花仕舞師

RISING SUN

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第八章──悌(したしみ)の絆、隠された友情の証

106話

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 清たちは京ノ国、繁華の地への帰路についた。妊娠している朱鷺の身体を労りながら少し歩いては休み、歩いては休みを繰り返す。根音と根子が朱鷺に寄り添い、無理をさせなかった。
 清は三人と離れ一人、想いを巡らせていた。それは違和感に近い感情だった。

 ───何ゆえ、お朱鷺さまは、かくもたやすく舞をお受けなされたのか……。確かに切羽詰まりし折、半ば強いて舞を成したるは否めぬ。されど、お朱鷺さまはわれに良き情など抱きおられなんだはず……。仕舞ふことの理さえ、あやふやにて候。お朱鷺さまの幸吉殿への御情は、疑いなく真にてあろう。ならば、いささかの反発あらねばならぬものを……──

 根音と根子と戯れている朱鷺の姿。哀しさや淋しさを抱えている表情は良い意味で晴れやかだ。それは幸吉の想いをしっかりと引き継いだ証だろう。
 
 ──されば、何ゆえ姉さまは舞の場に姿を見せられなんだ……──

 二つの疑問を持ったまま清は考え込んでいた。

 ──此度は確かに仕舞えた……されど、それは果たしてわれが力のみによるものか……。姉さまは申された、「半死を作られしは厄介なり」と……ならば、来られるはず……来られるはずにてあろうに……──

「清さま……いかがなされましたか?」
 気付くと根子が清の顔を覗き込んでいた。
「いや、何でもござらぬ……それより、お朱鷺さまの容体は如何に?」
「はい……心はやや揺れおられますれど、体調はよろしゅうございまする」
「それはよきこと……では、暫しここにて休もうぞ」
「こら、根音! 清さまに凭れかかればご負担に……」
「構わぬ……ほれ、根子も来られよ」
 根子は表情を明るくし隣に座り、寄りかかった。そして根子もうとうとし始めた。
「ほんに……手を焼かせるな……二人とも……」
 しばしの休息に三人は寄り添った。

 遠くでそれを見ている朱鷺。
「……まこと、親子の如き有り様にて候な。されど、あの幼き者らは人ならぬ身……ただ今は、母を慕う稚児ややこの如きか……」
 朱鷺は微笑んだ。そして懐から幸吉が消滅した場所で拾い上げた『時留の花飾り』を出して眺めた。
「これは……御前さまの形見となり申したな……。されど此度拾いしこの髪飾り、清殿が常に髪に挿しておられるものと同じ。『時を留むる』代物と、あの方は申しておられたが……もしや清殿も、留むべき刻をお持ちにて候や……」
 朱鷺は寄り添い合う三人の背中を見ながら呟いていた。
「まこと、あの御方は不思議なる人よ……申したが如く、すべてがそのように成りゆく……さながら導かれるるるがごとし。そして……清殿は、われらが胸に、幸吉さまの御心を届けてくだされた」
 朱鷺はぎゅっと時留の花飾りを胸元に置き、握りしめた。
「幸吉さま……この身、必ずやそなたの御想い、継ぎ参らせまする……」
 朱鷺はその想いを心に留め眠りについた。

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