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第1章 悪役令嬢の自覚
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「ご無事ですか」
低く落ち着いた声が、倒れた馬車の中に差し込んだ。
ルシアン様は血飛沫を浴びた剣を払うと、迷いなく手を差し伸べてきた。大きな掌に導かれ、私は崩れた座席から引き起こされる。揺るがぬ腕に支えられた瞬間、胸が強く鳴った。
「……ルシアン様」
お母様がその名を呼ぶ。青ざめた顔に安堵の色が浮かび、深く礼を取った。
「このたびはお力添えをいただき、誠にありがとうございます」
柔らかな声音。侯爵夫人らしい気品に満ちたお礼だった。
けれど次の瞬間、私へと視線を移したお母様の顔色が変わった。
「アメリア……どうしてあのように私を庇ったの」
震える手で肩を掴まれ、強く抱き寄せられる。温かな鼓動が伝わり、思わず息を詰めた。
「あなたは私にとってかけがえのない娘なの。あんな危険なこと、二度としてはいけません」
その声音に胸が軋む。
(……わかってる。お母様は本当に、私を愛してくれている)
だからこそ、責められない。
私が“汚点”と囁かれても、この人の前でだけは絶対に口にできない。
目を伏せ、抱擁に身を預ける。
その時、ふと視線の端に影が差した。
ルシアン様の背後に、二つの人影が並んでいる。
片方は背筋を伸ばした端正な少年。もう片方は人懐こい笑みを浮かべた少年。
顔立ちは驚くほどルシアン様に似ているのに――片や銀髪に翡翠の瞳、片や金髪に翡翠の瞳。色彩だけが違っていた。
(……あの二人は)
こちらをじっと見つめる双子の少年。
その眼差しには好奇心と、どこか複雑な感情が入り混じっているように見えた。
低く落ち着いた声が、倒れた馬車の中に差し込んだ。
ルシアン様は血飛沫を浴びた剣を払うと、迷いなく手を差し伸べてきた。大きな掌に導かれ、私は崩れた座席から引き起こされる。揺るがぬ腕に支えられた瞬間、胸が強く鳴った。
「……ルシアン様」
お母様がその名を呼ぶ。青ざめた顔に安堵の色が浮かび、深く礼を取った。
「このたびはお力添えをいただき、誠にありがとうございます」
柔らかな声音。侯爵夫人らしい気品に満ちたお礼だった。
けれど次の瞬間、私へと視線を移したお母様の顔色が変わった。
「アメリア……どうしてあのように私を庇ったの」
震える手で肩を掴まれ、強く抱き寄せられる。温かな鼓動が伝わり、思わず息を詰めた。
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その声音に胸が軋む。
(……わかってる。お母様は本当に、私を愛してくれている)
だからこそ、責められない。
私が“汚点”と囁かれても、この人の前でだけは絶対に口にできない。
目を伏せ、抱擁に身を預ける。
その時、ふと視線の端に影が差した。
ルシアン様の背後に、二つの人影が並んでいる。
片方は背筋を伸ばした端正な少年。もう片方は人懐こい笑みを浮かべた少年。
顔立ちは驚くほどルシアン様に似ているのに――片や銀髪に翡翠の瞳、片や金髪に翡翠の瞳。色彩だけが違っていた。
(……あの二人は)
こちらをじっと見つめる双子の少年。
その眼差しには好奇心と、どこか複雑な感情が入り混じっているように見えた。
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