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13話 憐憫 2/2
「【蜘蛛糸】」
俺は手首からクモの糸を発射した。
「な、なんだこれ……むぐぐぐ!!」
イリカはあっという間に、クモの糸で簀巻き状態に。
強靱なクモの糸を破ろうと必死に暴れているが、そんなことは叶わない。
「クモの糸は生物界で最も強い糸なんだよ」
スキル欄を眺めながら、イリカに近づく。
「そうだな。次は心を折ろう」
イリカの糸に触れ、優しく囁く。
「イリカよ。よく耳を澄ましてみろ。周りの観客の声に」
「な、何を……」
イリカにとっての地獄を、提案した。
「お、おい……イリカ様の魔術が、劣等生に劣っているぞ……」
「まさか、まばたき如きに相殺されるなんて……とんでもなく低レベルじゃん」
「もしかして……イリカ様の魔術って……大したことないんじゃねェの?」
「確かに……。容姿が優れいるだけで、勘違いさせられてきたけど、実際はそうでもないのかもな?」
「あの黒焔の祝福も実際は幻覚かなんかだろ?」
「なんか、ダセーですわね」
実際の所、イリカの魔術は賢者を凌駕するほどだ。
だが、それは”現代基準”での話。
前世の記憶を持つ俺に取っては、取るに足らない相手だったというわけだ。
「なんか、情けねぇし、失望したな」
「全くだぜ。これまで、俺たちってあんな奴の腰巾着だったのかよ」
「自分に腹が立つよな」
「アルカァ! そんな奴殺しちまえ!!」
「殺せェ!! ペテン師イリカを殺してしまえェ!!」
「死ねェ! イリカ!!」
イリカの腰巾着共が、ここぞとばかりにイリカに反旗を翻す。
手の平がクルクルな、今の方が情けないと思うのだが……。
「もしかして、イリカ様が劣等生を疎んでいた理由って……”嫉妬”じゃね?」
「劣等生の方が実はスゴくて、イリカ様が嫉妬して……ってことか?」
「そうだと、オレは思うぞ……?」
「なんか、情けないわね……。いえ、むしろ……憐れ?」
「弟の方が優れているってことを隠蔽して、自身の実力を偽るって……」
「イリカ……そんな……」
おまけに同情までされる始末。
ここまでくると、憐れすぎて言葉も出ない。
「ふむ……これでは我が校にふさわしくないですね」
「確かに入試の時は優秀だったハズなのですが……」
「もしや、幻覚魔術を操り、我々に自身が優秀であるような幻覚を見せたのでは?」
「あるいは、コネを使い、面接官を懐柔したとかも、考えられますな」
「ともかく、イリカ君の……入学を取り消しましょう」
「ええ、そして……弟のアルカ君は……ふむ」
観客に失望されるだけでは無く、ルノール魔術学院の関係者に入学を取り消される始末。
可哀想で、憐れな男だ。
「どうだ、観客の声を聞いた気分は」
「な、何……あ、あり得ない……。そ、そんな……」
「これまで積み上げてきた全てが、崩れ去ったな」
「う、うぁああああああ!!」
名声も実力も、全てを失ったイリカ。
糸越しでその表情はわからないが、きっと良い表情なのだろう。
「確か、『王立ルノール魔術学院』の教師も招いていると言っていたよな?」
「うぅ、ぐぅ……」
「こんな情けない姿を見られたんだ。お前の入学は、きっと取り消しだろうな」
「ぐぁあああああああ!!!!」
糸の中でイリカが暴れる。
しかし、クモの糸を破ることなど不可能。
「さて、そろそろ終わりにしよう」
俺は魔術を唱える。
「《筋肉の唄》《飛燕の唄》《鋼鉄の唄》」
「なッ、同時に3つも魔術を発動だと!?」
「お前と血が繋がっているのだぞ? 同じことくらいできて当然だ」
複数の支援術を発動したことで、肉体が強化される。
「お前が何度もバカにした『虫けら』の実力、味合わせてやるよ」
腰を深く落とし、拳を構える。
「【蟻怪力】【蜂毒針】」
2つのスキルを同時に発動して、正拳突き。
