【完結】ルースの祈り ~笑顔も涙もすべて~

ねるねわかば

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リゼ3

6.ライナスの土産

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 ライナスが王女宮へと戻ってくる。

 使者一行が隣国に帰っていた二ヶ月の間にリゼはイヤリングをつけなくなり、根付けも手放した。
 白いリボンは祝いとしてもらったものだからと自分に言い訳をして時々身に付ける。

 別離の喪失感には未だ慣れることはないが、これまで以上に仕事に励んで、よく笑い、よく食べ、よく眠るようにしている。

 ライナスの部屋付きに戻り日々の慌ただしさに身を置けば、この心の穴もきっといつか小さくなっていくことだろう。



「ライナス様、お帰りなさいませ」

「ああ、長い道中でしたが無事に帰ってきましたよ。皆さんお元気そうで何よりです。
 こうして離れてみると、あなた方の素晴らしさがよくわかります。やはり公務に関することは皆さんのお力がないと時間がかかっていけませんね。
 こんなことではお輿入れのあと母国に戻って職務を全うできるかどうか怪しいものです。どなたか私の補佐役として一緒に隣国へ行きませんか?向こうで役職も用意しますよ。
 おっと失礼、こんなこと軽々しく言うべきではありませんね。とにかくまた皆さんにお会いできて嬉しいです。
 さ、まずは荷ほどきからお願いしなければなりませんね」

 相変わらずのライナス節だ。侍女はみな嬉しそうに笑みを浮かべている。


 今回ライナスが隣国から持ち込んだ荷物は、リゼが初めて手伝いに来た日のものよりも格段に多く、片付けのために多数の侍女が駆り出されることになった。

 いくつかの部屋に分かれて作業をする侍女たちそれぞれのもとを訪れ、ライナスが言葉をかけていく。
 場を明るくしつつも騒がしいと感じさせない軽妙さは健在だ。

「ああリゼさん相変わらず、というか前よりもいっそう仕分けがお早くなっていませんか? 頼もしいことです。あなたがいるなら大丈夫だと思って、つい荷物が増えてしまいました。
 お渡ししたい物もあるのですが、これじゃあ何処にあるのかわかりませんね。引き続き頑張りましょうか」


 当初は一週間はかかると思われた荷ほどきだったが、日を追うごとにみな要領をつかみ、四日ほどで片付いた。

 三つの部屋に分けて置かれた荷物を見てまわりながら、ライナスが何かを探している。
 やがて一冊の本を手に取ると、リゼに手渡した。

「リゼさんに用意してもらったあの石はとても好評でした。相手の好みの色を選べるうえに、宝石よりも素朴だから相手に余計な気を遣わせることがなくて、小さな子からお年寄りまでどなたにも喜んでもらえましたよ。
 この本は、外務部にいる例の同胞に教えてもらったものです。母国の愛好家が書いた本ですが、希少本なのかあちらの国でも見つけるのに苦労しました」

「そのような貴重なものをいただいても良いのでしょうか」

「もちろん。あなたのために持ってきたのです。これには木の化石のことも少し詳しく書かれているのですよ。
 郷里にはあの石がたくさんあると言っていましたよね? どんな価値がある石なのか知っておいても損はないと思いますよ」
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