悪役令嬢は修道院を目指しますーなのに、過剰な溺愛が止まりません

藤原遊

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5章 過去の陰謀

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「リリアナ様、これからどうするんですか?」

エリーナが馬車の中で心配そうに尋ねる。私はラドクリフ邸で掴んだ情報を手に、これからの動きを慎重に考えていた。

「次の取引がどこで行われるかはまだ分からない。でも、オルフ公爵たちの動きは確実に追えるわ。」

そう答えるものの、その裏では別の問題が頭をよぎっていた。エドガーのことだ。

(あの子はわたくしの行動に気づいているかもしれない……)

弟の視線がどこか鋭くなっているのを、家に戻ってから何度か感じていた。何か問い詰められることがあるかもしれないが、彼をこれ以上危険に巻き込むわけにはいかない。

だが、私の思惑をよそに、エドガーの行動は私の想像を超えるものだった。

翌朝、私は父からの呼び出しを受けて書斎に向かった。部屋に入ると、そこには父だけでなくエドガーもいた。彼はどこか意を決したような表情を浮かべている。

「父様、何か御用でしょうか?」

「リリアナ、お前の行動が少し気になってな。エドガーが話があると言うので、一緒に話を聞こうと思ったのだ。」

エドガーが話がある――その言葉に、私は一瞬息を呑んだ。

「姉さん、もう隠さなくていいよ。」

彼の真っ直ぐな声に、胸がざわめく。エドガーはじっと私を見つめていた。

「姉さんが何をしているか、僕は気づいている。」

「何を言っているの?」

「姉さんが、オルフ公爵の陰謀を追っていることだよ。」

その言葉に、父も驚いたように目を見開いた。

「エドガー、それは本当なのか?」

「はい。姉さんがこっそり調べているのを見て、僕も少し調べたんだ。姉さんが集めた情報も、危険なものばかりだ。」

エドガーの言葉に、私は呆然とする。彼がそこまで気づいているとは思わなかった。

「エドガー……なぜそんなことを?」

「姉さんを守るためだよ。」

その言葉に、胸が苦しくなる。彼の目には強い決意が宿っていた。

「姉さん、僕も手伝うよ。何があっても、姉さん一人で危険なことをさせない。」

「エドガー、でも……」

「僕はまだ子供じゃない。姉さんがどれだけすごい人かも、ちゃんと分かっている。」

エドガーの真剣な言葉に、私はそれ以上否定することができなかった。彼の成長した姿を目の当たりにして、少しだけ心が動いたのだ。

「……分かったわ。でも、危険だと思ったらすぐに引いてちょうだい。」

「もちろん!」

エドガーは嬉しそうに微笑んだ。その表情には、まるで冒険を楽しむような高揚感が滲んでいる。

「父様、エドガーの手助けを許してくださいますか?」

父はしばらく考え込んでいたが、やがて小さく頷いた。

「エドガー、お前がどうしてもというのなら、リリアナを支えてやれ。ただし、無茶だけはするな。」

「はい、父上!」

こうして、エドガーが新たな仲間として私の調査に加わることになった。彼の若さと情熱が、私の胸にも少しだけ勇気を与えてくれる。

その夜、エドガーとエリーナを交えて次の計画を話し合った。エドガーは資料を広げながら、オルフ公爵の動きを分析していた。

「公爵の次の動きは、魔石の取引だって言ってたよね?その取引がどこで行われるかを突き止めれば、一気に追い詰められるかもしれない。」

「ええ。でも、彼らは慎重に動いているわ。手がかりを掴むのは容易ではない。」

「それなら、僕が社交界で噂を探るよ。若い貴族同士の集まりなら、案外簡単に情報が手に入るかもしれない。」

エドガーの提案に、私は少しだけ驚いた。彼が積極的に協力しようとする姿に成長を感じると同時に、心強さも覚える。

「ありがとう、エドガー。助かるわ。」

「姉さんこそ、すごいよ。こんなに冷静に調査して、相手を追い詰めようとしてるなんて……本当に尊敬する。」

エドガーの言葉に、胸が温かくなる。それでも、彼を巻き込むことへの不安は消えない。だが、彼の決意を無下にすることもできない。

「これからは、三人で協力して進めましょう。」

エリーナも微笑みながら頷いた。

「はい!リリアナ様、私も全力でお手伝いします!」

こうして新たな仲間を得た私は、さらに強い決意を胸に、次の行動に向けて動き出した。
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