悪役令嬢は修道院を目指しますーなのに、過剰な溺愛が止まりません

7章 陰謀の影

①

翌朝、私はルシアン殿下とエドガー、そしてエリーナを伴い、改めてオルフ公爵の計画についての作戦会議を開いていた。

「公爵が次の行動に移る前に、彼の本拠地と計画の全貌を掴む必要がある。」
ルシアン殿下は地図を広げながら言葉を続ける。

「この地図に記された場所のいくつかが、公爵の関係者たちの拠点として使われている可能性が高い。ここを重点的に調査しよう。」

殿下の言葉に、私は地図を覗き込みながら頷いた。記されているのは、郊外の屋敷や倉庫、そして港の近くにある古い施設などだ。

「わたくしは、この屋敷を調査してみます。」
指さした場所は、公爵の関係者の一人が最近頻繁に訪れているという情報があった場所だった。

「俺も同行する。」
殿下が即答する。その言葉に、私は少し驚いた。

「殿下、お忙しいのでは……」

「君を一人で行かせるわけにはいかない。それに、俺自身も公爵の動きを止める責任がある。」

殿下の強い目に、私はそれ以上何も言えなかった。

「では、わたくしと殿下は屋敷を調査します。エドガーとエリーナは別の場所を頼めますか？」

エドガーは張り切った様子で頷いた。

「もちろん！任せておいて、姉さん！」

エリーナも同じように頷き、二人のやる気が伝わってきた。

「では、それぞれの調査が終わったら、再びこの屋敷で合流しましょう。」

私たちはそう約束し、それぞれの調査に向かうことになった。

殿下と共に訪れたのは、郊外にある古びた屋敷だった。外から見る限りでは、人の気配はほとんど感じられない。だが、調査の手がかりがある可能性は十分にある。

「気をつけろ。この手の場所には、見張りがいることが多い。」
殿下が低い声で警告する。その言葉に頷き、私は慎重に屋敷の裏手から内部へと進んだ。

中に入ると、埃っぽい空気が鼻を刺した。長い間使われていなかったようだが、奥の部屋には明らかに最近使われた痕跡があった。

「ここに何かがある……」

私はその部屋に向かおうとしたが、殿下が私の腕を掴んだ。

「待て。罠の可能性がある。」

彼の言葉に従い、慎重に周囲を確認する。すると、部屋の入口に設置された仕掛けが目に入った。見張りや不審者を察知するための仕掛けだろう。

「危なかった……」

殿下が仕掛けを解除し、私たちは部屋の中に入った。その中には、大量の書類と帳簿が置かれていた。私はそれらに目を通し、重要な情報を探し始めた。

「リリアナ、これを見ろ。」

殿下が手にしていたのは、一枚の地図だった。それには、港町周辺の拠点が詳しく記されており、それぞれの場所に「保管」「輸送」などの記載があった。

「これは……公爵が魔石を運ぶためのルートですね！」

「間違いない。これがあれば、公爵の取引を妨害できる。」

殿下の言葉に頷きながらも、私は新たな疑問が頭をよぎった。

「でも、どうしてこんな重要なものをここに置いているのでしょう？」

その時だった。背後で足音が聞こえ、私たちは息を呑んだ。

「侵入者だ！」

扉の外から聞こえた声に、私は殿下と共に身を隠した。数人の男たちが部屋に入ってきて、私たちの存在を探し始める。

「どうする……」

殿下が私を守るように隣で動きを見極めている。その姿に、私は胸が熱くなった。

（こんな時でも、彼は冷静で頼もしい……）

しかし、状況は一刻を争う。私は殿下に小声で囁いた。

「出口を見つけましょう。」

「分かった。だが、君を守ることが最優先だ。」

その言葉に、私は小さく頷いた。殿下の目が真剣で、信頼に満ちているのが分かる。