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 触れるだけで離れて行った唇を追いかけたくなってしまう自分がいて、何を考えているんだろうと思う。

「先生……?」

「気持ち悪いかもしれないけど、僕、八神さんに一目惚れしてしまいました」

 先生が少しはにかみながら言う言葉が信じられなくて。
 こんな素敵な先生が俺のことを?

「えっと……」

「ごめんね。困らせたよね。忘れてくれていいから」

 そう言って先生がパソコンに俺の症状と思われるものを打ち込み始めた。

「先生……俺……」

「軽い睡眠薬と安定剤を出しておくね。また二週間後に来られるかい? 食べられるものは何でも食べてね」

 先生がニッコリ笑って次回の予約票と、処方箋を貰うための順番待ちの番号が書かれたカードを差し出してきた。

 俺も……俺も先生のこと、一目見た時から見惚れてしまいました、なんて。

 言いたかったけど言う勇気がなかった。

「はい、ありがとうございました。失礼します」

 俺は会計に呼ばれるまで放心状態だった。

「75番でお待ちの方、受付までお越しください」とスピーカーからアナウンスが流れ、俺は会計を済ませる。

 隣接する薬局で薬を受け取って家に帰った。
 帰ってスマートフォンを確認するとメッセージが一件入っていた。
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