メタルアントの怪力を誇り、ハザードビーの猛毒を纏った拳で、イリカの肝臓を正確に貫く。
糸の簀巻きが、深紅に滲む。
「ぐ、ぐぅ……痛い、いたいぃいいい」
「アリの怪力とハチの毒針を組み合わせたけれど、やっぱり相性が良いな」
糸の中で泣き叫ぶイリカに、ツバを吐きつける。
「2時間以内に解毒した方がいいぞ。お前に刺した毒針は、強力な神経毒だ。3分で筋肉が硬直し、5分で脊髄に深刻な損傷。その後、徐々に呼吸が苦しくなり、2時間後に呼吸困難で死に至る」
「そんな、死にたくない……。劣等生如きに、殺されたくない!!」
「これまでの俺の苦しみ、その身に味わえ」
「助けてくれ! 兄弟だろ!?」
「……今のは、ダメな発言だな」
こいつ、クズだとは知ってはいたが。
まさか、俺に様々ないじめをしておいて、兄弟の情を持ち掛けてくるとは。
「あれは俺が5歳の頃、お前と父さんは……俺の二の腕を焼いたよな」
「あ、あれは……そ、そうだ! 父さんに命令されて……」
「お前の嬉々とした表情、忘れていないからな」
殴る。
イリカの肋骨をへし折った。
「い、痛い! あ、兄にそんなことをして、良いと思っているのか!?」
「俺が7歳の頃。お前と父さんは……俺の右眼を潰したよな」
「あ、あれは……じ、事故だ! それに義眼をプレゼントしただろう!」
「『赤色』の義眼を、な。俺の元々の青い眼ではなく、真紅の義眼だ。青色と赤色の瞳、その組み合わせは、この国において不吉の象徴であることは知っているだろう?」
「し、知らない! は、初耳だ!」
「……その日の晩、お前と父さんが俺の瞳の件で嘲笑しているのを、この耳で聞いているんだよ」
「あ、謝る! 俺たちが悪かった! ほんの出来心だったんだ!」
「俺と同じ目を味わえ」
「や、やめろ! その手を近づけるな!」
イリカの右眼を抉り取った。
「あ、ぐ、あ……」
「お前は救えないな」
「た、頼む……、助けて……。兄弟だろ……?」
「『貴様とは”兄弟”ではない!!』のだろう?」
「そんなこと言わずに……」
「おっと、話している間に5分が過ぎたな。脊髄に深刻な損傷がいっているはずだ」
「そ、そんな……。どうなるんだ?」
「脊椎が腐り、首から下の感覚がなくなる。つまり、全く動かすことができなくなるということだ」
「……冗談だよな?」
「ついでに言ってやるが、お前から奪った数々の魔術はお前に返すことはできない。返すつもりもないが」
「……は?」
「お前の才能は、俺が活用するよ」
奪うことは容易いが、返すことは不可能。
それが奪盗術師だ。
「返せ! ワタシの才能を! 死にたくない! 痛い!! 死にたくない!! 助けて!! 助けてください! ごめん! 謝るから!!」
「お前、忘れていないか?」
「な、何を……?」
「俺がお前に攻撃したのは、計9回」
「あ、あ、あ!?」
「残り1発、どうされたい?」
「そ、そんな……。あ、アレは……冗談で言ったつもり──」
「────救いようが無いな」
拳を振り下ろし、顔面を砕いた。
「ぐ、が……」
「これがお前がバカにした劣等生の力だ」
頭蓋骨が砕け散り気を失ったイリカを後にして、俺は踵を帰した。
審判はいないが、誰がどう見ても俺の勝利だろう。
観客の賞賛が、それを証明する。
「スゴかったぜ!! アルカ!!」
「まさか、アルカが勝つなんて……俺、思ってもみなかった!!」
「スゴいですわ、アルカ……いえ、アルカ様!!」
「ワタクシ、最初からアルカ様に惚れてましたの!!」
手の平がクルクルの観客達に呆れる。
応援の声自体は……案外悪くない。
「……そんな……アタシのイリカが……負けるなんて……」
約1名、絶望の表情を浮かべる馬鹿な女がいる。
……ふふふ。
「やぁ、ユウカお嬢様」
俺は嫌味っぽく、彼女に話しかけた。
俺を裏切り、イリカに体を売った哀れな雌犬に。
俺は手首からクモの糸を発射した。
「な、なんだこれ……むぐぐぐ!!」
