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第四章 トラキア連邦

第七十話 報告と助命嘆願

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--翌日。

 ジークの私室を訪れたアレクとルイーゼは、ソファーに座るジークにテーブルを挟んで対面に並んで座ると、フェリシアから聴取した事をジークに報告する。

 ジークは、二人からの報告をじっと聞いていた。

 ジークが尋ねる。

合成獣キメラを錬成する魔法技術について、あの女は、何か言っていたか?」

「いいえ。何も」

「そうか。・・・トラキアにそんな魔法技術があるとは思えん。おそらく出処はダークエルフだろうな」

 アレクが尋ねる。

「兄上。この後、彼女はどうなりますか?」

 ジークが重苦しく口を開く。

「お前達の話が本当なら、彼女達、トラキア連邦政府首脳は、帝国の法に則って『戦争犯罪人』として処刑されるだろう」

 アレクが口を開く。

「そんな! 彼女は・・・フェリシアは、自分達の犯した罪を後悔していました! 処刑なんて・・・」

 ジークが尋ねる。

「・・・お前は、あの女を救いたいのか?」

 アレクが答える。

「はい! 兄上の力で、何とか、なりませんか?」

 ジークは、少しの間考える。

「・・・父上なら。『帝国の法の上の存在』である皇帝の父上なら、あの女を救えるだろう」

 フェリシアを救う方法があると聞いて、アレクは色めき立つ。

「本当ですか!?」

 ジークは、淡々とフェリシアを救う方法についてアレクに話し始める。

「ああ。あの女をトラキア戦争の『戦利品』として父上に献上し、父上に妾として囲って貰えば、あの女は戦犯としての訴追を免れる。絶対帝政を敷く我が帝国で、皇帝の愛妾を訴追する事など、できないからな」

 ジークが語ったフェリシアを救う方法について、アレクは愕然とする。

「そんな・・・そんな事って・・・」

 再びジークは、淡々とアレクに話し始める。

「前時代ではよくあったことだ。征服者が被征服民の女を妾にするなど、歴史上、珍しい事ではない」

「ですが!!」

 救済案に不満げなアレクに対して、ジークは冷めた口調で話す。

「・・・他に方法があると思うか?」

 ジークの言葉に一言も言い返せないアレクは俯いて答える。

「・・・いいえ」

 落ち込むアレクにジークは微笑む。

「・・・お前の我儘を聞いてやるのは、これで二度目だ。あの女の事は、私から父上に話してみる。命だけは助かるだろうし、父上もあの女を悪いようにはしないだろう」

 アレクは俯いたまま、ジークに答える。

「・・・判りました」

 ジークが続ける。

「アレク」

「はい?」

 ジークのエメラルドの瞳が、アレクの傍らに居るルイーゼに向けられる。

「私からの忠告だ。『お前のために何もしていない女』よりも、お前の傍に居て、『お前のために命を捨てる事を厭わない女』、『お前のために全てを捧げて尽くす女』を大切にしろ。判ったな?」

 ジークの言葉は『何もしていないフェリシアよりも、傍に居て尽くしてくれるルイーゼを大切にしろ』と言っているのは明らかであった。

 ジークの言葉にルイーゼは驚く。

「・・・殿下」

 アレクが答える。

「・・・判りました」

 アレクとルイーゼは、起立してジークに一礼すると、ジークの私室を後にした。

 ジークは、アレクから頼まれたフェリシアの助命嘆願について、羊皮紙に一筆したためると、フクロウ便で皇宮に居る父ラインハルトへ送った。

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