【完結】サリシャの光 〜憧れの先へ〜

ねるねわかば

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王宮へ

揺蕩う

 波乱のお披露目会から半月が経った。

 スタンリーから、サーシャとニック、そしてメリンダとの間に何があったのかと問われたが、サーシャ自身よくわからないと答えるほかなかった。学園の寮あてに招待状を送ったことを伝えると、わずかに難しい表情をした父に身構える。けれど、父はサーシャに非はないと言ってくれた。

「一男爵夫人の騒ぎ程度で揺らぐような商売はしていないよ」

 そう断言する父に安堵して、サーシャはこれまでどおりに過ごしていた。
 人に会うたび「大変だったね」と労われ、それに対して「お騒がせしました」と返す。みながサーシャに同情的で、このまま自然と騒ぎのことは忘れられていくように思えた。


 しかし事態はゆっくりと、そして着実に悪化の兆しを見せる。
 
 最初の違和感は、出入りを許されていた貴族家から声がかからなくなったことだ。全くなくなったわけではない。しかし、明らかにその件数は以前よりも減りつつあった。
 次に、商業組合から回してもらう仕事が減った。これまでローディック商会が請け負っていた仕事が、他の商会に回されることが何度か続いた。
 そしてついに、学園の寮長から敷布の納品数を再検討するとの話が持ち上がり、スタンリーは商会長として苦渋の決断に至る。


「サーシャ、すまない。お前に非がないのは私も皆もわかっている。しかし、このまま手をこまねいているわけにはいかないんだ」

 サーシャは商会の運営から外れることになった。
 期限は未定。事態が落ち着くまでということだった。



「まったく、お貴族様ってのはどうかしてるよ! なんでお嬢がこんな目に遭わなきゃならないんだ!」

「シッ。声が大きいよ。せっかく時間があるんだ。この際お嬢がやりたかったこと、全部やったらいいじゃないか」

 にぎやかにサーシャを迎えてくれたのは、ネネとルルの工房だった。
 彼女たちは気まずいそぶりすら見せない。だからこそサーシャは、知らず詰めていた息を吐くことができた。
 ここに行くようにと言ってくれた父の気遣いが嬉しかった。



 父や母、そしてネネたちに守られて、何も思いわずらうことのない日々が過ぎていく。そのなかにあっても、時々ニックとメリンダの姿を思い出してしまう。

『お姉様よりも、良いでしょう?』
『まあ、そうかもな』

 そのたびに胸がちくちくと痛んで、サーシャは痛みの理由を自覚する。
 あれは、確かに初恋だった。
 そうと知った時には、もう終わっていたけれど。

 ニックとメリンダがこれからどうするのか、気にならないと言えば嘘になる。それでも、今はまだ知らずにいたいと思うのだった。
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