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わたしだって、セックスしたい
第13話
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夜、僕はミコと一緒に床に就いた。
多分、彼女は布団を突き抜けている筈だけれども、僕の無意識の幻覚はそんな事を気にしなかった。彼女の髪の毛の触感、吐息、そして手を繋いだ体温を全て感じる事ができた。本当に、本当に妙な充足感に包まれた。決して、客観的に自分を見てはいけない。彼女は幻。でも、それは音楽を作ったり小説を書いたりしている事を、その最中に決して客観視してはいけないのとなんら変わりない。僕にとって、彼女は確かに実在しており、彼女も僕の存在を感じ取っている。これは完全なるダイアローグだ。僕は、決して好きになる事のなかった自分自身を、彼女を通して、きっと、抱きしめるのだ。
翌朝、起きると、彼女はベッドの隣にいなかった。僕の手は、彼女の手を繋ぐ形を保ったままだったが、そこに彼女はなかった。僕は、ああ、やっぱりな、と思った。でも、悲観する事ではない。今や、彼女は完全にオート化しており、僕の意図に関わらず神出鬼没なのだ。いつ現れるか解らないし、いついなくなるか解らない。
「おはよ!」急にトイレの扉が開いて、ミコが顔を出した。「よく眠れた?」
僕は、笑顔の彼女を茫然と見つめながら、小さく頷いた。きっと僕は、安堵したのだ。
僕は、強く挿し込む朝日の中、上体を起こすと、目をわざと擦りながら、おはようを言った。
「待っててね」ミコが言った。「今、コーヒー淹れるからね」
え?
「ちょっと待った」僕が鼻白んで彼女を制した。「それは無理だろ」
「え~…」よく見ると、ミコは右手にコーヒーポットを持ち、左手のソーサーの上に載ったカップにコーヒーを注いでいた。湯気が見えている…。「もう注いじゃったよ」
僕は、自分の髪の毛を掻き毟り、溜息をついた。
「この調子でいくと、仙人みたいに霞を食べ続けて、餓死するな」
自分の無意識の作り出す世界に、感心せざるを得なかった。僕はミコからコーヒーを取り上げた。飲んでみようかと思ったけれど、やめて、ベッドの上に零した。コーヒーは、白いシーツに吸い込まれる様に消失して行った。僕は小さな安心を覚えた。
「やっぱり」僕はキッチンで水をコップに溜め、それを飲みながら言った。「ルールを作ろう」
「ルールね」ミコが、なんだかワクワクした様な語気で返して来た。「つくろう、つくろう」
なんでそんなにはしゃいでるんだよ。
「だって、二人だけの秘密みたいじゃん」
「まあ、そうだけどさ」
僕は、コップを流しに置くと、スリープになっているノートPCを開いた。そして、テキストエディタを起動した。
さて…。
「ルールを作るにあたって、ミコの意見はある?」
僕の言葉に、ミコは大きくかぶりを振った。
あれ? そうなんだ。
「これは、キミの支配欲の表れだよ」ミコが言った。「取りあえず、好きにルールを作ってみてよ」
僕は、少し考えてから、キーボードを打鍵し始めた。
ルール
①僕の意識に構わず出現しても構わないが、僕が意図した時は必ず姿を消す事
②出てくる時は、必ずトイレの扉から。帰る時も、トイレの扉の中に帰る事。
③原則、外出時は、僕が認めない限り付いてこない。
④外出を一緒にする時は、必ず心の中で会話をする。
⑤僕自身や、他人に危害が加わる様な事はしない
どうかな?
