

入職初日、教官控え室で隣に座るククルが小さく囁いた。
白銀の髪は以前より少し伸び、青年らしい穏やかさと気品を帯びている。

「……そりゃ緊張するさ。俺たち、今度は”教える側”だもんな」

思わず苦笑いが漏れた。
あの頃の自分たちは、この部屋の扉の向こうで教師に怯えていた立場だったのだから。

と──

「おや、二人とも、もう来ていたのですね」

控えめな優しい声がかかった。
振り返れば、柔和な笑顔のまま入ってくる青の教授──マリアン・ベリアル先生の姿があった。

「今日からは同僚ですね。改めて、ようこそ七斗学院へ」

「……ご指導、よろしくお願いいたします、マリアン教授」

ククルが丁寧に頭を下げると、マリアン教授は柔らかく微笑んだ。

「私はもう年ですから、若いお二人に期待していますよ」

その後ろから、ぱたぱたと小さな足音が続く。

「──ふふふ!二人とも、本当に立派になったね!」

黄色の教授──ソフィア・ヘルビム教授だ。

「今はもう私の保護下にいるというより、良き同胞の一人だよ、ククル。だから無理せず、でも遠慮せずに輝いていこうね!」

「……はい。ありがとうございます、ソフィア教授」

ククルは嬉しそうに微笑み返す。
本当に、この数年でククルは随分と自信を身につけた。

「ジムも──あまり抱え込みすぎず、分からないことはいつでも相談してね?」

「……はい。何かあれば、すぐに」

俺も自然と頷いた。
この学院の中で、俺たちが”混血であること”を理由に肩身を狭くする必要はもうなかった。

それどころか──

「さて、最初の講義は、確か……導入講義の混血適性論でしたね」

マリアン教授が確認する。

「はい。混血適性論、僕とジムの共同講義です」

ククルが静かに答えた。

そう──これが俺たちに託された役割だった。
多種族が共に学ぶ七斗学院で、今まで曖昧に扱われがちだった”混血”という存在の魔導適性を正式に体系化する新しい講義。

「──時代が進んだ証拠ですね」

マリアン教授は、少し感慨深げに呟いた。

そう──

世界は少しずつ、だが確かに変わっていっている。

学院の廊下には、かつてより多様な種族の生徒たちの姿がある。
レイド、フェーゲ、ノイトラール──その壁も以前ほどは高くない。

「さあ、そろそろ時間ですね」

ソフィア教授が軽く手を叩いた。

「教壇の上でも、いつものように、ね?」

「ああ──行こう、ククル」

「うん、一緒に」

こうして──俺たち二人の教職生活が、いま静かに始まった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

【短編】子猫をもふもふしませんか?〜転生したら、子猫でした。私が国を救う!

碧井 汐桜香
ファンタジー
子猫の私は、おかあさんと兄弟たちと“かいぬし”に怯えながら、過ごしている。ところが、「柄が悪い」という理由で捨てられ、絶体絶命の大ピンチ。そんなときに、陛下と呼ばれる人間たちに助けられた。連れていかれた先は、王城だった!? 「伝わって! よく見てこれ! 後ろから攻められたら終わるでしょ!?」前世の知識を使って、私は国を救う。 そんなとき、“かいぬし”が猫グッズを売りにきた。絶対に許さないにゃ! 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

処理中です...