傷だらけの令嬢 〜逃げ出したら優しい人に助けられ、騎士様に守られています〜

涙乃(るの)

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24茶会3

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私は、母がなくなってからの自分の身に起こったことを全て話した。

腕の一部を見せて、まだ体中に残ってある鞭打ちの跡のことも。

グレッグ様は怒りでこめかみに血管が浮き出ていた。

クレア様、ルイーズ様も私の話しを聞きながら怒りと哀しみの表情を交互に浮かべていた。

「ノーマン伯…何という酷いことを…。
こちらが表立って動けないと踏んだのね。そちらがその気なら、こちらも遠慮なく容赦しないわ!」

「クレア、私にもぜひ協力させて。グレッグが初めて連れて来た方だもの。ソフィア嬢は私の義娘になるかもしれないのだから。」

「フォルスター夫人、母上、ノーマン伯の件は早急に王城へ報告致します。」

「グレッグ殿、スムーズに事が運ぶよう口添えさせていただきます。それとも…
処理した方が早いかしら」

「フォルスター夫人。その時は私が。」

何やら不穏な会話が進んでいて、気になっていることを尋ねるタイミングがつかめないでいた。

一人蚊帳の外に置かれた私に
「ソフィアは何も気にすることはない」 とグレッグ様が気遣うように声をかけてくれる


「えぇ、そうよ、ソフィア嬢…ソフィア。

ソフィアと呼ばせていただけるかしら?」



『えぇ、もちろんです』

「ありがとう、ソフィア…ごめんなさいね…もっと早くに助けてあげられなくて…
うぅ…つらかったわね

あぁロバート………先に逝ってしまうなんて。
あの子と最後にどんな会話を交わしたのか、どんな顔をしていたのかも、もう…思い出せないわ
貴族のプライドなんて捨ててしまえば良かった。和解することもできずに…

あの子の大切な忘れ形見のソフィアのこともずっと苦しめていたなんて…

メアリー嬢も…私達のこと…憎んでいたでしょうね…」


『いいえ、母は憎んでいなかったと思います』


フォルスター夫人はハンカチで口元を押さえながら、潤んだ瞳で問いかけるようにソフィアを見つめる。

『母はいつも私に言っていました。誰かを憎んだりしてはいけないって。とても優しい人でした。だから…きっと…』

「メアリー嬢は素晴らしい女性だったのね。ロバートが惹かれるはずだわ。」
 

『あの、クレア様…私はどうして伯爵邸に引き取られたのでしょうか?』


「ソフィア。おそらくそれは…
いえ、憶測にすぎないわね。
でも、早急に貴族名簿を確認する必要があるわね。
ノーマン伯がソフィアを娘として届け出ているかの確認をしなければね。それ相応の対応をさせていただきます。

ソフィア、あなたはロバートの娘よ。
今は、身内だから、私だから分かるとしか言えないわね。きちんと調査して証明しましょう。

今度ロバートの姿絵を見にいらっしゃい。あなたは…私の孫なのだから。

一つ言えるのは、ロバートは、親の私から見てもとても人気があったということ。

なかでもエミリア嬢をよく見かけたわね。

ロバートがいなくなって、エミリア嬢はノーマン伯と結婚したとか。

エミリア嬢は、メアリー嬢に執拗に嫌がらせをしていたようだったわ。

ごめんなさいソフィア…私は…見て見ぬふりをしていたわ。本当にごめんなさい…」

エミリア…アンジェリカの母親。

私は…あの人達と血が繋がっていないということ?

ずっとずっと嫌だった。
癇癪の捌け口にされ暴力を受けて… 

ひたすら耐えるしかなくて。

でも私はあの人の娘ではない…?義姉とも、ううん、そもそも義姉ではない?
アンジェリカ。
いつもいつも執拗に私に暴言、暴力を…。


どうしようもない怒りと、醜い感情に流されそうになる。

「ソフィア…ソフィア」

私ははっとしてグレッグ様を見つめる。

「ソフィア。
つらいことを思い出させてしまったな。

今日はもう帰ろう。

何も心配しなくていい。
もう一人で苦しまなくていい」

グレッグ様の吸い込まれるようなブルーグレイの瞳に見つめられて、荒ぶった感情の波がゆっくりと凪いでいく。

グレッグ様は繋いだ手を解いて私の背中に手を回した。

グレッグ様に寄りかかるように立ち上がると、挨拶をして退室した。


クレア様は必ず連絡すると言っていた。




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