本当はあなたを愛してました

涙乃(るの)

文字の大きさ
30 / 60
第ニ部

診察

しおりを挟む
「話せる範囲で構いません。お願いします!ルーカスは、ルーカスは、どこが悪いのですか?
何の病気なのですか?
治りますよね? 大丈夫ですよね!お願いします! 助けてください先生!」


感情が制御出来ずに、先生にひたすら質問を重ねる。少しでも何か言葉を発していないと、不安で押し潰されそうになる。
このままだとパニックに陥るかもしれない。
ううん、もう、既にパニックなのかもしれない。

苦しい……。
あれ……?私……息が……
どうしたらいいの……呼吸ができない

「はっ、はっ……せん……せ……はっ……」

もう……だめ……

いつの間にか胸を押さえながら、膝から崩れ落ちるように床に座り込んでいた。


「落ち着いてください。さぁ、ゆっくり深呼吸をして、そう、ゆっくり、息を吸って━━、吐いて━━。そうその調子です。この袋を手で持ってください。この袋の中に、先程と同じように深呼吸を。
さぁ、落ち着いて━━」

パニックになり過呼吸に陥っていたらしい。
先生は優しく背中をさすりながら、落ち着くまで見守ってくれていた。


「不安な気持ちはわかりますが、こんな時だからこそ、あなたがしっかりしないと。
ゆっくり深呼吸をされてください。
極度の不安からくる心理的ストレスの影響でしょう。少し休みますか? まずはこちらに座られてください」

先生は床に座り込んでいた私の手を取り、ソファーへと誘導してくれた。


「いいえ、大丈夫です。動揺してしまって……ありがとうございます。もう、大丈夫です。すみません、先生、ルーカスのこと教えてください、お願いします。」


「━━結論からいいますと、彼は、病気ではありません。彼は━━。」


「そんなっ!あんなに苦しんでいるんですよ!病気じゃないなんてありえないでしょう。どうしてルーカスは倒れたんですか!調べてください!お願いします!先生!」

先生の言葉を聞き終える前に遮って、叫んでいた。病気じゃないって、どういうことなの?

「どうか、落ち着いてください。まずは、私の説明を聞いてください。

確かに、苦しいでしょう。その苦しみの原因は、病気ではありませんが……。

詳しいことは、今はこれ以上は話せません。
ただ、彼には一刻も早い治療が必要です。こちらの設備では難しいので、紹介状を書きます。すぐに向かわれた方がいいでしょう。
それと、治安隊の同行をお願いしてあります。」

「治安隊?」

「驚かれましたかな?少し気になることがありますので……。

事件性の疑いがある、とだけお話ししましょう。

やましいことがなければ、何も恐れることはないでしょう?

それに治安隊に先導してもらえれば、速く到着することもできます。
それだけ緊急を要する状態です。
あなたの心配している様子が演技ではないと信じて、お話したのです。どうか、裏切らないでくださいね」

事件性? どういうこと……?
今の私の立場では、これ以上の説明を聞くことができない。悔しいけれど、
今はそんなことよりも、ルーカスを助けたい。
ここの設備では無理というのならば、とにかく治療してくれる所へ連れて行きたい。

治安隊の方が到着するまで、ルーカスの傍に寄り添っていた。
けれど、まるで監視するようにスタッフの方が私を見つめていた。

「ルーカス……」


苦しむルーカスを、ただ見ていることしかできない。自分はなんて無力なんだろう……。

ルーカスの手を握り、早く治りますようにとひたすら祈っていた。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

身代わりーダイヤモンドのように

Rj
恋愛
恋人のライアンには想い人がいる。その想い人に似ているから私を恋人にした。身代わりは本物にはなれない。 恋人のミッシェルが身代わりではいられないと自分のもとを去っていった。彼女の心に好きという言葉がとどかない。 お互い好きあっていたが破れた恋の話。 一話完結でしたが二話を加え全三話になりました。(6/24変更)

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

白い結婚の行方

宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」 そう告げられたのは、まだ十二歳だった。 名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。 愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。 この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。 冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。 誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。 結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。 これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。 偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。 交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。 真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。 ──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?  

処理中です...