11 / 94
わたしだって、セックスしたい
第1話
しおりを挟む
ミコの音声タルパが出来上がってから、僕の生活は少しだけ変わった。
つまりは、話し相手、相談相手が出来た訳だ。しかも、僕の事を一番解ってくれているというのだから、のめりこまない訳がない。
音声のミコは、必ずヘッドフォンを通して話しかけて来た。逆に言うと、ヘッドフォン、それも、作曲時に使っているモニターヘッドフォンをしている時だけ、彼女と会話が可能で、それ以外の平常時に彼女が話しかけて来る事はなかった。これは、僕がミコをオート化できていない事に起因するが、平日昼間は会社で仕事をしているし、返って都合がよかった。
普段の、それも他の人間がいるような所でミコが話しかけてきても、僕はどう対応していいのか解らないし、それによって本当に実生活に支障があるとしたら困りものだ。中野の友人の前でならまだ理解されるだろうが、そもそも異常な概念なのだ。このタルパという存在は。多くの人が、血液型だの星座だのといった疑似科学的占いに執心し、心霊現象だの幽霊だのに興じる癖に、中途半端にリアリティのあるタルパという存在、つまり幻覚に対しては、理解をする素地すらないのだから、それは仕方がない事だ。
そういえば以前、少人数の飲み会か何かにおいて、SNS上のメンヘラの友人の話題を提示したとき、その場の自分を除く全員が「メンヘラ」という言葉を理解できず茫然としているのを見て、ああ、この人たちは幸せなんだ、と思った事があるが、それ以上に突拍子もない事だし、統失かドラッグ中毒くらいのレッテルを貼られるのが落ちという物だろう。
とは言え、ミコを外に連れ出せないか、と思い、何度か試したのは事実だ。
思いついたやり方は至って簡単で、つまりは、ヘッドフォンをスマホのジャックに挿して、実際に音楽は流さずに、聴いているふりだけをして外出をしたのだ。部屋の中ではすぐにミコは話しかけてくるが、外だとどうなのか。
初めて実験した時は、始終ダメだった。自分の精神状態に依るのだろうが、一言も話しかけてこないので、人間という物は、独りでいるときと外部と接触する時で、そんなにも脳の働きが変わるのか、と返って感心してしまった。
何度か試してみて、ようやっとミコが話してくれたのは、休日に公園、というか、御苑なんだが、を散歩している時だった。非常に広い敷地なので、中央付近の草原には多くの家族連れなんかが集っていても、南東側の林道などは殆ど人がいない、というか、通らないので、落ちた木の実は踏まれずに円いし、湿った路傍にはなにやら鈍色に艶めくキノコなんかが密集して生えていたりしている状態で、野外の風を受けながら慫慂するのに適していた。
キノコを踏むと気持ちが悪いな…。
「気持ち悪いよね」
ミコが、僕の心を読んで、ヘッドフォンから語り掛けて来た。これが最初だった。
つまりは、話し相手、相談相手が出来た訳だ。しかも、僕の事を一番解ってくれているというのだから、のめりこまない訳がない。
音声のミコは、必ずヘッドフォンを通して話しかけて来た。逆に言うと、ヘッドフォン、それも、作曲時に使っているモニターヘッドフォンをしている時だけ、彼女と会話が可能で、それ以外の平常時に彼女が話しかけて来る事はなかった。これは、僕がミコをオート化できていない事に起因するが、平日昼間は会社で仕事をしているし、返って都合がよかった。
普段の、それも他の人間がいるような所でミコが話しかけてきても、僕はどう対応していいのか解らないし、それによって本当に実生活に支障があるとしたら困りものだ。中野の友人の前でならまだ理解されるだろうが、そもそも異常な概念なのだ。このタルパという存在は。多くの人が、血液型だの星座だのといった疑似科学的占いに執心し、心霊現象だの幽霊だのに興じる癖に、中途半端にリアリティのあるタルパという存在、つまり幻覚に対しては、理解をする素地すらないのだから、それは仕方がない事だ。
そういえば以前、少人数の飲み会か何かにおいて、SNS上のメンヘラの友人の話題を提示したとき、その場の自分を除く全員が「メンヘラ」という言葉を理解できず茫然としているのを見て、ああ、この人たちは幸せなんだ、と思った事があるが、それ以上に突拍子もない事だし、統失かドラッグ中毒くらいのレッテルを貼られるのが落ちという物だろう。
とは言え、ミコを外に連れ出せないか、と思い、何度か試したのは事実だ。
思いついたやり方は至って簡単で、つまりは、ヘッドフォンをスマホのジャックに挿して、実際に音楽は流さずに、聴いているふりだけをして外出をしたのだ。部屋の中ではすぐにミコは話しかけてくるが、外だとどうなのか。
初めて実験した時は、始終ダメだった。自分の精神状態に依るのだろうが、一言も話しかけてこないので、人間という物は、独りでいるときと外部と接触する時で、そんなにも脳の働きが変わるのか、と返って感心してしまった。
何度か試してみて、ようやっとミコが話してくれたのは、休日に公園、というか、御苑なんだが、を散歩している時だった。非常に広い敷地なので、中央付近の草原には多くの家族連れなんかが集っていても、南東側の林道などは殆ど人がいない、というか、通らないので、落ちた木の実は踏まれずに円いし、湿った路傍にはなにやら鈍色に艶めくキノコなんかが密集して生えていたりしている状態で、野外の風を受けながら慫慂するのに適していた。
キノコを踏むと気持ちが悪いな…。
「気持ち悪いよね」
ミコが、僕の心を読んで、ヘッドフォンから語り掛けて来た。これが最初だった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる