僕はぼくだけど僕じゃない誰か。

僕の日常③

放課後になった。
　今日から、新歓に向けての準備が始まり、いつも以上に忙しくなるだろう。より一層気を引き締めなければならない。

アノ人に認めてもらえるように＿＿＿＿＿



＊＊＊




生徒会室、僕等の仕事場。
そこでは、小さな争いが起こっていた。

「イヤダイヤダ！！」
「「鬼ごっこがいい！！」」
そう、新歓でやる出し物を皆で話し合っている時だった。副会長が、前回と同様演劇で良いかと尋ねたところ、双子庶務の朔ちゃん咲ちゃんが反対したのだ。
「いえ、ここは例年通りに演劇をするべきです。」
副会長がすかさず反撃したと思ったら、今度は会長が反対意見を出し始めた。
「いーや、俺はケイドロがいい」
多分前回の新歓が大変だったから、反対してくれた双子庶務に便乗したのだろう。
「ぉれ、ぇ、げき、、いい。」
でも、健ちゃんは演劇が良いそうだ。
「「「「「しゅうちゃん／小鳥遊／秋人はどれが良いの／んだ／ですか？」」」」」
この流れだと、いつかは僕も尋ねられると思っていたけれど、いざ聞かれると、少々困ってしまう。
「えーと、僕は、、、鬼ごっこぉ…かなぁ？」
まあ、僕は断然鬼ごっこ派なんだけど。
「ですが、鬼ごっこなんて是迄新歓でやったことありませんし、第一、ルールを１から決めなければいけないじゃないですか。貴方達にそれが出来るのですか？去年は、只でさえ例年の倍は時間が掛かったというのに…」
流石副会長と言うべきか、僕達の隙を付いてくる。
「「「「うぐ…」」」」
これには皆、押され気味だ。
「で、でも是迄やったことが無いからこそ、面白みがあっていいんじゃないのか？」
会長が誰よりも早く立ち直ったけど、反論の内容が薄すぎる。多分却下されるな。
「ですが、」
何としてでも、演劇だけは避けたいから、僕も応戦するとしよう。
「そ、それにほらっ、後輩のためにー、少しでもぉ新歓の候補をぉ多くしてあげるのがぁ、僕達の役目なんじゃないのー？」
「はあ、小鳥遊がそこまで言うなら、私は良いですけど…」
「俺、も、いぃ」
やっと折れてくれたみたいだ。
「はあ！？お前等俺が訴えたときは意見変えなかったのに、秋人が言ったら変えるのかよ」
「当たり前でしょう。貴方はこの中で一番書類の提出率が悪いんですから。」
会長ドンマイと、健ちゃんに頭を撫でられていた。
「うぐ…」


　その後、新歓の内容はケイドロに決定し、僕達はルールを１から考えた。皆、副会長に監視されながらも、其々意見を出し合って、皆が納得のいくものにする為に、頑張っていた。勿論僕も。




＊＊＊




p.m. 23:00 


♪～…♪～…♪～
スマホの音が鳴り響く。
　１、２、３度目のコールで、スマホを手に持った。彼の手は、ヒヤリと嫌な汗をかいている。


？？？「遅い」
秋人「申し訳ありません。」
？？？「……今日は、職員室に呼び出されたようだが、何かあったのか？」
そう聞く電話越しの声は、言葉とは裏腹に酷く冷めている。
秋人「っいえ、お父様に影響が及ぶような事ではありません。わざわざお父様の手を煩わせてしまい、申し訳御座いません。」
？？？「お前の一つ一つの行動が、私に影響を与える事を肝に銘じておくように。」
秋人「、はい。」
？？？「それと、そろそろ……が…………だ……………、………。」
秋人「………、、」
？？？「、お前は私の……だ。………………、わかっているな？」


ツーツーツー


p.m. 23:05


「っは、」
　スマホを持つ彼の手は、酷く震えていた。
僅か５分、されど５分。彼にとっては、長い時間だったようだ。

「僕が呼び出された事を、何故お父様は……」
　息子が職員室に呼び出されても、余程のことが無い限り、親には報告されない。ならば何故、"小鳥遊秋人"が職員室に呼び出された事を、父は知っていたのか。彼の頭には、極度の緊張から開放された安堵と戸惑い、不安、そして、この学園に居る者全てへの疑念が残った。



「誰も、シンジテハイケナイ……」