155 / 159
第九章──忍(しのび)の想い、秘めし愛の守り手
155話
しおりを挟む
二つ目の蕾が交互に開く。ひとつは一面花園の場に翅衣揚羽を纏う、花護人花枝参、花翅。そしてそこから這い出るように現れ陽の光に晒され、青く光る蒼鱗の衣を纏い、濡れた髪を揺り動かす花傀儡仇花枝参、花徒影。花翅が蝶の如く、空を自由に飛び回りながら舞い、緋月夜桜の『罰』を散らせば、逆に花徒影は『罰』を緋月夜桜に纏わせようとする舞。
──これぞ、まことの花仕舞師の舞……あまりに幻想的にて、胸の奥まで震わされ申す……──
舞台上で紅花は感嘆する。緋月夜桜は舞台上にて、閉じる瞳から静かに涙を流している。
三つ目の蕾が開く。真白の蕾からは鎖に繋がれた双子の花護人肆、花根孖である緋色の瞳の根音と藤色の瞳の根子。漆黒の蕾からは背を向け顔を見せず、えも言えぬ喪色の衣を纏い、見るものすべてに型を崩すような舞を披露する花傀儡仇花枝肆、反花。場面は深呼吸を促すほどの木々生い茂る森林の地。『忍』の徳の根を張らせるように根子が緋月夜桜に寄り添い、影に根音が寄り添う。幼子の二人は凛として舞う。
「お姉ちゃん……」
根音は複雑な表情を浮かべながらも花護人として舞い、仕舞う。逆に反花は挑発するように型を崩し、緋月夜桜の『罰』を煽る舞。
四つ目の蕾。一気に霧がかかったかと思えばそこから輪郭なさず幻の如く現る花護人花枝伍、花霧、緋月夜桜の迷いを晴らすが如く徐々に晴れやかになると輪郭を現し、白の髪と瞳の、霧霞《きりがすみ》の衣を纏う姿が現れ舞う。一方、場内、焔に包まれ、焔が揺れるが如くの瞳に逆立つ髪、深紅の化焔衣を纏う花傀儡仇花枝伍、花焔。反花が煽った『罰』を焚き付ける。緋月夜桜の『罪』を焚き付け、焚き付け、焚き付け『罰』を燃やし尽くすが如き袖を振る舞。それは焚き付け、最期に黒く染めるが如く。千種座、劫火に包まれるが如しの熱帯、見物衆、心まで焦がされる想ひ。
「あの御方……あの折の……」
花焔を見た市三朗は妖艶かつ情熱な舞に震え上がる。
「されど……なんとも……目が離せ申さぬ」
そして最期に控えし蕾が咲くとと荘厳あらたかな社が舞台に姿を現し、優雅の花冠、頭に身につけ、白紲神環ノ衣纏う巫女姿の花護人花枝陸、花誓。巫女舞の如く、神に捧げる花誓は緋月夜桜に契りを示す花契筆ノ詞綴を掲げる。花傀儡仇花枝陸は花墨。焼け焦げたような色の衣を纏いし、姿は花焔に焦がされた『罰』を塗りつけ、そのまま静かに成就させるが如く舞う。花護人、花傀儡、それはまるで緋月夜桜の人生を再現し、死を成就させようとする。
「嗚呼──我が生きしすべて、ここにあり……花仕舞師の舞、まるで二人の母上に包まれし愛の如く……」
緋美は夜月と紅花、二人の母の愛を今一度、晴れ舞台の壇上、誉れに涙を流す。
──さあ、最期に締むるなり。紅花殿、花結の詞を高らかに……──
紅花は緋美との想い出を胸に……
──語らずとも、寄り添うぬくもりがある。隠れた愛は、決して消えず、『忍』ぶが如く、風のようにそばにいる──
「此にて花結、締結──」
そして、静が花尽の言葉を告げようとする。が、涙を流す緋月夜桜がかすかな声で口にする。その声が静の耳にも入る。
「母上さま……かたじけのうございまする。緋月夜桜は、演者にてあらせられる母上さまの娘として、まこと、面目に存じておりました。ただ……叶いますれば、われも……母上さまの如く……演者となりとうございました……」
その言葉が静の忘れがたき想いと重なり、言葉が出なくなり、舞が止まりかける。目頭がじんわりと滲みかかる……。感情断ち切るためが面、花断から涙が浮かぶ。
──この想い……あの折と……──
「静さま……! 心乱れておりんす……いけませぬ。本懐を成し遂ぐるため……これでは二の舞にござりまするぞ!」
静は、はっとわれに返る。
──いかぬ……なぜ、あの小娘に『罰』を背負はせてまで、舞台を操りしや。さるは、此の負を乗り越えさせるため、『忍』の徳をより強くせしむるため……妾が本懐、果たすために……──
