9 / 105
ステージ1 ルドベキア
第9話 クローンって奴隷でしょ?
しおりを挟む
「要するに……ツバキさんもダイアさんと同じように、クローンだったという訳なんですね」
「まぁ……そうっすね。今日はレベル上げだから遊んでていいと言われてたけど、まさか君と出会うとは分からんもんすねー。あー、だからか、それで変なパーティー名付けられてたんすねー」
「え、姉ちゃん……いえシュウと会ったんですよね? 何にも聞かなかったんですか?」
「いやまあ、リチア様とシュウが仲良いのはいつもの事だから。あのメンツで居ても何も思わないっす」
「……良かったあ、姉ちゃんに友達がいて……!!」
僕はツバキという男の目も気にせず涙を流した。それだけ、姉に友達がいることがとても嬉しかった。
「……そろそろ出ようかな。天汰くんも良かったら一緒に」
「ああ、そうします」
僕は、浴槽から上がろうとする僕に差し伸べられた手を掴み、一足先へ行くツバキの背中を追った。
「……お、服、綺麗になってるっすね」
「僕のも洗われてるー……すげー」
汗まみれで返り血を浴びた制服は、新品同様の輝きを放ち、しかもまたご丁寧に畳まれ置かれていた。
「しっかし、天汰くんも不運っすねえ……実際に異世界に転移したなんて聞いたこともねえっす」
「……そういうの、ツバキさんも嗜むの?」
「さん、は付けないでいいっす! ツバキって呼ばれるの好きなんで。ああ、まあそうっす。シュウ……君の姉さんが好きらしくって、そこからツバキもハマっちゃったっす!」
「そう、なんだ」
姉ちゃん、僕が知らない間に新しい趣味作ってたんだなあ。ツバキさん……いや、ツバキは姉ちゃんの話をするときいつもニコニコだ。ゲーム内とはいえ、それが人間じゃなくても友達がいて本当に良かった。
「ふー……涼しいー!」
着替えを済ませ、廊下に出ると心地よい風が吹いた。外は日は落ち、ほとんど夜になっている。そろそろシュウ達も帰ってくるだろう。ツバキと仲良くなれたことを報告しないとだな。
「……天汰くん、幸せそうで、良かったっす」
「?」
いきなりツバキは僕から目を逸らし、初めての表情を見せた。
「正直、羨ましいっす。ツバキ達はクローン、だから……」
「は? それがどうかした?」
「――ツバキはね、分かってんすよ。世間的に、クローンって言われてる奴等は皆奴隷だって」
奴隷。彼から発せられたそんな意外な言葉は、僕の心を刺した気がした。
「……」
僕は何を言うべきか分からず、また黙ってしまった。困ったら黙る癖直さないとだ。
「ツバキくんも私も、奴隷なんかじゃないですよ」
「ゼルちゃ……いや、アレゼルくんか」
声の方へ振り向くと、さっきまでの衣装とは違いこの旅館に合う着物を着け、おっとりとしたゼルちゃんが僕らを見つめてきた。服装どころか彼女自体のトーンも表情もどこか違う。
「あはぁ! あなた達はテュポーンズですよね! たしか私と同じ子がいるって聞いてますよ~ツバキくんとその子が仲良くなれてたら嬉しいなあ~!」
「あ! 君がゼルさんだったのか! そういうことだよね、ツバキ!」
「? 何の話っすか?」
ルースさんが話していたように、彼女も『アレゼル』をモデルに生まれたクローンということか。つまり、彼女はゼルちゃんではなく、アレゼルさんだ!
「ツバキくんは悲観的になっちゃダメですからね。あなたは、強いんですから」
「孤独なだけっす……」
「ツバキ……」
「説明してなかったっすね。ツバキは上位報酬だったんす。ツバキは希少なんっす、へへ」
自虐的な笑みを浮かべるツバキ。君も、僕が一番嫌いな顔をしちゃうんだね。
「だーかーら! ツバキくん、言ってるじゃないですか! 君らしくない! あなたにとって、シュウさん達は家族なんです! あなたにはいっぱい家族がいるでしょう!」
家族。僕と姉ちゃんが家族だというように。ツバキもゼルちゃんもダイアさんも皆家族。
「うん。家族! 家族だ、ツバキ! 家族だったんだよ! ツバキ!」
「え? ちょちょ、え? なんかテンション高くないっすか!?」
「家族だからだよ!」
あっけらかんと僕に見とれるツバキは、アレゼルさんに助け舟を出してもらおうとしているが彼女は黙ってにっこりと微笑んでいた。
「天汰、遅ーい。んえっ? だ、誰!? しかもあんたオシャレな着物まで着ちゃって! いつ買ったの!?」
「へラル、彼女は君が知ってるゼルちゃんじゃないから……あとこっちはツバキ。シュウの仲間の一人でさっき合流した」
「ツバキっす! えーと、あなたは誰っすか? お二人のことあんま分からないんで教えてほしいっす」
「あーと、そうそうこっちはあ――」
〈ストップ!〉
なんか直接脳内に話しかけられてる気がする。
〈悪魔だってデカい方には話してもいいけどエルフには駄目! こいつ誰と組んでるか分からないから適当に誤魔化して!〉
はぁー? 無理難題を唐突に振るなよ!