イリカはあっという間に、クモの糸で簀巻き状態に。
強靱なクモの糸を破ろうと必死に暴れているが、そんなことは叶わない。
「クモの糸は生物界で最も強い糸なんだよ」
スキル欄を眺めながら、イリカに近づく。
「そうだな。次は心を折ろう」
イリカの糸に触れ、優しく囁く。
「イリカよ。よく耳を澄ましてみろ。周りの観客の声に」
「な、何を……」
イリカにとっての地獄を、提案した。
「お、おい……イリカ様の魔術が、劣等生に劣っているぞ……」
「まさか、まばたき如きに相殺されるなんて……とんでもなく低レベルじゃん」
「もしかして……イリカ様の魔術って……大したことないんじゃねェの?」
「確かに……。容姿が優れいるだけで、勘違いさせられてきたけど、実際はそうでもないのかもな?」
「あの黒焔の祝福も実際は幻覚かなんかだろ?」
「なんか、ダセーですわね」
実際の所、イリカの魔術は賢者を凌駕するほどだ。
だが、それは”現代基準”での話。
前世の記憶を持つ俺に取っては、取るに足らない相手だったというわけだ。
「なんか、情けねぇし、失望したな」
「全くだぜ。これまで、俺たちってあんな奴の腰巾着だったのかよ」
「自分に腹が立つよな」
「アルカァ! そんな奴殺しちまえ!!」
「殺せェ!! ペテン師イリカを殺してしまえェ!!」
「死ねェ! イリカ!!」
イリカの腰巾着共が、ここぞとばかりにイリカに反旗を翻す。
手の平がクルクルな、今の方が情けないと思うのだが……。
「もしかして、イリカ様が劣等生を疎んでいた理由って……”嫉妬”じゃね?」
「劣等生の方が実はスゴくて、イリカ様が嫉妬して……ってことか?」
「そうだと、オレは思うぞ……?」
「なんか、情けないわね……。いえ、むしろ……憐れ?」
「弟の方が優れているってことを隠蔽して、自身の実力を偽るって……」
「イリカ……そんな……」
おまけに同情までされる始末。
ここまでくると、憐れすぎて言葉も出ない。
「ふむ……これでは我が校にふさわしくないですね」
「確かに入試の時は優秀だったハズなのですが……」
「もしや、幻覚魔術を操り、我々に自身が優秀であるような幻覚を見せたのでは?」
「あるいは、コネを使い、面接官を懐柔したとかも、考えられますな」
「ともかく、イリカ君の……入学を取り消しましょう」
「ええ、そして……弟のアルカ君は……ふむ」
観客に失望されるだけでは無く、ルノール魔術学院の関係者に入学を取り消される始末。
可哀想で、憐れな男だ。
「どうだ、観客の声を聞いた気分は」
「な、何……あ、あり得ない……。そ、そんな……」
「これまで積み上げてきた全てが、崩れ去ったな」
「う、うぁああああああ!!」
名声も実力も、全てを失ったイリカ。
糸越しでその表情はわからないが、きっと良い表情なのだろう。
「確か、『王立ルノール魔術学院』の教師も招いていると言っていたよな?」
「うぅ、ぐぅ……」
「こんな情けない姿を見られたんだ。お前の入学は、きっと取り消しだろうな」
「ぐぁあああああああ!!!!」
糸の中でイリカが暴れる。
しかし、クモの糸を破ることなど不可能。
「さて、そろそろ終わりにしよう」
俺は魔術を唱える。
「《筋肉の唄》《飛燕の唄》《鋼鉄の唄》」
「なッ、同時に3つも魔術を発動だと!?」
「お前と血が繋がっているのだぞ? 同じことくらいできて当然だ」
複数の支援術を発動したことで、肉体が強化される。
「お前が何度もバカにした『虫けら』の実力、味合わせてやるよ」
腰を深く落とし、拳を構える。
「【蟻怪力】【蜂毒針】」
2つのスキルを同時に発動して、正拳突き。
メタルアントの怪力を誇り、ハザードビーの猛毒を纏った拳で、イリカの肝臓を正確に貫く。
糸の簀巻きが、深紅に滲む。
「ぐ、ぐぅ……痛い、いたいぃいいい」
「アリの怪力とハチの毒針を組み合わせたけれど、やっぱり相性が良いな」
糸の中で泣き叫ぶイリカに、ツバを吐きつける。
