【完結】悪役令嬢アナスタシアは破滅を嗤う

藤原遊

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第二部 自称ヒロインのミレイナと破滅未遂

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 破滅の女神は、どうやら今回も私に微笑んではくれなかったらしい。

***

 今日私は、商会の新製品発表会に顔を出していた。
 隣には、商人貴族の跡取りであるユリオ・マルカートが軽妙に話しかけてくる。

「まったく、王宮は最近賑やかですねぇ。特に……例の伯爵令嬢のおかげで」

「お言葉が過ぎますわ、ユリオ様」

 私は笑顔を浮かべたままたしなめた。が、その直後だった。

「アナスタシア様!」

 また来たわね。

 満面の悲壮感を引き連れて現れたのは、もちろんミレイナだった。

「この会場で、わたくしの座席が一番隅に配置されていましたの!」

 ……はい?

 「それは、きっとアナスタシア様がわたくしに嫌がらせを……!」

 ――またそのパターンですか。

 どうやら今回の筋書きは「悪役令嬢による社交界での地位引き下げ作戦」のつもりらしい。

 ……でもね、ミレイナ嬢。

 この会場の席順を決めたのは商会の事務方ですし、私にそんな権限ありませんから。

 私の内心は、またしても盛大に頭を抱えていた。

「まあ……それはお気の毒ですわね」

 表面上は、慈悲深き王太子妃候補らしく微笑む。

 だが、ユリオはあくまで軽妙に流してきた。

「ミレイナ嬢。単純に商会との取引額の順番ですよ。アナスタシア様は一切関与しておりません。……まあ、伯爵家と公爵家では座る場所も変わるのは仕方ないですが」

「で、ですが!何度も視線が――!」

 また視線ネタ!?

 私は危うく顔を覆いそうになるのをこらえた。

 ――駄目だ、この娘……本当に詰めが甘い。

***

 当然、今回も騒動は大事にならず終わった。
 むしろ周囲の空気は「アナスタシア様、大変な目に……」という同情の色まで混じり始めている。

 ――どうしてこうなるのよ。

 私の破滅は、また一歩遠のいた。
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