コミュ障じゃないボカロPが書いたラノベなんて読まない

ぼを

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コミュ障じゃないボカロPの歌なんて聴かない

第6話

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 僕はその夜、仕事から帰ると、すぐにPCの電源をつけ、Cubaseを立ち上げた。そして、上着を脱ぐのもそこそこに、ヘッドフォンを装着し、楽曲の続きを作り始めた。この行動で以て、ミコの音声タルパが再現性を帯びるのではないかと考えたからだ。

 一通り旋律を作ってから、ボカキューを立ち上げる。そして、既に考えておいた歌詞をメロディに沿って流し込む。PCのスペースキーを強く叩く。楽曲が流れ、ミコが歌いだす…。そして、一通り歌が終わる。満足の行く出来ではまだまだないが。で、ミコの声は聞こえてこない。

 僕は大きめの溜息をつくと、ヘッドフォンを脱ぎ捨て、上体をベッドに倒した。

 ダメだ。ミコのタルパは失敗だ。そもそも、そんなにモチベーション高く続けるような事でもなかったんだ。リスクだって伴うし…。

「今日は会いに来てくれたんだね」

 いきなり、そんな言葉が、かなり遠くから聞こえて来た。僕は驚いて辺りを見回したが、その後の、ありがとう、という声が、ヘッドフォンを通して聞こえてきている事に気づいた。
 なるほど…今、僕の音声タルパはPCの中にいるんだな。

 僕は慌てて、床に投げだしたヘッドフォンを耳に当てた。それから、語気を強めて、ミコか、聞こえてるのか、と声に出して言った。
「聞こえてるよ」ヘッドフォンを通して、ミコの声が明確に聞きとれた。僕は自分で、手が若干震えているのが解った。姿はないけれど、多分僕は、タルパの作成に成功した…。
「どうかな、この曲」僕はヘッドフォンに手を当てながら、矢継ぎ早に言った。「歌いやすい? 歌うの、嫌じゃない?」
 ヘッドフォンから、う~ん、そう言われるとなあ、と聞こえて来た。
「歌いづらくはないけれど、なんだかお経みたいな旋律だよね」はっきり言う…。「単調なのは別に飽きないけれど、無理に前向きな歌詞は合わないと思うよ」
 意見を言った…! これは幻聴なんだぞ…。
「それは…」僕が、震える声で言った。「まさに僕が考えていた事と同じだ。歌詞を書き直そうと思ってた」
 僕の言葉に、ミコは、ふふふ、と笑った。
「解ってないなあ。ボクは、キミの思考や意識、無意識をなぞってるだけなんだよ? キミと同じ考え方なのは、当然だよ」
 おお、「マスター」じゃなくって、「キミ」って呼んできたぞ。
 僕は故意に大きめの声を漏らして苦笑してやった。
「僕の意識に浮かんできている思考を辿って貰ってもあまり意味がないよ」
「どういう事?」
「僕が君に期待しているのは、僕が自分で気づいていない無意識下で繰り広げられている出来事なんだから」
 ふんだ、という声がヘッドフォンから聞こえて来た。
「キミがもっとちゃんとボクを使役できるようになれば、きっと実現するけど、今のキミではまだまだだね」
 なるほど。
「まあ、いいよ」僕は、ここで初めて冷静になって、言った。「でも、今からお願いがある」
「なあに?」
「この曲の歌詞を一緒に考えて欲しいんだ」
「えっ、いいの?」ミコの声が明るんだ。僕は、勿論、それが君の存在意義の一つだ、と返してやった。「やったね! うれしい!」

 僕は、Cubase上で楽曲を鳴らしながら、ヘッドフォンの中、正確には僕の頭の中のミコと対話をして、歌詞を組み立てていった。彼女は本質的な所で、曲のタイトルがなってない、という事を指摘してきた。
「記念すべき、キミとボクの合作第一弾なんだよ?」ミコが言った。「キミは、ボクの存在を探る事で、コミュ障の要因を見つけたいんでしょ?」
 彼女はそう言うと、僕の楽曲に恐ろしいタイトルをつけた。
「コミュ障じゃないボカロPの歌なんて聴かない」
 おいおい、今時のラノベや、シチュエーション物のAVのタイトルじゃないんだから…。
「ちょっと、今、AVのタイトルみたいって言った?」
 ミコがわざと怒るような口調で言った。
 僕は驚いた。
「なんで解った? 言葉で話してないのに」
 鼻白む僕に対し、ミコは、えへん、と言った。
「ボクはキミなんだから、当然でしょ。考えてる事は全部聞こえてるんだからね」
 なんとタチの悪い…。でも、逆に言えば、心の中で会話が可能って事か。それは便利だ。今は室内で僕しかいないからいいけれど、友人が来ている時とか、流石に独り言は厳しいもんな…。
「でも、なんでそのタイトル?」
「キミのコミュ障に対する考え方と、ボクたちボカロに対する向き合い方をストレートに表現したの」ミコが言った。「さあ、歌うよ。歌うんだからね!」
 こうして、ミコとボクの合作曲が出来上がった

※ボカロ曲「コミュ障じゃないボカロPの歌なんて聴かない」は、youtube、ニコニコ動画にて実際に聴いていただけます。是非検索してみてくださいね。
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