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ギルベルト1
5,賞賛と召致
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ギルベルトは今朝ルースライン領から届いたばかりの定期報告を読んでいた。
かの地からの報告書はいつも丁寧だ。こちらが求める情報は全て抜けなく書かれている。
ただ難を言えば、丁寧すぎるきらいがある。現場の日報を日数分そのまま書き写しているのではと思えるほどに事細かで、時には雑多に思えることさえあった。
しかし今回届いた報告書に限っては工事記録の羅列にとどまらず、まとめるべき箇所がきちんとまとめられており非常に読みやすい。
問題点や対応策がこれまでの経緯と共に併記されているのは、一目で比較するための工夫だろう。
さらに報告書の最後には、工事に対する領民からの感謝の声がつけ加えられていた。
「ギルベルト君、これはいいねえ」
しばらく後、部署内にロランツの感嘆の声が響く。
彼の手には先ほど渡したルースライン領からの定期報告があった。
「今週の報告書はとても読みやすいね。
前のも問題はなかったけど、何しろ最近目がショボついてねえ。細かい文字が見づらいから、大事な部分をまとめてくれているのは助かるよ。
領の人の言葉も嬉しいじゃないか。役人冥利に尽きるね」
ロランツが賞賛した報告書はその後もきっかり週ごとに届けられ、その時分になるとそわそわと待ちわびるロランツの姿はいつしか馴染みのものとなった。
「ギルベルト君、今週の報告はもう届いたかい?読み手のことを考えている良いまとめだといつも感心するよ。
これを書いているのは領主補佐の人だろうか。是非うちで働いてもらいたいけど、領主さんが手放さないだろうなあ」
「でしたらご本人と子爵に打診してみてはどうですか。
査察の際に訊ねたところ、子爵の妹君が書いているそうです」
「なんと女性なのかい? うちの仕事は女性には不向きだからなあ。しかし地方で埋もれさせるには惜しい人材だ……。
よし、うちの奥さんに聞いてみるか」
それから間もなく本人と家族の了承を得て、リゼを王都へと招くこととなった。
リゼを迎えるまでの一月ほどの間、ロランツはギルベルトの顔を見る度にリゼのことを訊ねてきた。
しかし年齢や背格好はわかっても、服の好みや食べ物の好き嫌いとなると見当がつかず答えられない。
そんなギルベルトにロランツは呆れた様子だ。
「ギルベルト、君は六ヶ月間も何をしていたんだい? 近くにいたのに彼女のことを何も知らないじゃないか。
そんなことで迎え役を任せて大丈夫なのかなあ」
「見知った顔がいた方がリゼ嬢も多少は安心するのではないでしょうか」
「それはそうだろう。
ただねえ、リゼ嬢が無愛想な君のことを怖がっているのではと心配でね。
まあ査察の日程と合わせて行ってもらうから君が適任ではあるのだけどね。よろしく頼むよ」
生まれ育った地を離れることは十九歳のリゼにとってどれほど大きな決断だっただろうか。
この王都で彼女が心穏やかに暮らしていけるよう少しでも力になれたらと思いながら、ギルベルトは迎えの日を待つのだった。
かの地からの報告書はいつも丁寧だ。こちらが求める情報は全て抜けなく書かれている。
ただ難を言えば、丁寧すぎるきらいがある。現場の日報を日数分そのまま書き写しているのではと思えるほどに事細かで、時には雑多に思えることさえあった。
しかし今回届いた報告書に限っては工事記録の羅列にとどまらず、まとめるべき箇所がきちんとまとめられており非常に読みやすい。
問題点や対応策がこれまでの経緯と共に併記されているのは、一目で比較するための工夫だろう。
さらに報告書の最後には、工事に対する領民からの感謝の声がつけ加えられていた。
「ギルベルト君、これはいいねえ」
しばらく後、部署内にロランツの感嘆の声が響く。
彼の手には先ほど渡したルースライン領からの定期報告があった。
「今週の報告書はとても読みやすいね。
前のも問題はなかったけど、何しろ最近目がショボついてねえ。細かい文字が見づらいから、大事な部分をまとめてくれているのは助かるよ。
領の人の言葉も嬉しいじゃないか。役人冥利に尽きるね」
ロランツが賞賛した報告書はその後もきっかり週ごとに届けられ、その時分になるとそわそわと待ちわびるロランツの姿はいつしか馴染みのものとなった。
「ギルベルト君、今週の報告はもう届いたかい?読み手のことを考えている良いまとめだといつも感心するよ。
これを書いているのは領主補佐の人だろうか。是非うちで働いてもらいたいけど、領主さんが手放さないだろうなあ」
「でしたらご本人と子爵に打診してみてはどうですか。
査察の際に訊ねたところ、子爵の妹君が書いているそうです」
「なんと女性なのかい? うちの仕事は女性には不向きだからなあ。しかし地方で埋もれさせるには惜しい人材だ……。
よし、うちの奥さんに聞いてみるか」
それから間もなく本人と家族の了承を得て、リゼを王都へと招くこととなった。
リゼを迎えるまでの一月ほどの間、ロランツはギルベルトの顔を見る度にリゼのことを訊ねてきた。
しかし年齢や背格好はわかっても、服の好みや食べ物の好き嫌いとなると見当がつかず答えられない。
そんなギルベルトにロランツは呆れた様子だ。
「ギルベルト、君は六ヶ月間も何をしていたんだい? 近くにいたのに彼女のことを何も知らないじゃないか。
そんなことで迎え役を任せて大丈夫なのかなあ」
「見知った顔がいた方がリゼ嬢も多少は安心するのではないでしょうか」
「それはそうだろう。
ただねえ、リゼ嬢が無愛想な君のことを怖がっているのではと心配でね。
まあ査察の日程と合わせて行ってもらうから君が適任ではあるのだけどね。よろしく頼むよ」
生まれ育った地を離れることは十九歳のリゼにとってどれほど大きな決断だっただろうか。
この王都で彼女が心穏やかに暮らしていけるよう少しでも力になれたらと思いながら、ギルベルトは迎えの日を待つのだった。
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