お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀

文字の大きさ
13 / 74

13話 憐憫 2/2

「【蜘蛛クモ糸】」

 俺は手首からクモの糸を発射した。

「な、なんだこれ……むぐぐぐ!!」

 イリカはあっという間に、クモの糸で簀巻すまき状態に。
 強靱なクモの糸を破ろうと必死に暴れているが、そんなことは叶わない。

「クモの糸は生物界で最も強い糸なんだよ」

 スキル欄を眺めながら、イリカに近づく。

「そうだな。次は心を折ろう」

 イリカの糸に触れ、優しくささやく。

「イリカよ。よく耳を澄ましてみろ。周りの観客の声に」

「な、何を……」

 イリカにとっての地獄を、提案した。

「お、おい……イリカ様の魔術が、劣等生に劣っているぞ……」

「まさか、まばたき如きに相殺されるなんて……とんでもなく低レベルじゃん」
 
「もしかして……イリカ様の魔術って……大したことないんじゃねェの?」

「確かに……。容姿が優れいるだけで、勘違いさせられてきたけど、実際はそうでもないのかもな?」

「あの黒焔の祝福フレイム・ベリアルも実際は幻覚かなんかだろ?」

「なんか、ダセーですわね」

 実際の所、イリカの魔術は賢者を凌駕するほどだ。
 だが、それは”現代基準”での話。
 前世の記憶を持つ俺に取っては、取るに足らない相手だったというわけだ。

「なんか、情けねぇし、失望したな」

「全くだぜ。これまで、俺たちってあんな奴の腰巾着だったのかよ」

「自分に腹が立つよな」

「アルカァ! そんな奴殺しちまえ!!」

「殺せェ!! ペテン師イリカを殺してしまえェ!!」

「死ねェ! イリカ!!」

 イリカの腰巾着共が、ここぞとばかりにイリカに反旗を翻す。
 手の平がクルクルな、今の方が情けないと思うのだが……。

「もしかして、イリカ様が劣等生を疎んでいた理由って……”嫉妬”じゃね?」

「劣等生の方が実はスゴくて、イリカ様が嫉妬して……ってことか?」

「そうだと、オレは思うぞ……?」

「なんか、情けないわね……。いえ、むしろ……憐れ?」

「弟の方が優れているってことを隠蔽して、自身の実力を偽るって……」

「イリカ……そんな……」

 おまけに同情までされる始末。
 ここまでくると、憐れすぎて言葉も出ない。

「ふむ……これでは我が校にふさわしくないですね」

「確かに入試の時は優秀だったハズなのですが……」

「もしや、幻覚魔術を操り、我々に自身が優秀であるような幻覚を見せたのでは?」

「あるいは、コネを使い、面接官を懐柔したとかも、考えられますな」

「ともかく、イリカ君の……入学を取り消しましょう」

「ええ、そして……弟のアルカ君は……ふむ」

 観客に失望されるだけでは無く、ルノール魔術学院の関係者に入学を取り消される始末。
 可哀想で、憐れな男だ。
 
「どうだ、観客の声を聞いた気分は」

「な、何……あ、あり得ない……。そ、そんな……」

「これまで積み上げてきた全てが、崩れ去ったな」

「う、うぁああああああ!!」

 名声も実力も、全てを失ったイリカ。
 糸越しでその表情はわからないが、きっと良い表情なのだろう。

「確か、『王立ルノール魔術学院』の教師も招いていると言っていたよな?」

「うぅ、ぐぅ……」

「こんな情けない姿を見られたんだ。お前の入学は、きっと取り消しだろうな」

「ぐぁあああああああ!!!!」

 糸の中でイリカが暴れる。
 しかし、クモの糸を破ることなど不可能。

「さて、そろそろ終わりにしよう」

 俺は魔術を唱える。

「《筋肉の唄マッスル・ソング》《飛燕の唄ソニック・ソング》《鋼鉄の唄アイアン・ソング》」

「なッ、同時に3つも魔術を発動だと!?」

「お前と血が繋がっているのだぞ? 同じことくらいできて当然だ」

 複数の支援術を発動したことで、肉体が強化される。

「お前が何度もバカにした『虫けら』の実力、味合わせてやるよ」

 腰を深く落とし、拳を構える。

「【アリ怪力】【ハチ毒針】」

 2つのスキルを同時に発動して、正拳突き。
 メタルアントの怪力を誇り、ハザードビーの猛毒を纏った拳で、イリカの肝臓を正確に貫く。
 糸の簀巻すまきが、深紅ににじむ。

「ぐ、ぐぅ……痛い、いたいぃいいい」

「アリの怪力とハチの毒針を組み合わせたけれど、やっぱり相性が良いな」

 糸の中で泣き叫ぶイリカに、ツバを吐きつける。

「2時間以内に解毒した方がいいぞ。お前に刺した毒針は、強力な神経毒だ。3分で筋肉が硬直し、5分で脊髄に深刻な損傷ダメージ。その後、徐々に呼吸が苦しくなり、2時間後に呼吸困難で死に至る」

