終わったらバカンスに行くんだ!〜幻想に終わる社畜の夢〜

藤原遊

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営業研修

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「営業研修の極意 ~真似できない女、酒巻アヤノ~」

AM 10:00 — 営業研修、開始

「チカ、営業研修に出ろってさ」

鬼島リョウが、ため息混じりに言った。

「……営業研修? 私、営業職じゃないんですが?」

「本社の方針だ。**“全社員が営業力を持つべき”**とか言ってな」

「(いや、それなら営業職の人が頑張るべきでは??)」

それでも、社畜は選択肢を持たない。
チカは渋々、本社の営業研修へ向かった。

AM 10:30 — 例の女性営業、登場

「よーし、じゃあ営業の極意を伝授するわよ!」

登壇したのは、本社の最強営業ウーマン・酒巻アヤノ。
酒豪にして、営業の天才。
飲み会で大口の案件を決める、異次元の営業スタイルを持つ女である。

「えー、皆さん、営業といえば何が大事だと思います?」

「提案力ですか?」
「相手のニーズを理解すること?」

「ちっちっち、違うわねぇ」

酒巻はニヤリと笑い、こう言い放った。

「酒よ。」

「……は?」

AM 10:45 — 酒巻流営業論

「いい? クライアントと真の信頼関係を築くには、飲みの場が一番なのよ!」

「(え、それ本気で言ってる?)」

「お酒が入れば、相手の本音が引き出せるし、ガードも下がるの!」

「で、でも、今の時代、オンラインとかメールでの営業も増えてますし……」

「何言ってんのよ! メールより、酒の席の“ノリ”が大事なの!」

「(いやいやいや、それ、コンプライアンス的に大丈夫?)」

AM 11:00 — 酒巻の“実績”が異次元すぎる

「例えばね、この間の大手案件も、飲みながら5分で決まったのよ!」

「……5分?」

「そう! **“このワイン、美味しいですね!”**って言ったら、相手が“君とはいい仕事ができそうだ”って!」

「(そんなので決まるの!?)」

「あと、この業界の重要な人たち、みーんな酒好きだからね。
 飲みの場で勝負できないと、営業はできないのよ!」

「(飲めない人はどうすれば???)」

AM 11:30 — 「じゃあ、実践してみましょう!」

「さぁ、営業の極意は実践あるのみ! みんな、このシナリオでロールプレイしてみて!」

「えっ、いきなり!?」

「クライアントと飲みの席で、案件を引き出すシチュエーション!」

「……鬼島さん、これ、営業研修というより……夜の社交術なのでは?」

「うん、完全に酒巻ワールドだな」

PM 12:00 — チカ、撃沈

「でね、こうやってグラスを持ち上げながら、**“いや~、この案件、最高に美味しいですねぇ!”**って言うのよ!」

「……無理です」

「なんでよ!」

「だって、お酒入ってないとテンション上がらないんですもん!!」

「ダメねぇ……まだまだ修行が足りないわ!」

「(いや、そういう問題じゃない!!)」

PM 12:30 — 研修、終了

「さて、以上が営業の極意! みんなも今日から実践してね!」

「(できるか!!!!)」

鬼島が、静かにチカの肩を叩いた。

「酒巻の営業力は、凡人には真似できない。」

「酒飲めないと、営業できないんですかね……?」

「いや、普通の営業方法もあるはずなんだが……」

📩 【本社からのメール】
📩 「営業力向上のため、飲み会の費用を一部補助します!」

「……本社、完全に酒巻流に染まってるんですが?」

「……知らん。」

— 終わり(そして、飲めない人は詰む)
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