終わったらバカンスに行くんだ！〜幻想に終わる社畜の夢〜

東京本社ミーティング

「期末全社員集合MTG ～東京本社へ召集せよ～」

AM 7:30 — 出張の朝

「鬼島さん、ついに東京本社に召集されましたよ……！」

「……また無駄に壮大な会議か」

年に一度の全社員集合ミーティング。
各地の地方本部のメンバーが東京本社に集結する、まさにブラック企業の祭典である。

「鬼島さん、東京行くのって久しぶりですよね？」
「ああ……本社に行くたびに仕事が増えるから、できれば行きたくない。」

「（なんという消極的出張……）」

AM 10:00 — 本社に到着

会場には、各地方本部のメンバーが揃っていた。

「おお、鬼島！ 久しぶりだな！」

東北本部の黒瀬が、にやりと笑いながら手を上げる。

「久しぶりです、黒瀬さん」
「相変わらず死んだ目してるな！」
「……元凶はあなたでは？」

（鬼島さん、この人には妙にツッコミが鋭い……）

「関西本部の浪速です！ いやー、この会議、マジで意味あるんですかね！？」
「ないな」
「やっぱり！」

「中部本部の中野です……なんか、もう帰りたいです」
「早すぎないですか！？」

「地方本部の皆さん、大変やねぇ」

中国・四国本部の宮本さん、北陸本部の藤崎さんが温かい目で見守っている。

（この人たちがいると、社畜の闇が少しだけ和らぐ……）

AM 11:00 — 本社の異常さに触れる

「皆さん、お集まりいただきありがとうございます！」

壇上に立つのは、本社の2代目社長・猟場カイエン。
無茶ぶりの天才、ブラック経営の申し子。

「今年も売上好調です！ これも皆さんが**“頑張ったから”**ですね！」

「（いや、“頑張った”じゃなくて、“搾り取られた”の間違いでは……？）」

「さて、来期はさらなる成長を目指して、新規事業を増やします！」

「（は！？）」

PM 12:00 — 休憩時間、地方組の雑談

「なあ……俺たち、なんでこんなに働いてるんだろうな」

東北本部の新田ソウタが、ぽつりとつぶやいた。
社畜適応に失敗している唯一の男。

「……何言ってんの？」

関西本部の大島が、驚いた顔で新田を見る。

「いや、だって普通に考えて、この働き方、異常じゃないですか？」

「（お、おお……！？）」

社畜の魔法が、解けかける瞬間が訪れた。

PM 12:05 — 皆、気づき始める

「確かに……」

「新規事業が増えるって、結局また地方の負担が増えるだけだよな？」

「そもそも、労働時間と給料が釣り合ってないのでは？」

「（え、これ……ブラック企業に洗脳されてたことに、今さら気づくやつ……！？）」

PM 12:10 — しかし、すぐに魔法はかかる

「まぁでも……俺たちがいないと回らないしな……」

鬼島が、静かに言った。

「（あ、ヤバい……社畜の魔法がかかる瞬間だ！！）」

「そうなんですよね……ウチらがいなくなったら、仕事どうなるんですかね？」

「ウチが回さなかったら、本社の無茶ぶり、誰が処理するんや……？」

「俺らが“やるしかない”んだよな……」

「（あっっっ！！！）」

— 社畜、再洗脳完了。

PM 1:00 — そして、会議は続く

「では、皆さん！ さらなる成長のために、来期も頑張ってください！」

📩 【本社からのメール】
📩 「新規事業立ち上げの準備をお願いします！」

「……鬼島さん、私のバカンスは？」

「……また次の機会になったな。」

「（知ってた！！！）」

— 終わり（そして、終わらない社畜の日々）