「そんな、死にたくない……。劣等生如きに、殺されたくない!!」

「これまでの俺の苦しみ、その身に味わえ」

「助けてくれ! 兄弟だろ!?」

「……今のは、ダメな発言だな」

 こいつ、クズだとは知ってはいたが。
 まさか、俺に様々ないじめをしておいて、兄弟の情を持ち掛けてくるとは。

「あれは俺が5歳の頃、お前と父さんは……俺の二の腕を焼いたよな」

「あ、あれは……そ、そうだ! 父さんに命令されて……」

「お前の嬉々とした表情、忘れていないからな」

 殴る。
 イリカの肋骨をへし折った。

「い、痛い! あ、兄にそんなことをして、良いと思っているのか!?」

「俺が7歳の頃。お前と父さんは……俺の右眼を潰したよな」

「あ、あれは……じ、事故だ! それに義眼をプレゼントしただろう!」

「『赤色』の義眼を、な。俺の元々の青い眼ではなく、真紅の義眼だ。青色と赤色の瞳、その組み合わせは、この国において不吉の象徴であることは知っているだろう?」

「し、知らない! は、初耳だ!」

「……その日の晩、お前と父さんが俺の瞳の件で嘲笑しているのを、この耳で聞いているんだよ」

「あ、謝る! 俺たちが悪かった! ほんの出来心だったんだ!」

「俺と同じ目を味わえ」

「や、やめろ! その手を近づけるな!」

 イリカの右眼をえぐり取った。

「あ、ぐ、あ……」

「お前は救えないな」

「た、頼む……、助けて……。兄弟だろ……?」

「『貴様とは”兄弟”ではない!!』のだろう?」

「そんなこと言わずに……」

「おっと、話している間に5分が過ぎたな。脊髄に深刻な損傷ダメージがいっているはずだ」

「そ、そんな……。どうなるんだ?」

「脊椎が腐り、首から下の感覚がなくなる。つまり、全く動かすことができなくなるということだ」

「……冗談だよな?」

「ついでに言ってやるが、お前から奪った数々の魔術はお前に返すことはできない。返すつもりもないが」

「……は?」

「お前の才能は、俺が活用するよ」

 奪うことは容易いが、返すことは不可能。
 それが奪盗術師だっとうじゅつしだ。

「返せ! ワタシの才能を! 死にたくない! 痛い!! 死にたくない!! 助けて!! 助けてください! ごめん! 謝るから!!」

「お前、忘れていないか?」

「な、何を……?」

「俺がお前に攻撃したのは、計9回」

「あ、あ、あ!?」

「残り1発、どうされたい?」

「そ、そんな……。あ、アレは……冗談で言ったつもり──」

「────救いようが無いな」

 拳を振り下ろし、顔面を砕いた。

「ぐ、が……」

「これがお前がバカにした劣等生虫けらの力だ」

 頭蓋骨が砕け散り気を失ったイリカを後にして、俺は踵を帰した。
 審判はいないが、誰がどう見ても俺の勝利だろう。
 観客の賞賛が、それを証明する。

「スゴかったぜ!! アルカ!!」

「まさか、アルカが勝つなんて……俺、思ってもみなかった!!」

「スゴいですわ、アルカ……いえ、アルカ様!!」

「ワタクシ、最初からアルカ様に惚れてましたの!!」

 手の平がクルクルの観客達に呆れる。
 応援の声自体は……案外悪くない。

「……そんな……アタシのイリカが……負けるなんて……」

 約1名、絶望の表情を浮かべる馬鹿な女がいる。
 ……ふふふ。
 
「やぁ、ユウカお嬢様」

 俺は嫌味っぽく、彼女に話しかけた。
 俺を裏切り、イリカに体を売った哀れな雌犬に。
感想 2

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜

ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」 「街の井戸も空っぽです!」 無能な王太子による身勝手な婚約破棄。 そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを! ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。 追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!? 優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。 一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。 「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——! 今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける! ※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

「君の魔法は地味で映えない」と人気ダンジョン配信パーティを追放された裏方魔導師。実は視聴数No.1の正体、俺の魔法でした

希羽
ファンタジー
人気ダンジョン配信チャンネル『勇者ライヴ』の裏方として、荷物持ち兼カメラマンをしていた俺。ある日、リーダーの勇者(IQ低め)からクビを宣告される。「お前の使う『重力魔法』は地味で絵面が悪い。これからは派手な爆裂魔法を使う美少女を入れるから出て行け」と。俺は素直に従い、代わりに田舎の不人気ダンジョンへ引っ込んだ。しかし彼らは知らなかった。彼らが「俺TUEEE」できていたのは、俺が重力魔法でモンスターの動きを止め、カメラのアングルでそれを隠していたからだということを。俺がいなくなった『勇者ライヴ』は、モンスターにボコボコにされる無様な姿を全世界に配信し、大炎上&ランキング転落。  一方、俺が田舎で「畑仕事(に見せかけたダンジョン開拓)」を定点カメラで垂れ流し始めたところ――  「え、この人、素手でドラゴン撫でてない?」「重力操作で災害級モンスターを手玉に取ってるw」「このおっさん、実は世界最強じゃね?」とバズりまくり、俺は無自覚なまま世界一の配信者へと成り上がっていく。 ※本作は小説家になろうでも投稿しています。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ
ファンタジー
 2020.9.6.完結いたしました。  2020.9.28. 追補を入れました。  2021.4. 2. 追補を追加しました。  人が精霊と袂を分かった世界。  魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。  幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。  ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。  人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。  そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。  オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。