──心に染みし罰よ。罰を受けるは、我が運命なり。ただし、深き闇の底へ。此、忍の心を抱いて──
「此にて花尽──」
──これぞ、まことの花仕舞師の舞……あまりに幻想的にて、胸の奥まで震わされ申す……──
舞台上で紅花は感嘆する。緋月夜桜は舞台上にて、閉じる瞳から静かに涙を流している。
三つ目の蕾が開く。真白の蕾からは鎖に繋がれた双子の花護人肆、花根孖である緋色の瞳の根音と藤色の瞳の根子。漆黒の蕾からは背を向け顔を見せず、えも言えぬ喪色の衣を纏い、見るものすべてに型を崩すような舞を披露する花傀儡仇花枝肆、反花。場面は深呼吸を促すほどの木々生い茂る森林の地。『忍』の徳の根を張らせるように根子が緋月夜桜に寄り添い、影に根音が寄り添う。幼子の二人は凛として舞う。
「お姉ちゃん……」
根音は複雑な表情を浮かべながらも花護人として舞い、仕舞う。逆に反花は挑発するように型を崩し、緋月夜桜の『罰』を煽る舞。
四つ目の蕾。一気に霧がかかったかと思えばそこから輪郭なさず幻の如く現る花護人花枝伍、花霧、緋月夜桜の迷いを晴らすが如く徐々に晴れやかになると輪郭を現し、白の髪と瞳の、霧霞《きりがすみ》の衣を纏う姿が現れ舞う。一方、場内、焔に包まれ、焔が揺れるが如くの瞳に逆立つ髪、深紅の化焔衣を纏う花傀儡仇花枝伍、花焔。反花が煽った『罰』を焚き付ける。緋月夜桜の『罪』を焚き付け、焚き付け、焚き付け『罰』を燃やし尽くすが如き袖を振る舞。それは焚き付け、最期に黒く染めるが如く。千種座、劫火に包まれるが如しの熱帯、見物衆、心まで焦がされる想ひ。
「あの御方……あの折の……」
花焔を見た市三朗は妖艶かつ情熱な舞に震え上がる。
「されど……なんとも……目が離せ申さぬ」
そして最期に控えし蕾が咲くとと荘厳あらたかな社が舞台に姿を現し、優雅の花冠、頭に身につけ、白紲神環ノ衣纏う巫女姿の花護人花枝陸、花誓。巫女舞の如く、神に捧げる花誓は緋月夜桜に契りを示す花契筆ノ詞綴を掲げる。花傀儡仇花枝陸は花墨。焼け焦げたような色の衣を纏いし、姿は花焔に焦がされた『罰』を塗りつけ、そのまま静かに成就させるが如く舞う。花護人、花傀儡、それはまるで緋月夜桜の人生を再現し、死を成就させようとする。
「嗚呼──我が生きしすべて、ここにあり……花仕舞師の舞、まるで二人の母上に包まれし愛の如く……」
緋美は夜月と紅花、二人の母の愛を今一度、晴れ舞台の壇上、誉れに涙を流す。
──さあ、最期に締むるなり。紅花殿、花結の詞を高らかに……──
紅花は緋美との想い出を胸に……
──語らずとも、寄り添うぬくもりがある。隠れた愛は、決して消えず、『忍』ぶが如く、風のようにそばにいる──
「此にて花結、締結──」
そして、静が花尽の言葉を告げようとする。が、涙を流す緋月夜桜がかすかな声で口にする。その声が静の耳にも入る。
「母上さま……かたじけのうございまする。緋月夜桜は、演者にてあらせられる母上さまの娘として、まこと、面目に存じておりました。ただ……叶いますれば、われも……母上さまの如く……演者となりとうございました……」
その言葉が静の忘れがたき想いと重なり、言葉が出なくなり、舞が止まりかける。目頭がじんわりと滲みかかる……。感情断ち切るためが面、花断から涙が浮かぶ。
──この想い……あの折と……──
「静さま……! 心乱れておりんす……いけませぬ。本懐を成し遂ぐるため……これでは二の舞にござりまするぞ!」
静は、はっとわれに返る。
──いかぬ……なぜ、あの小娘に『罰』を背負はせてまで、舞台を操りしや。さるは、此の負を乗り越えさせるため、『忍』の徳をより強くせしむるため……妾が本懐、果たすために……──
──心に染みし罰よ。罰を受けるは、我が運命なり。ただし、深き闇の底へ。此、忍の心を抱いて──
「此にて花尽──」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる