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朧げに双眸を開けると真っ白な視界が目に飛び込んできた。
それが天井だとわかるまでに数秒要した。
「春⁉ 春⁉」
手に力強い温もりを感じて、声のする方に頭を向けたいのに、後頭部が酷く痛む。俺が頭を動かせないでいると声の主が俺の顔を覗き込むようにして見つめてきた。
「時雨さ……ん?」
「春……よかった……」
時雨さんの手が頬に触れた。
俺の瞳からボロボロ涙がこぼれる。
「時雨さん……俺のせいで殴られて……ごめんなさい……」
時雨さんの頬がボコボコに腫れあがっている。
「気にしないの」
いつもの優しい時雨さんの声だ。
その声に酷く安心して。
「彰成は……? 時雨さんへの傷害罪とか……」
「先に手を出したのは僕からだからね。どうしても一発だけはお灸をすえなきゃ気が済まなかった。大人げなくてごめんね。でも、彼は春が倒れて逃げて行ったよ。マンションの解約は春の親御さんのサインもいるから正式には済んでないけど、大家さんに訊いたら、それは郵送でも大丈夫みたいだから。荷物はもう僕の部屋に配送するよう手配したからね。二度と彼と関わることはないから。大丈夫だよ、春。安心して」
どこまでも優しい時雨さんの声に涙が止まらなくなってしまう。
「すみませ、時雨さ……」
「謝らないの。ねぇ、一つだけ確認していい?」
時雨さんが真剣な瞳を向けてくるので何事かと身構えてしまう。
やっぱりこんな面倒な男、嫌になった?
「はい……」
「春は僕の恋人になってくれる?」
その言葉に、また俺の瞳から涙が伝った。
時雨さんは何を言っているんだろう。
「そんなの……当り前じゃないですか……むしろ、俺でいいんですか?」
「僕は春がいいんだ。好きだとは言ったけど、付き合ってくれる? って確認してなかったから」
そっと両手を伸ばしたら時雨さんが抱えて抱きしめてくれて。
俺たちは恋人同士になったんだ。
それが天井だとわかるまでに数秒要した。
「春⁉ 春⁉」
手に力強い温もりを感じて、声のする方に頭を向けたいのに、後頭部が酷く痛む。俺が頭を動かせないでいると声の主が俺の顔を覗き込むようにして見つめてきた。
「時雨さ……ん?」
「春……よかった……」
時雨さんの手が頬に触れた。
俺の瞳からボロボロ涙がこぼれる。
「時雨さん……俺のせいで殴られて……ごめんなさい……」
時雨さんの頬がボコボコに腫れあがっている。
「気にしないの」
いつもの優しい時雨さんの声だ。
その声に酷く安心して。
「彰成は……? 時雨さんへの傷害罪とか……」
「先に手を出したのは僕からだからね。どうしても一発だけはお灸をすえなきゃ気が済まなかった。大人げなくてごめんね。でも、彼は春が倒れて逃げて行ったよ。マンションの解約は春の親御さんのサインもいるから正式には済んでないけど、大家さんに訊いたら、それは郵送でも大丈夫みたいだから。荷物はもう僕の部屋に配送するよう手配したからね。二度と彼と関わることはないから。大丈夫だよ、春。安心して」
どこまでも優しい時雨さんの声に涙が止まらなくなってしまう。
「すみませ、時雨さ……」
「謝らないの。ねぇ、一つだけ確認していい?」
時雨さんが真剣な瞳を向けてくるので何事かと身構えてしまう。
やっぱりこんな面倒な男、嫌になった?
「はい……」
「春は僕の恋人になってくれる?」
その言葉に、また俺の瞳から涙が伝った。
時雨さんは何を言っているんだろう。
「そんなの……当り前じゃないですか……むしろ、俺でいいんですか?」
「僕は春がいいんだ。好きだとは言ったけど、付き合ってくれる? って確認してなかったから」
そっと両手を伸ばしたら時雨さんが抱えて抱きしめてくれて。
俺たちは恋人同士になったんだ。
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