サリシャの光 〜憧れの先へ〜

ねるねわかば

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芽生え

ニック

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「なあなあ、ニックはサーシャ派?メリンダ派?」


 年ごろの少年が集まるとたいてい挨拶のように出てくるその名前。
 市井はもちろんのこと、この貴族学園でも同様の会話がそこかしこで交わされている。

 ニックの答えはいつも同じだ。

「そんなのメリンダ派に決まってるだろう」


 こういう話題というのはその場を面白おかしくやり過ごすためのものであって、真剣に議論するようなものではない。
 しかし彼らは17歳。同世代の美しき有名人に関して少々熱が入りすぎてしまうのは、仕方のないことだろう。

「ニックはブレないな。オレなんて選べなくて毎日変わるのに」

「毎日どころか朝と晩で違うこともあるじゃないか」

「確かに! まあ実際どっちも可愛くて決められないよなあ。ニックはなんでそこまで惚れ込めるんだ?」

 友人たちは固唾をのんでニックの答えを待っている。どれほどの熱烈な想いが飛び出すのだろう。
 ニックはほんの一瞬だけ言葉を詰まらせてから、どこかふてくされたように言った。

「だって、サーシャみたいなデカい女、一緒にいたら恥ずかしいじゃないか」

 友人たちは口々に「君は小さいからなあ」と笑って、励ますようにニックの肩を抱いた。


「まあどっちとも知り合う機会なんてないけどな」

 やがて誰からともなくその言葉が出ると、みなで一斉にため息をつき、そうして語らいを終えるのがお決まりだった。



 近ごろのニックは少し前のことを忘れたかのように、すっかりサーシャに夢中だ。今もまた匂い袋をうっとりと眺めている。
 それも無理のないことだと、あの日一緒にいた友人たちは口を揃える。

 少年たちは、人が恋に落ちる瞬間をはっきりと見た。中にはどこからか鐘の音が聞こえたと言う者までいたが、定かではない。
 何よりも友情を大切にする少年たちは、この少しばかりお調子者の、けれどひたすらにまっすぐな友人の初恋を応援したいと思うのだった。
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