終わったらバカンスに行くんだ!〜幻想に終わる社畜の夢〜

藤原遊

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プレゼン前日、企画は全て白紙

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「プレゼン前日、企画はすべて白紙」

AM 10:00 — 企画完成!

「よし、これで完璧です!」

社谷チカは、プレゼン資料を前に達成感を噛み締めていた。
3週間かけて作り上げた企画。
クライアントの要望を汲み、コンセプトを練り、ビジュアル案を作り、鬼島リョウのチェックも何度も通した。

(これなら文句なし……!)

「鬼島さん、明日のプレゼン準備完了です!」
「おう、ご苦労」

これで今日は早めに帰れるかもしれない。
そんな希望を抱きながら、PCを閉じようとした——その瞬間、鳴り響く電話。

📞 「あ、もしもし? 本社の△△部長だけど、企画案、全部見直したいんだよね!」

「……は?」

PM 12:00 — 全否定の嵐

「いや~、コンセプト自体がちょっと違うんだよね!」

オンライン会議の画面越し、本社の△△部長は軽い調子で言い放った。
チカと鬼島の顔が一瞬で曇る。

「えっと、クライアントと何度も打ち合わせして、この方向性で決定したんですが……?」
「うん、そうなんだけど……ウチの社長が“もっと攻めた方がいい”って言っててさ!」
「……“攻める”って、具体的には?」
「そこを考えるのが君たちの仕事でしょ?」

無茶ぶり、爆誕。

PM 3:00 — 時間が消えていく

「鬼島さん、どうします? 3週間分の企画、全ボツです」
「どうするも何も、やるしかない」
「えええ!?」

本社の「上の意向」により、前日になってゼロから作り直し決定。
チカは、資料を眺めながら呆然とする。

(これ、今からやって間に合うのか……?)

「とりあえず、徹夜覚悟で作るぞ」
「帰りたい……」
「俺も帰りたいんだけどな(帰らない)」

PM 8:00 — もう帰れない確定

「……企画、なんとか形になりましたね」

必死で再構築した資料が、ようやく完成した。

「さて、念のため本社に送ってチェックしてもらうか」

📩 【本社へのメール送信】
📩 「修正した資料を添付しました。ご確認のほどよろしくお願いいたします」

「これでOKなら、さすがに帰れますよね?」

チカが期待を込めて言う。
が、鬼島は無言で時計を見る。

PM 8:10

(……本社が今、動いてるとは思えない)

📩 【本社からの自動返信】
📩 「本日の業務は終了しました。明日以降にご連絡ください」

「は???」

「……だから言っただろ?」

AM 6:00 — プレゼン直前

「……」
「……」

朝になった。
チカも鬼島も一睡もしていない。

「鬼島さん、プレゼン本番ですね……」
「ああ」

眠気と戦いながら、資料を最終チェックする。
本社からの最終確認? もちろん来ていない。

(でも、もう何が正しいのかも分からない……)

AM 9:30 — プレゼン開始

「本日はよろしくお願いいたします!」

クライアントの前で、完璧に作り直した資料をプレゼンするチカ。
無事にプレゼンが終わり、手応えもあった。

(よし、これならいけるはず……!)

しかし、クライアントの第一声は——

「うーん、これ、最初に見せてもらった案の方が良かったですね!」

— 終わり(そして、虚無)
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