悪役令嬢は修道院を目指しますーなのに、過剰な溺愛が止まりません

藤原遊

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4章 波乱の中の協力

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※エドガー視点

姉さんが修道院を出たという話を聞いた時、胸の奥がざわついた。あれだけ「平穏を望む」と言っていたのに、どうして突然出てきたのか。何かあったのではないかという不安が一気に押し寄せた。

使用人からの報告で、姉さんが家に戻ってきたことを知った僕は、書類を放り出して屋敷の廊下を駆け抜けていた。

「リリアナ姉さん!」

書斎の前で姉さんの名前を呼ぶと、扉が静かに開いた。そこに立っていたのは、久しぶりに見る姉さんの姿だった。修道院で穏やかに暮らしていたからか、以前よりも柔らかな雰囲気を纏っているように見える。

「エドガー。そんなに慌ててどうしたの?」

姉さんは微笑みながら僕を見た。だが、その顔には何か隠しているような影があった。

「姉さん、どうして戻ってきたの?修道院では平穏に過ごしているって言ってたのに……何かあったんじゃないの?」

「……何もありません。ただ、少し調べたいことがあって戻ってきただけよ。」

「嘘だ。」

思わず口にした言葉に、姉さんが目を見開く。

「エドガー?」

「姉さんが何かを隠してるのは分かる。僕を騙せると思った?」

姉さんは少し困ったように笑ったが、その笑顔がどこか弱々しいことに気づいて、胸が苦しくなった。

「何かあったんだろう。姉さんが一人で解決しようとしてるだけだ。そうだよね?」

「……エドガー、あなたは昔から勘が鋭いわね。」

姉さんはため息をつきながら、小さく笑った。

「でも、大したことではないの。ただ、わたくしが気にしているだけ。あなたが心配するようなことではないわ。」

その言葉に、僕は拳を握りしめた。

「大したことないわけないだろ!姉さんがここに戻ってくるなんて、普通じゃない!」

「……」

姉さんは何も言わなかった。ただ、その目はどこか遠くを見つめているようだった。それが余計に苛立たしかった。

「姉さんがどれだけ強い人か、僕は知ってる。でも、だからって何でも一人で抱え込むのはやめてほしい。僕だって姉さんの力になりたいんだ。」

「エドガー……」

僕の言葉に、姉さんは一瞬驚いたような表情を見せた。それから、小さく微笑む。

「あなたは優しいのね。」

「姉さんにそう言われても、嬉しくないよ。僕は……姉さんを守りたいだけだ。」

姉さんは少しだけ沈黙していたが、やがて静かに頷いた。

「ありがとう、エドガー。でも、今回は本当に大丈夫よ。」

「……本当?」

「ええ。本当。」

姉さんがどれだけ本気で言っているのか、分からなかった。でも、彼女の表情には少しだけ安心感が漂っているようにも見えた。

「……分かった。でも、何かあったらすぐに僕を呼んで。姉さんが無理してるのは、すぐに分かるから。」

「分かったわ。」

姉さんが微笑むその瞬間だけは、少しだけ安心できた気がした。

だが、その後、姉さんが出かける準備をしているのを見た時、再び胸の中に不安が広がる。姉さんはまた一人で何かに立ち向かおうとしている。

(何があっても、僕が守る……!)

その思いを胸に、僕は姉さんを見つめていた。
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