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第1話:婚約破棄
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婚約破棄を告げられたのは、王城の舞踏会の真ん中だった。
音楽が止み、談笑していた貴族たちの視線が、一斉にこちらへ向く。
逃げ場のない、あまりにも公の場。
その中心で、彼は迷いのない声で言い切った。
「――本日をもって、君との婚約は解消する」
公爵令息であり、私の婚約者だった彼は、はっきりとそう言った。
その腕には、華やかなドレスに身を包んだ令嬢が寄り添っている。
最近、社交界でよく名を聞く人物だ。
周囲がざわめいた。
同情、好奇、興味本位――
ひそひそと囁かれる声が、波のように押し寄せる。
「ああ……」
「最近、噂になっていた方ね」
私は驚かなかった。
ここ最近、彼は私の存在をまるで見ていなかったから。
忙しいを理由に会話は減り、約束は後回しにされ、
それでも私は、婚約者として相応しくあろうと振る舞ってきた。
公爵家の名に恥じぬよう立ち居振る舞いを整え、
彼の不在時には代理として挨拶に立ち、
領地や王城の話題でも、表に出るのはいつも私だった。
それが当たり前になりすぎて、
誰も「支えている側」の存在を口にしなくなっていただけだ。
「彼女の方が、次期公爵夫人として相応しいと判断した」
そう告げる彼の声は、どこか誇らしげだった。
まるで、自分は正しい選択をしたのだと言わんばかりに。
その瞬間、胸の奥で、何かが静かに終わった。
怒りも悲しみも、声になる前に消えていく。
私は一歩前に出て、微笑み、深く一礼する。
「承知いたしました。どうぞ、お幸せに」
彼が一瞬、言葉に詰まったようにこちらを見る。
けれど、私はもう立ち止まらない。
――もう、あなたを想うのはやめます。
これ以上、耐える理由はありませんから。
音楽が止み、談笑していた貴族たちの視線が、一斉にこちらへ向く。
逃げ場のない、あまりにも公の場。
その中心で、彼は迷いのない声で言い切った。
「――本日をもって、君との婚約は解消する」
公爵令息であり、私の婚約者だった彼は、はっきりとそう言った。
その腕には、華やかなドレスに身を包んだ令嬢が寄り添っている。
最近、社交界でよく名を聞く人物だ。
周囲がざわめいた。
同情、好奇、興味本位――
ひそひそと囁かれる声が、波のように押し寄せる。
「ああ……」
「最近、噂になっていた方ね」
私は驚かなかった。
ここ最近、彼は私の存在をまるで見ていなかったから。
忙しいを理由に会話は減り、約束は後回しにされ、
それでも私は、婚約者として相応しくあろうと振る舞ってきた。
公爵家の名に恥じぬよう立ち居振る舞いを整え、
彼の不在時には代理として挨拶に立ち、
領地や王城の話題でも、表に出るのはいつも私だった。
それが当たり前になりすぎて、
誰も「支えている側」の存在を口にしなくなっていただけだ。
「彼女の方が、次期公爵夫人として相応しいと判断した」
そう告げる彼の声は、どこか誇らしげだった。
まるで、自分は正しい選択をしたのだと言わんばかりに。
その瞬間、胸の奥で、何かが静かに終わった。
怒りも悲しみも、声になる前に消えていく。
私は一歩前に出て、微笑み、深く一礼する。
「承知いたしました。どうぞ、お幸せに」
彼が一瞬、言葉に詰まったようにこちらを見る。
けれど、私はもう立ち止まらない。
――もう、あなたを想うのはやめます。
これ以上、耐える理由はありませんから。
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