「2時間以内に解毒した方がいいぞ。お前に刺した毒針は、強力な神経毒だ。3分で筋肉が硬直し、5分で脊髄に深刻な損傷。その後、徐々に呼吸が苦しくなり、2時間後に呼吸困難で死に至る」
「そんな、死にたくない……。劣等生如きに、殺されたくない!!」
「これまでの俺の苦しみ、その身に味わえ」
「助けてくれ! 兄弟だろ!?」
「……今のは、ダメな発言だな」
こいつ、クズだとは知ってはいたが。
まさか、俺に様々ないじめをしておいて、兄弟の情を持ち掛けてくるとは。
「あれは俺が5歳の頃、お前と父さんは……俺の二の腕を焼いたよな」
「あ、あれは……そ、そうだ! 父さんに命令されて……」
「お前の嬉々とした表情、忘れていないからな」
殴る。
イリカの肋骨をへし折った。
「い、痛い! あ、兄にそんなことをして、良いと思っているのか!?」
「俺が7歳の頃。お前と父さんは……俺の右眼を潰したよな」
「あ、あれは……じ、事故だ! それに義眼をプレゼントしただろう!」
「『赤色』の義眼を、な。俺の元々の青い眼ではなく、真紅の義眼だ。青色と赤色の瞳、その組み合わせは、この国において不吉の象徴であることは知っているだろう?」
「し、知らない! は、初耳だ!」
「……その日の晩、お前と父さんが俺の瞳の件で嘲笑しているのを、この耳で聞いているんだよ」
「あ、謝る! 俺たちが悪かった! ほんの出来心だったんだ!」
「俺と同じ目を味わえ」
「や、やめろ! その手を近づけるな!」
イリカの右眼を抉り取った。
「あ、ぐ、あ……」
「お前は救えないな」
「た、頼む……、助けて……。兄弟だろ……?」
「『貴様とは”兄弟”ではない!!』のだろう?」
「そんなこと言わずに……」
「おっと、話している間に5分が過ぎたな。脊髄に深刻な損傷がいっているはずだ」
「そ、そんな……。どうなるんだ?」
「脊椎が腐り、首から下の感覚がなくなる。つまり、全く動かすことができなくなるということだ」
「……冗談だよな?」
「ついでに言ってやるが、お前から奪った数々の魔術はお前に返すことはできない。返すつもりもないが」
「……は?」
「お前の才能は、俺が活用するよ」
奪うことは容易いが、返すことは不可能。
それが奪盗術師だ。
「返せ! ワタシの才能を! 死にたくない! 痛い!! 死にたくない!! 助けて!! 助けてください! ごめん! 謝るから!!」
「お前、忘れていないか?」
「な、何を……?」
「俺がお前に攻撃したのは、計9回」
「あ、あ、あ!?」
「残り1発、どうされたい?」
「そ、そんな……。あ、アレは……冗談で言ったつもり──」
「────救いようが無いな」
拳を振り下ろし、顔面を砕いた。
「ぐ、が……」
「これがお前がバカにした劣等生の力だ」
頭蓋骨が砕け散り気を失ったイリカを後にして、俺は踵を帰した。
審判はいないが、誰がどう見ても俺の勝利だろう。
観客の賞賛が、それを証明する。
「スゴかったぜ!! アルカ!!」
「まさか、アルカが勝つなんて……俺、思ってもみなかった!!」
「スゴいですわ、アルカ……いえ、アルカ様!!」
「ワタクシ、最初からアルカ様に惚れてましたの!!」
手の平がクルクルの観客達に呆れる。
応援の声自体は……案外悪くない。
「……そんな……アタシのイリカが……負けるなんて……」
約1名、絶望の表情を浮かべる馬鹿な女がいる。
……ふふふ。
「やぁ、ユウカお嬢様」
俺は嫌味っぽく、彼女に話しかけた。
俺を裏切り、イリカに体を売った哀れな雌犬に。
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「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」
これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。