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第二部 自称ヒロインのミレイナと破滅未遂
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神殿の大礼拝堂。
今日は聖女セラフィーナの特別礼拝に参列していた。
私も表向きは王太子妃候補として神殿行事には顔を出さざるを得ない。
隣では、聖務官シグルドが静かに私に説明をしてくれていた。
「アナスタシア様、ここの祭壇は近年修復されたばかりでして、特に聖女セラフィーナ様の祈りの場として多くの信徒が集っております」
「本当に美しい礼拝堂ですわね」
私は穏やかに微笑んで応じた。
が――その背後から、またもあの高い声が響いた。
「アナスタシア様!」
……来たわね、今日も。
ピンクのドレスを揺らして駆け寄ってきたのは、当然ミレイナ・ベルグレイヴ嬢である。
「先ほど、わたくしが神前で祈っていたところ、アナスタシア様の侍女がわたくしを睨みつけてまいりましたの!」
今度は、侍女経由での嫌がらせ演出らしい。
どうにかして私を「信仰心の薄い悪役令嬢」に仕立てようとしているのだろう。
――けれど、相変わらず詰めが甘い。
「まあ……それは失礼なことですわね」
私は表面上、優しく答えつつ内心ではまた大きくため息をつく。
そもそも、私の侍女は王宮お抱えの中でも最も礼儀を叩き込まれた優秀な者たちである。
そんな真似をするはずがない。
そして案の定、すぐ隣のシグルドが柔らかな微笑を浮かべながら口を開いた。
「ご心配なく、ミレイナ嬢。神殿内では侍女の配置は神殿が管理しております。アナスタシア様のご侍女が神前に立つことはございませんよ」
「そ、そんな……!? で、でも視線が……!」
また視線ネタ!?
毎回毎回、そればかりなのは何なのかしらこの娘。
私は思わず視線を落とし、小さく息を吐いた。
***
その溜息は、またしても近くにいた神殿の女官たちに拾われていた。
「……アナスタシア様、なんてお健気なのかしら」
「いつもああして優しく耐えておいでになるのですわ……聖女様にもきっと通じる慈悲のお心ですわね」
――ああ、もう、違いますから。
心の中で何度突っ込んでも、世間の誤解は加速度的に美談化していく。
***
ふと気づくと、シグルドまで私を静かに見つめていた。
「アナスタシア様は、やはり……お強いお方だ」
違うのよ。
私は強いわけじゃなくて、むしろ今は突っ込み疲れてるだけなのに。
こうしてまた、破滅は遠のき、幸福の檻はさらに厚みを増していくのだった。
今日は聖女セラフィーナの特別礼拝に参列していた。
私も表向きは王太子妃候補として神殿行事には顔を出さざるを得ない。
隣では、聖務官シグルドが静かに私に説明をしてくれていた。
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「本当に美しい礼拝堂ですわね」
私は穏やかに微笑んで応じた。
が――その背後から、またもあの高い声が響いた。
「アナスタシア様!」
……来たわね、今日も。
ピンクのドレスを揺らして駆け寄ってきたのは、当然ミレイナ・ベルグレイヴ嬢である。
「先ほど、わたくしが神前で祈っていたところ、アナスタシア様の侍女がわたくしを睨みつけてまいりましたの!」
今度は、侍女経由での嫌がらせ演出らしい。
どうにかして私を「信仰心の薄い悪役令嬢」に仕立てようとしているのだろう。
――けれど、相変わらず詰めが甘い。
「まあ……それは失礼なことですわね」
私は表面上、優しく答えつつ内心ではまた大きくため息をつく。
そもそも、私の侍女は王宮お抱えの中でも最も礼儀を叩き込まれた優秀な者たちである。
そんな真似をするはずがない。
そして案の定、すぐ隣のシグルドが柔らかな微笑を浮かべながら口を開いた。
「ご心配なく、ミレイナ嬢。神殿内では侍女の配置は神殿が管理しております。アナスタシア様のご侍女が神前に立つことはございませんよ」
「そ、そんな……!? で、でも視線が……!」
また視線ネタ!?
毎回毎回、そればかりなのは何なのかしらこの娘。
私は思わず視線を落とし、小さく息を吐いた。
***
その溜息は、またしても近くにいた神殿の女官たちに拾われていた。
「……アナスタシア様、なんてお健気なのかしら」
「いつもああして優しく耐えておいでになるのですわ……聖女様にもきっと通じる慈悲のお心ですわね」
――ああ、もう、違いますから。
心の中で何度突っ込んでも、世間の誤解は加速度的に美談化していく。
***
ふと気づくと、シグルドまで私を静かに見つめていた。
「アナスタシア様は、やはり……お強いお方だ」
違うのよ。
私は強いわけじゃなくて、むしろ今は突っ込み疲れてるだけなのに。
こうしてまた、破滅は遠のき、幸福の檻はさらに厚みを増していくのだった。
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