終わったらバカンスに行くんだ!〜幻想に終わる社畜の夢〜

藤原遊

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バズらせてください

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「バズらせてください」

AM 10:00 — クライアントからの依頼

「鬼島さん、新規案件です! クライアントからSNSの広告について相談が来てます!」

「ほう、どんな内容だ?」

チカはノートを開き、クライアントからの要望を確認する。

📩 【クライアントからのメール】
📩 「TikTokでバズる企画を考えてください!」

「……バズる企画?」

「バズる企画って、注文すれば届くもんなんですかね?」

鬼島が遠い目をした。

AM 11:00 — 方向性の決まらない打ち合わせ

📞 クライアントとのオンライン会議

「バズらせるって、具体的にどういう方向性をイメージされていますか?」

クライアントの担当者は明るく答える。

📞 「うーん、そこはいい感じで!」

「(きたよ、“いい感じ”っていう謎の指示……)」

「ターゲット層や、参考にしたいバズった事例はありますか?」

📞 「えーと、全部の世代に刺さるやつがいいです!」

「(……つまり、何も決まってないってことですね?)」

鬼島が静かにため息をついた。

PM 1:00 — アイデアを求められる地獄

「チカ、とりあえずバズりそうなアイデアをいくつか出してみてくれ」

「えっ、急に言われても……!」

「クライアントが“今日中に”って言ってる」

「(バズる企画って、そんな即興で生まれるもんじゃないんですよ……!?)」

仕方なく、チカは企画をひねり出す。

案1: 商品を使ったチャレンジ動画(視聴者参加型)
案2: インフルエンサーを起用してPR
案3: 意外性のあるストーリー仕立ての投稿

「……こんな感じですかね?」

鬼島がチラッと見て、ぼそっとつぶやいた。

「おそらく、クライアントはこれを全部却下してくる」

「そんな……!」

PM 3:00 — 予想通りの展開

📩 【クライアントからの返信】
📩 「うーん、ちょっと普通すぎますね! もっと“バズる感じ”にしてください!」

「“バズる感じ”って、具体的になんですか!?」

📞 「えっと、SNSって“面白くて拡散される”ことが大事じゃないですか!」
📞 「だから、“バズる感じ”でお願いします!」

「……つまり、考えるのはこっちってことですね?」

鬼島が静かにコーヒーを飲んだ。

PM 6:00 — クライアントの無茶ぶりMAX

📞 クライアントからの電話

📞 「あ、そうそう! 実は予算があんまりないんですよね!」
📞 「なので、できるだけ“自然にバズる”ようにしてください!」

「……自然にバズる?」

📞 「そうです! 広告感がないやつで!」

「(いや、それもう広告じゃないんですが!?)」

チカは、現実逃避しそうになる脳を必死で働かせる。

「えっと……つまり、広告費をかけずに、自然にバズらせろってことですか?」

📞 「そうです!」

「(言い切った……!)」

PM 8:00 — 鬼島の結論

「チカ、覚えておけ」

「はい……?」

鬼島は静かに言った。

「“バズらせてください”は、“こっちで奇跡を起こしてください”と同義だ」

「……奇跡、起こせる気がしません」

「でもやるしかない」

「(社畜……つらい……)」

— 終わり(そして、また“バズらせてください”案件がやってくる)
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