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第一部 地球編

52 現在対未来

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「レッドマジシャン!」

 トリックスターが斬りかかったが、レッドマジシャンはその場から一歩も動かず、刀で受け止めた

「『解』」

 トリックスターが日本刀を両手から片手にした瞬間に、空いた手にブラスターを出した。しかし、レッドマジシャンはブラスターが出てきた瞬間に、蹴りを入れた。ブラスターは後ろに、飛んでいき、トリックスターは距離を取った

「トリックスター。あなたが、戦争が終わって、一回だけ帰還した後、旅に出たけど。その時、何があったと思う?」

「どういうことだ?」

「知らないなら教えてあげる。生き残ったメンバーは、おかしくなっていった。ソーンさんは現実が受け入れられず、夢に囚われ、昏睡状態。医班が面倒を見てる。ワイルドエコーさんは、戦争のショックから、日常生活の中でも喋れなくなった。バルドルは部屋に引きこもってる。ブルズアイは行方不明になった。全部、あなたが居なかったせいよ!」

「僕のせい?違うだろ!全部、50年前のせいだろ!」

「コールドアイは普通の人間に戻りたい。と言うから、ビーストソウルが創ってた薬のデータを見て、私が改良してる。ヘドロは、あなたと同じで、私を止めようとしたけど、最終的には、賛同してくれたわ。スノーメロディーは憎悪に満ち溢れてる。組織はバラバラになった」

「僕は、組織の未来を託された!」

「だから、あんたが悪い!組織を託されたのに、使命を全うできなかった」

「修復してみせる!」

 トリックスターはブラスターを拾い上げ、発射装置からボールを飛ばした

「『神速のアサシン』」

 レッドマジシャンがトリックスターが移動してくると思いボールに向かって斬りかかったが、トリックスターは移動してこず、ブラスターでレッドマジシャンは撃たれた

「どうした?技を言ったからって、技をやるとは限らない。コスチュームを着てないから、凄く痛いだろう!」

 レッドマジシャンは被弾したところを再生した

「兵は詭道なり。君が教えてくれた」

「なるほどやるじゃない。実にあなたらしい卑怯な手」

「技名をなぜ技をするときに言うか知ってるか?」

「自分を鼓舞し、脳内の考えと体の動きを声に出すことで、完全一致させるため」

「そうだ!だから、技名を言う。知ってるよな」

「『トリックスターの能力』」

 レッドマジシャンはもう一本、刀を取り出した。そして、トリックスターに突撃した。ブラスターを撃ってレッドマジシャンを止めようとするが、上手く避けられながら走られてる

「『マスターウェザーの能力』」

 訓練場内に大雨が降り始めた

「『村雨の革命』」

 レッドマジシャンがテュールから、血を奪った時の、突き技をやった

「『解』」

 レッドマジシャンの突き技が体に当たる直前に、トリックスターは爆弾を取り出した。二人とも、爆発に巻き込まれ、吹っ飛んだ。二人とも、一応直前に逃げようとしたが、下半身が二人とも爆風で飛んでいた。何とか、辛うじて生きてた二人は足を再生した

「そんなの自分が死ぬよ!」

「悪いな、レッドマジシャン。僕は君を止めれるんだったら、命を捨てれる」

「即死させるしかないか。『トリックスターの能力』」

 レッドマジシャンは一本の刀をしまって、また一刀流になった

「なぁ。やっぱり家族で殺し合うのは間違ってる」

「家族だろうと。信念を曲げるのは間違ってる!正しかったら、負けない!」

「レッドマジシャン!」

 トリックスターはレッドマジシャンに走って近づき、刀を振り下ろした。しかし、刀はギリギリ、レッドマジシャンが体を反ったために当たらなかった

・・・空振り?まさか!?

「『燕返し』」

 トリックスターは、刀を逆にして、振り上げた。刃はレッドマジシャンの顔に傷をいれた。レッドマジシャンは、斬られた瞬間に刀でトリックスターを斬りつけようとしたが

「『チェンジ』」

 空間移動されて、斬れなかった

「燕返しは、私とサンストーンしか、できないと思ってた。どうして!どうして!」

「簡単だ。僕は、君の背中をずっと見てきた。君のことをずっと見てたから、再現できる。もちろん、他の剣術も」

「コピー能力」

「君の技だけならな」

「脅威だ。今の世の中で唯一、私と張り合える」

 今度は、レッドマジシャンが向かっていった。大雨で視界が悪く、足元も滑るなか走っていく。トリックスターは、手裏剣を取り出し投げるが、刀で弾かれた。レッドマジシャンはトリックスターに向かって飛んだ

「死んで!」

「『チェンジ』」

 投げた手裏剣と場所を入れ換えた。レッドマジシャンはどんどん攻撃を仕掛けるが、トリックスターは上手く回避をしてる。その、間に雨は足元が浸るほど降ってしまった。それを見た、レッドマジシャンが訓練場の壁を蹴って飛び

「『マスターウェザーの能力』『ビーストソウルの能力』」

 雷を溜まってる水に落とし、自分はトキになって、豪雨の中を、落ちそうになりながら飛んでいる。雷が雨を伝い、トリックスターを感電させた

「死ぬだろうがよ!」

 数秒後、少し焦げ臭くなってるトリックスターは平然と喋り出した

「ふぅー。雷雲が小さいうえに、ちゃんと蓄電された状態で落とさなかったから良かったよ。しかし、筋肉動かなくなるな!いや~丈夫な能力者で良かった!」

 トリックスターがベラベラと喋ってる間に、レッドマジシャンは変身を解いて、トリックスターに触れようとした

「『カーナの能力』」
 
 レッドマジシャンが手で触れようとしたが、トリックスターが腕を切り落とした。しかし、空中でレッドマジシャンは蹴っ飛ばした。豪雨は止み、訓練場内の雨水が、排出され始めた

「やるわね!」

「ガントンとタンクに鍛えられたからな!二つの戦法を上手く使える」

 二人とも、刀をその場に捨てて、拳に能力を込めてお互いに近づいた

「『fフォルテ』」

 それぞれの拳が、お互いの頬に入った。二人とも、よろめいたが続けて、もう一発

「『fフォルテ』」

 と殴り合いをしだした。最終的には、お互いの体が後方に横回転しながら飛んでいった。起き上がった二人とも、刀を再び拾い上げた

「どうして!どうしてそんなに頑張るの?もう、降参してよ!」

「君こそ、降参しろよ。美しい体がボロボロだぞ!これ以上は死ぬ!」

「お互い様でしょ!」

・・・私の能力は底をついた。戦争で、全て無くなったのに、たった一週間では能力がすぐ無くなる。次、致命傷を受けたら、再生できない

・・・俺のストックしてある物も、そんなに無いぞ。戦争でほとんど、ストックが消えたからな。これ以上、長期戦に持ち込めない。次で、ラストだ!

 トリックスターは発射装置や、手からボールを無数に、レッドマジシャンに投げた

「『全面鬼没』」

 レッドマジシャンを囲うように、トリックスターは空間移動をしながら斬りつけていった。傷は、浅いが確実にダメージを入れていってる

・・・これは、数秒で終わる。移動できるボールが無くなったら、殺すチャンス。今は耐える!

 トリックスターが移動できるボールが無くなった。レッドマジシャンが勝ちを確信したかのように、元の位置にいるトリックスターを見た。だが、次の瞬間、青ざめた。レッドマジシャンの前後や、横、上にボールが落ちてきてる

・・・どうして!まさか!?全面鬼没をやってる時に、天井に向かってボールを数個投げたの?ヤバい!死ぬ!考えろ!

「『刹那斬り』」

 トリックスターはレッドマジシャンの背後のボールに移動したかと思ったら、すぐにレッドマジシャンの正面に現れた。しかし、正面に現れたと同時にレッドマジシャンは用意してたかのように、トリックスターを斬った。トリックスターは、踏ん張ってるがその場に倒れた



 倒れるのと同時に、レッドマジシャンが刀を落とし、トリックスターを支えた。そして、ゆっくりと自分の膝の上に寝かせた

「トリックスター!再生して!」

 トリックスターは小さく首を振った

「死なないで!あなたまで、離れないで!」

 トリックスターは少し、口角を上げた

「どう・・して、ヴッ!わ・・かっ・・た。ハァハァ」

「どこから斬るかって?」

「あぁ」

「あなたは、私を正面以外から、斬りつけて止めを刺そうとはしないと思った。あなたはそんな人だから」

「よ・・そう・・・したのか」

・・・僕は、二人の才能には勝てない。唯一、優れてたのは努力する才能だ。しかし、違ってたのかもしれない。誰よりも努力してきたはずだが、二人の方がさらに、努力していたのだろう。努力という才能で負けた僕は、敗北者になって当然だ

「君は・・死人とは・・約束しない・・だろうから・・・嫌がらせ・・と思って・・・聞いて。・・・みんな・・見守って・・るから」

「コンピューター!助けをよこして!」

 トリックスターは、傷を押さえてた手を、レッドマジシャンの頬に当てた

「あいいえう」

 消えそうなくらいの弱々しい声を発した

・・・愛してる!僕は君がずっと好きだ。それを伝えられたから・・・

・・・何て言ったの?

 トリックスターの目から光が消えた。レッドマジシャンの目を見つめたまま。レッドマジシャンはゆっくりその瞼を閉じた。そして、膝枕をしながら、トリックスターの体を優しくトントンと叩き始めた。まるで、母が子供を寝かしつける時みたいに

「私を止めようとしたのが、あなたで良かった。もう眠って。今まで、頑張りすぎたから。眠れ、安らかに」

 トリックスターの閉じられた瞼には、うっすら涙があった



 コンピューターからの助けを聞いて、スノーメロディーが駆け込んできた。訓練場に入ると、レッドマジシャンの膝の上に横になってるトリックスターを見た。レッドマジシャンはトントンと体を叩いてる

「死んだの?」

「スノーメロディー。ごめんね」

「何で謝るの?」

「あなたが、好きな人は全員死んでしまった。オールロード、ビーストソウル、トリックスター。そして、先輩達」

「もう、失うのは嫌というほど感じた。けど、あなたがまだいる!世界を救うんでしょ!」
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