……1秒で考えろ……即答しなきゃ怪しまれる……えー……と。
「あー……ツレです」
「いや、そのっすね、お二人の関係よりかシュウとその子の関係を――」
「――ツレぇっ!!?」
お。アレゼルさんが食いついた。やっぱり年相応に興味はあるんだろうな。温厚そうな態度からするに、ここでのコミュニケーションはかなり良好、けれど年齢が近そうな友人というのはあまり多くはないだろう。ここはへラルに協力して、友達になってもらおう。
「僕達が知り合ったのは最近なんですけど、へラルが話上手で会話が弾んじゃって。本当に根は凄く優しい子なんですよー」
まだ一度も思ったことはないけどな!
「て、天汰……お前……照れるじゃん」
よしちょろい。悪魔といえどまだ幼稚な所しか見れていない。上手く乗せればいい感じに誤魔化せる!
「キャーッ! もっと、もっと下さいッ!」
「もっ、もっと……!?」
もっとってなんだよ! へラルならまだしもなんでアレゼルさんがそんなこと言うんだ? なんか勘違いされてる? というか、こっちきてからそんなのばっかだな!
「あーへラル距離感がすごく近くて、そう積極的! 気が合うと思うよ! アレゼルさん!」
「アアーッ!! 最高……!」
鼻血を出してほぼ気絶しかけたアレゼルさんを休憩室まで運んだ後、やっぱり勘違いされていたのでその誤解を解き、帰ってこない三人を待つため部屋に帰宅。……ゼルちゃんもあんな風に俗っぽいところあるのかな。
結局、あの三人は帰ってこなかったのでベットに横になっているうちに眠気が襲われそのまま寝てしまった。
「まぁ……そうっすね。今日はレベル上げだから遊んでていいと言われてたけど、まさか君と出会うとは分からんもんすねー。あー、だからか、それで変なパーティー名付けられてたんすねー」
「え、姉ちゃん……いえシュウと会ったんですよね? 何にも聞かなかったんですか?」
「いやまあ、リチア様とシュウが仲良いのはいつもの事だから。あのメンツで居ても何も思わないっす」
「……良かったあ、姉ちゃんに友達がいて……!!」
僕はツバキという男の目も気にせず涙を流した。それだけ、姉に友達がいることがとても嬉しかった。
「……そろそろ出ようかな。天汰くんも良かったら一緒に」
「ああ、そうします」
僕は、浴槽から上がろうとする僕に差し伸べられた手を掴み、一足先へ行くツバキの背中を追った。
「……お、服、綺麗になってるっすね」
「僕のも洗われてるー……すげー」
汗まみれで返り血を浴びた制服は、新品同様の輝きを放ち、しかもまたご丁寧に畳まれ置かれていた。
「しっかし、天汰くんも不運っすねえ……実際に異世界に転移したなんて聞いたこともねえっす」
「……そういうの、ツバキさんも嗜むの?」
「さん、は付けないでいいっす! ツバキって呼ばれるの好きなんで。ああ、まあそうっす。シュウ……君の姉さんが好きらしくって、そこからツバキもハマっちゃったっす!」
「そう、なんだ」
姉ちゃん、僕が知らない間に新しい趣味作ってたんだなあ。ツバキさん……いや、ツバキは姉ちゃんの話をするときいつもニコニコだ。ゲーム内とはいえ、それが人間じゃなくても友達がいて本当に良かった。
「ふー……涼しいー!」
着替えを済ませ、廊下に出ると心地よい風が吹いた。外は日は落ち、ほとんど夜になっている。そろそろシュウ達も帰ってくるだろう。ツバキと仲良くなれたことを報告しないとだな。
「……天汰くん、幸せそうで、良かったっす」
「?」
いきなりツバキは僕から目を逸らし、初めての表情を見せた。
「正直、羨ましいっす。ツバキ達はクローン、だから……」
「は? それがどうかした?」
「――ツバキはね、分かってんすよ。世間的に、クローンって言われてる奴等は皆奴隷だって」
奴隷。彼から発せられたそんな意外な言葉は、僕の心を刺した気がした。
「……」
僕は何を言うべきか分からず、また黙ってしまった。困ったら黙る癖直さないとだ。
「ツバキくんも私も、奴隷なんかじゃないですよ」
「ゼルちゃ……いや、アレゼルくんか」
声の方へ振り向くと、さっきまでの衣装とは違いこの旅館に合う着物を着け、おっとりとしたゼルちゃんが僕らを見つめてきた。服装どころか彼女自体のトーンも表情もどこか違う。
「あはぁ! あなた達はテュポーンズですよね! たしか私と同じ子がいるって聞いてますよ~ツバキくんとその子が仲良くなれてたら嬉しいなあ~!」
「あ! 君がゼルさんだったのか! そういうことだよね、ツバキ!」
「? 何の話っすか?」
ルースさんが話していたように、彼女も『アレゼル』をモデルに生まれたクローンということか。つまり、彼女はゼルちゃんではなく、アレゼルさんだ!
