本当はあなたを愛してました

涙乃(るの)

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第ニ部

回想

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「リナ、ただいま、はい、これはお土産。

あぁ、ルーカス坊ちゃん。いつもリナと仲良くしてくれてありがとう。
ルーカス坊ちゃんが毎日リナを気にかけてくれるから、安心して仕事に集中できたよ。
旦那様もルーカス坊ちゃんのことをいつも褒めてるよ」

隣街の交渉から帰ってきた父を、嬉しくて真っ先に玄関へと出迎えた。それまで部屋で一緒に課題をしていたルーカスを残して。 慌てて部屋を飛び出した私の後ろを、ゆったりと付き添ってきていたルーカス。

そう、ゆったりと歩いて来てたはずなのに、いつの間にかすぐ近くにいた。歩幅が違うからかな。私だけバタバタしていて恥ずかしい。


『もぅ、お父さん、私ももう子供じゃないんだから、一人で留守番出来るし、ルーカスを買い被りすぎなんじゃないの~。
私だってルーカスを気にかけてるし…というか私のが…』


「ははは、リナ、分かったから、お土産をルーカス坊ちゃんと開けておいで。お父さんは、ゆっくり休ませてもらうよ、ルーカス坊ちゃん、ではまた」

「隣街への交渉、お疲れさまでした」


『もぅ、お父さんっ』

ポンポンっと私の頭を撫でて父は自室へと向かった。

『いっつも子供扱いして~』

撫でられた頭の上に手を乗せてむくれる私。

「子供扱いしたくなるよ。毎日朝起きれないみたいだし、いつもバタバタしてるよねリナは」

『ちょ、もぅルーカスまで』

頭上に乗せた私の手の上を、ポンポンっと撫でるルーカス。

『朝は…苦手なのっ。というか関係ないじゃない。もうすぐ卒業するし、十分大人に近づいてるんですけどっ』

ぶつぶつ文句を言いながらも、お土産が楽しみで、部屋へと戻る。

そんな私の後ろをルーカスは黙ってついてきていた

「いつまでも子供じゃないから、心配なんだよ……  僕もね」

『ん?ルーカス何か言った?』

私は何か話しかけられた気がして、後ろを振り向いてルーカスに問いかけたけれど、ルーカスは澄ました顔をしていた

気のせいかな…

部屋へ戻ると、先程と同じ位置に座る


父からのお土産を開けてみると、りんごの詰め合わせだった。


「わぁ、良い匂い」


「これは美味しそうだね。」

『ルーカスも果物好きだもんね。さっそく
剥くね』

私はテーブルを片付けて、果物ナイフを持ってきた。ぎこちない手つきで真剣に剥いていく。

「僕も手伝う。包丁借りるね」

ルーカスは包丁を取りに行って戻ってくると、器用にりんごを剥き始めた。 ルーカスは頻繁に家に遊びに来ているので、いつの間にか物の場所なども覚えていた。

ただりんごの皮を剥いているだけなのに、それだけでも素敵に見えるのはなぜだろう

なんだか不思議な気持ちでじっと見つめてしまう。 
シュルシュルとりんごの皮が細長く伸びていくさまが心地よくて…


「何?」

そんな、私の視線に気づいたルーカスに問いかけられる

『べつに…上手だなと思って』

「あぁ、ちょっと刺繍の練習した時に、皮剥きの練習もしようかなと思って、少し練習したんだよね」


!!!

刺繍って…あ、あの時の…


私は嬉しいやら恥ずかしいやらで赤面していた

私は恥ずかしいのを悟られないように、平然を装い疑問を口にする


『し、刺繍と皮剥きって関係ないよね?』


「だって、料理苦手そうだから。リナ。
だから、皮剥きくらいは僕がすればいいかなって思って。そしたら2人で一緒にできるし。よし、きれいに剥けた。これくらいの大きさに切ればいいかな、はい、リナ」


『え?…』


さらっと動揺することを言われたような……
理解が追いつかず混乱しているところに、ルーカスから口の中へりんごを差し出された。


モグモグモグ…
『美味しい!』


夢中で食べる私を見てルーカスは微笑んでいたように思う

そうであってほしいと思っていたのかな…

「ねぇ、リナ」


「…んん?」

私はりんごが口の中にあったので、上手く返答できなかった

「卒業して、お互い商会で働き始めて、それで、もし、いつか隣街への交渉のメンバーに選ばれたら、その時は、一緒に……行けるといいね。
いや……一緒に行こうリナ」

『う~ん、そうだね』

「リナ?」

煮え切らない私の返答を訝しむルーカス。


「ふふ。ごめんルーカス。なんだか実感がわかなくて。もうすぐ卒業なんだよね私達。卒業かぁ……

そうなれるといいね。」

「あぁ」

『約束ね、ルーカス』

私はルーカスに向かって微笑んだ
いつ見てもルーカスの眼差しは優しい
優しかったね……




『あぁ…  夢か…』


頬に手を当てると、涙が流れていた


懐かしい夢…

今さらこんな夢を見るのは、ルーカスに会ったからね

運命は残酷だわ…

運命のせいにはしたくないけれど

運命は決まっているものではなく切り開くものだって、

未来は自分で変えられるって

だから、誰でも幸せになろうとすればなれるって


そんな事を聞いたことがある


でも…

もし

例えば今まで付き合った人が、同時期に現れていたら




どうするのだろう




やはり別れた人を選ばないのだろうか


別れることになるとしても、想いを告げるのだろうか


それとも、悩むことなく、この人しかいないと惹かれるのだろうか


悩むということはどちらも大切だから?

心惹かれるならそもそも悩むことなどあり得ないのかな

今の生活を大切に…か…




失って後悔した…ことって…


今さらそんなこと言うなんて


ずるいよ…ルーカス
























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