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第2話:役目を終えたので、去ります
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婚約破棄の翌日、私は自室で静かに帳簿を閉じた。
公爵家領地の収支表。
作物の収穫量、交易先との契約、使用人たちの配置。
どれも、これまで私が取りまとめてきたものだ。
彼はよく言っていた。
「王城の仕事が立て込んでいて、領地まで手が回らない」
だから私は、婚約者として当然のように補佐してきた。
領主代理として会議に出席し、嘆願書を整理し、問題が起これば調整に走った。
――でも。
婚約が解消されたのなら、話は別だ。
私は書類を一つずつまとめ、引き出しに戻す。
それから、秘書官に伝言を託した。
「本日をもって、公爵家領地の運営補佐を辞退いたします」
それだけで、十分だった。
午後、彼が血相を変えて現れた。
「どういうことだ。急に書類が回らなくなった」
私は紅茶を一口飲み、穏やかに答える。
「婚約者ではありませんから」
彼は言葉を失った。
「君がいないと、領地が――」
「ご安心ください。新しいご婚約者様がいらっしゃるでしょう」
そう言うと、彼は唇を噛んだ。
私はその表情を最後に、視線を外す。
その日のうちに、私の名義で動いていた案件はすべて引き継がれた。
そして翌朝。
私は必要最低限の荷物だけを持ち、公爵家を後にした。
振り返らない。
もう、私がそこにいる理由はないのだから。
公爵家領地の収支表。
作物の収穫量、交易先との契約、使用人たちの配置。
どれも、これまで私が取りまとめてきたものだ。
彼はよく言っていた。
「王城の仕事が立て込んでいて、領地まで手が回らない」
だから私は、婚約者として当然のように補佐してきた。
領主代理として会議に出席し、嘆願書を整理し、問題が起これば調整に走った。
――でも。
婚約が解消されたのなら、話は別だ。
私は書類を一つずつまとめ、引き出しに戻す。
それから、秘書官に伝言を託した。
「本日をもって、公爵家領地の運営補佐を辞退いたします」
それだけで、十分だった。
午後、彼が血相を変えて現れた。
「どういうことだ。急に書類が回らなくなった」
私は紅茶を一口飲み、穏やかに答える。
「婚約者ではありませんから」
彼は言葉を失った。
「君がいないと、領地が――」
「ご安心ください。新しいご婚約者様がいらっしゃるでしょう」
そう言うと、彼は唇を噛んだ。
私はその表情を最後に、視線を外す。
その日のうちに、私の名義で動いていた案件はすべて引き継がれた。
そして翌朝。
私は必要最低限の荷物だけを持ち、公爵家を後にした。
振り返らない。
もう、私がそこにいる理由はないのだから。
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