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第8章 菓子と商会
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学院の帰省で戻ってきたイザベラお姉様に誘われ、久しぶりに二人きりのお茶会が開かれた。
テーブルには薔薇の香りが漂う紅茶と、小ぶりな果物を飾った菓子皿。窓から差し込む初夏の光が、イザベラの金の髪を柔らかく照らしている。
「今年は忙しくて、お茶会が全然できなかったわね」
おっとりと微笑むその声に、胸の奥がきゅっとなる。
「ごめんなさい、お姉様……」
思わず謝罪の言葉が漏れる。
「その代わりといっては何ですが――」
私は小さく咳払いをして、新しい曲を差し出した。学院に持ち込んだ最初の曲が大流行したことを思い出し、半分はお詫び、半分は保険のつもりだ。
譜面を受け取ったイザベラは、ぱっと瞳を輝かせた。
「まあ……! 新しい曲を? 本当にありがとう、エレオノーラ」
その笑顔に救われた気がして、私はもうひとつ用意していた皿を差し出す。
果実を煮詰めて作ったジャムを、クッキーにあしらった新作。
「これも……試しに作ってみました」
イザベラはひと口かじり、嬉しそうに頷いた。
「とても美味しいわ。見た目も美しいから、きっと王都でも人気になると思う」
「本当ですか?」思わず身を乗り出す。
けれどイザベラは、すぐに少し真顔になった。
「でも、増産できないものは持ち込まない方がいいわ。王都では一度火がついたら、すぐに求められるもの。広めるなら、継続して供給できるものじゃないと」
(……なるほど。流行を“商品”として扱う感覚、やっぱりお姉様はさすがだ……)
私は内心で反省する。
そんな実務めいたやり取りの後、イザベラは紅茶を口にして、ふっと柔らかい笑みを浮かべた。
「卒業を見据えて、良いお相手を探さなきゃいけないのよね」
「……お相手?」
思わず聞き返す。
「ええ。学院を終えたら婚約や結婚が普通だから」
にっこりと優しく語る姉の声音に、私は思考が止まった。
(……えっ。結婚ってそんなに早いの!? え、まだ十五歳ですよね!? いやいや、ちょっと待って、卒業しても十八歳なんですけど!?)
笑顔を崩さないよう必死に紅茶を口に含みながら、心の中では全力で絶叫していた。
テーブルには薔薇の香りが漂う紅茶と、小ぶりな果物を飾った菓子皿。窓から差し込む初夏の光が、イザベラの金の髪を柔らかく照らしている。
「今年は忙しくて、お茶会が全然できなかったわね」
おっとりと微笑むその声に、胸の奥がきゅっとなる。
「ごめんなさい、お姉様……」
思わず謝罪の言葉が漏れる。
「その代わりといっては何ですが――」
私は小さく咳払いをして、新しい曲を差し出した。学院に持ち込んだ最初の曲が大流行したことを思い出し、半分はお詫び、半分は保険のつもりだ。
譜面を受け取ったイザベラは、ぱっと瞳を輝かせた。
「まあ……! 新しい曲を? 本当にありがとう、エレオノーラ」
その笑顔に救われた気がして、私はもうひとつ用意していた皿を差し出す。
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「これも……試しに作ってみました」
イザベラはひと口かじり、嬉しそうに頷いた。
「とても美味しいわ。見た目も美しいから、きっと王都でも人気になると思う」
「本当ですか?」思わず身を乗り出す。
けれどイザベラは、すぐに少し真顔になった。
「でも、増産できないものは持ち込まない方がいいわ。王都では一度火がついたら、すぐに求められるもの。広めるなら、継続して供給できるものじゃないと」
(……なるほど。流行を“商品”として扱う感覚、やっぱりお姉様はさすがだ……)
私は内心で反省する。
そんな実務めいたやり取りの後、イザベラは紅茶を口にして、ふっと柔らかい笑みを浮かべた。
「卒業を見据えて、良いお相手を探さなきゃいけないのよね」
「……お相手?」
思わず聞き返す。
「ええ。学院を終えたら婚約や結婚が普通だから」
にっこりと優しく語る姉の声音に、私は思考が止まった。
(……えっ。結婚ってそんなに早いの!? え、まだ十五歳ですよね!? いやいや、ちょっと待って、卒業しても十八歳なんですけど!?)
笑顔を崩さないよう必死に紅茶を口に含みながら、心の中では全力で絶叫していた。
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2024.07.05
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