「ツバキくんは悲観的になっちゃダメですからね。あなたは、強いんですから」
「孤独なだけっす……」
「ツバキ……」
「説明してなかったっすね。ツバキは上位報酬だったんす。ツバキは希少なんっす、へへ」
自虐的な笑みを浮かべるツバキ。君も、僕が一番嫌いな顔をしちゃうんだね。
「だーかーら! ツバキくん、言ってるじゃないですか! 君らしくない! あなたにとって、シュウさん達は家族なんです! あなたにはいっぱい家族がいるでしょう!」
家族。僕と姉ちゃんが家族だというように。ツバキもゼルちゃんもダイアさんも皆家族。
「うん。家族! 家族だ、ツバキ! 家族だったんだよ! ツバキ!」
「え? ちょちょ、え? なんかテンション高くないっすか!?」
「家族だからだよ!」
あっけらかんと僕に見とれるツバキは、アレゼルさんに助け舟を出してもらおうとしているが彼女は黙ってにっこりと微笑んでいた。
「天汰、遅ーい。んえっ? だ、誰!? しかもあんたオシャレな着物まで着ちゃって! いつ買ったの!?」
「へラル、彼女は君が知ってるゼルちゃんじゃないから……あとこっちはツバキ。シュウの仲間の一人でさっき合流した」
「ツバキっす! えーと、あなたは誰っすか? お二人のことあんま分からないんで教えてほしいっす」
「あーと、そうそうこっちはあ――」
〈ストップ!〉
なんか直接脳内に話しかけられてる気がする。
〈悪魔だってデカい方には話してもいいけどエルフには駄目! こいつ誰と組んでるか分からないから適当に誤魔化して!〉
はぁー? 無理難題を唐突に振るなよ!
……1秒で考えろ……即答しなきゃ怪しまれる……えー……と。
「あー……ツレです」
「いや、そのっすね、お二人の関係よりかシュウとその子の関係を――」
「――ツレぇっ!!?」
お。アレゼルさんが食いついた。やっぱり年相応に興味はあるんだろうな。温厚そうな態度からするに、ここでのコミュニケーションはかなり良好、けれど年齢が近そうな友人というのはあまり多くはないだろう。ここはへラルに協力して、友達になってもらおう。
「僕達が知り合ったのは最近なんですけど、へラルが話上手で会話が弾んじゃって。本当に根は凄く優しい子なんですよー」
まだ一度も思ったことはないけどな!
「て、天汰……お前……照れるじゃん」
よしちょろい。悪魔といえどまだ幼稚な所しか見れていない。上手く乗せればいい感じに誤魔化せる!
「キャーッ! もっと、もっと下さいッ!」
「もっ、もっと……!?」
もっとってなんだよ! へラルならまだしもなんでアレゼルさんがそんなこと言うんだ? なんか勘違いされてる? というか、こっちきてからそんなのばっかだな!
「あーへラル距離感がすごく近くて、そう積極的! 気が合うと思うよ! アレゼルさん!」
「アアーッ!! 最高……!」
鼻血を出してほぼ気絶しかけたアレゼルさんを休憩室まで運んだ後、やっぱり勘違いされていたのでその誤解を解き、帰ってこない三人を待つため部屋に帰宅。……ゼルちゃんもあんな風に俗っぽいところあるのかな。
結局、あの三人は帰ってこなかったのでベットに横になっているうちに眠気が襲われそのまま寝てしまった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
14
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる