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第二部 エリミア編

74 告白

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 唯一王ガルーダは、誰かに殺害されたわけでもなく、自殺したわけでもなく、普通に死んだ。老体だったわけではない。多忙な業務を日々こなし、疲れがたまっていたからだ

「次の候補は、シュリオンかスミだな・・・」

 エリミア全土で、そんな話が起こってた



 フェルムスでは、大忙しだった

「隊長。大丈夫ですか?」

 親友を失ったアイリンは、今までの活力がなく、どこか抜けている感じかしていた

「ガルクも・・・」

 もちろん、実の父を失ったガルクも感情が分からないほどの虚無感があった

「フィオル!今は二人に構うより、仕事しろ!」

 珍しく、ドードルがフィオルに怒鳴った。唯一王が死んだことにより、混乱したエリミアは犯罪が増えていたからだ



 フェーナとシュリオンは、次に進もうとしていた

「いい。あなたは今、唯一王の候補よ。スミさんと争うけど、恐らく勝てる」

「唯一王は、元老院内での投票で決まるだろ?勝てるのか?」

「五分五分の戦いになるけど、前の戦争の件があるわ!」

「俺は正々堂々と勝負したかった・・・。父のように・・・」

「・・・」



 結局、元老院内での投票でシュリオンが唯一王になった

「良かったわね・・・。シュリオン!」

 スミはシュリオンにそう声をかけたが、シュリオンは喜んでいなかった

「スミさん・・・。ごめんなさい!」

「え?」

「ごめんなさい・・・」

 シュリオンは事情を説明した

「別に、あなたが悪く思う必要はないわ。あの時、決断力がなく、選択に迷ってた私が悪いのだから・・・。それに、それだけが敗北の理由ではないわ」



 唯一王になったシュリオンは、エリミアの全員からガルーダの息子ということもあり期待されていた

「ガルク。私が支えるから安心してよ」

「それが心配なんだよ」

 フェーナとガルクは話をしていた

「あのね・・・。私とシュリオンは・・・」

「何?言いにくそうだけど」

「ちゃんと言うわ。私とシュリオンは結婚するの」

「は?」

 ガルクの思考は停止していた。結婚?シュリオンとフェーナが?

「冗談?」

「いえ。それも含めて、支えるからと言ったの」

 ガルクはどこかで思ってた。フェーナは、シュリオンではなく自分を選ぶだろうと。ガルクはフェーナのことを今になって、好きだったと気づいた

「何で?何でシュリオンなんだ?」

「え?・・・おめでとう!と言ってくれないの?」

「いや・・・その・・・シュリオンのどこが良かったんだ?」

「どういう意味?」

「単なる疑問だよ。シュリオンが何をしてくれたんだ?」

「ガルク?」

「君をいつも支えてきたのは僕だろ?君を瓦礫の下から救ったのも。能力を戻してあげたのも。全部僕だ!シュリオンはその時何してた?何もしてないだろ!」

「ガルク。あなた、おかしいわよ!」

 フェーナはガルクの側から離れていった

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