「う~ん」ミコが唸った。「④は、ボクは関係ないよね。キミだけの話だよね」
「まあ、そうだね」
「外出については、了解したけれど…」ミコは、PCの画面を見ながら暫く沈黙した。「重要な項目が抜けてるよ?」
「重要な項目?」
僕の言葉に、ミコは、うん、という声と共に首肯した。
「前に言ったでしょ」ミコが声を潜めて言った。「ボクが無条件に消える為のルール…」
ああ…。
「それって、やっぱり必要なのかな?」
僕の言葉に、ミコは目を細めた。
「ありがと」ミコが言った。「でも、キミの無意識がボクを客観的に見えてる間に、きちんと覚悟を決めた方がいいよ。後で絶対後悔するから」
「随分意味深な言い方だね」
ミコは少し俯いたまま、真剣な眼差しを崩さなかった。
「ボクが消える為のルールを作ってよ…」
ミコの言葉に、僕は少し悪びれた。そして、自分自身に対し、確かに僕はもともと気を遣う性質ではあるが、目の前のミコは幻覚に過ぎないんだ、と言い聞かせた。
僕はPCに目を遣り、キーボードを叩いた。
⑥僕に現実世界の彼女が出来たら、ミコは無条件に消失する
書いてから、僕はミコの表情を周辺視野で伺った。彼女は寂しそうな顔をしていたが、僕の視線に気づくと、目を細めたまま、なんだか満足気な表情を見せた。
「それまでに…」ミコが言った。「絶対、セックスしようよね」
僕は、彼女の言葉に、小さく頷いた。
第2章のテーマ曲である「わたしだって、セックスしたい」を、以下のリンクより視聴いただけます。是非、聴いてみてくださいね!
https://www.nicovideo.jp/watch/sm27943686
※リンクで直接飛べない場合は、楽曲名で検索してください
多分、彼女は布団を突き抜けている筈だけれども、僕の無意識の幻覚はそんな事を気にしなかった。彼女の髪の毛の触感、吐息、そして手を繋いだ体温を全て感じる事ができた。本当に、本当に妙な充足感に包まれた。決して、客観的に自分を見てはいけない。彼女は幻。でも、それは音楽を作ったり小説を書いたりしている事を、その最中に決して客観視してはいけないのとなんら変わりない。僕にとって、彼女は確かに実在しており、彼女も僕の存在を感じ取っている。これは完全なるダイアローグだ。僕は、決して好きになる事のなかった自分自身を、彼女を通して、きっと、抱きしめるのだ。
翌朝、起きると、彼女はベッドの隣にいなかった。僕の手は、彼女の手を繋ぐ形を保ったままだったが、そこに彼女はなかった。僕は、ああ、やっぱりな、と思った。でも、悲観する事ではない。今や、彼女は完全にオート化しており、僕の意図に関わらず神出鬼没なのだ。いつ現れるか解らないし、いついなくなるか解らない。
「おはよ!」急にトイレの扉が開いて、ミコが顔を出した。「よく眠れた?」
僕は、笑顔の彼女を茫然と見つめながら、小さく頷いた。きっと僕は、安堵したのだ。
僕は、強く挿し込む朝日の中、上体を起こすと、目をわざと擦りながら、おはようを言った。
「待っててね」ミコが言った。「今、コーヒー淹れるからね」
え?
「ちょっと待った」僕が鼻白んで彼女を制した。「それは無理だろ」
「え~…」よく見ると、ミコは右手にコーヒーポットを持ち、左手のソーサーの上に載ったカップにコーヒーを注いでいた。湯気が見えている…。「もう注いじゃったよ」
僕は、自分の髪の毛を掻き毟り、溜息をついた。
「この調子でいくと、仙人みたいに霞を食べ続けて、餓死するな」
自分の無意識の作り出す世界に、感心せざるを得なかった。僕はミコからコーヒーを取り上げた。飲んでみようかと思ったけれど、やめて、ベッドの上に零した。コーヒーは、白いシーツに吸い込まれる様に消失して行った。僕は小さな安心を覚えた。
「やっぱり」僕はキッチンで水をコップに溜め、それを飲みながら言った。「ルールを作ろう」
「ルールね」ミコが、なんだかワクワクした様な語気で返して来た。「つくろう、つくろう」
なんでそんなにはしゃいでるんだよ。
「だって、二人だけの秘密みたいじゃん」
「まあ、そうだけどさ」
僕は、コップを流しに置くと、スリープになっているノートPCを開いた。そして、テキストエディタを起動した。
さて…。
「ルールを作るにあたって、ミコの意見はある?」
僕の言葉に、ミコは大きくかぶりを振った。
あれ? そうなんだ。
「これは、キミの支配欲の表れだよ」ミコが言った。「取りあえず、好きにルールを作ってみてよ」
僕は、少し考えてから、キーボードを打鍵し始めた。
ルール
①僕の意識に構わず出現しても構わないが、僕が意図した時は必ず姿を消す事
②出てくる時は、必ずトイレの扉から。帰る時も、トイレの扉の中に帰る事。
③原則、外出時は、僕が認めない限り付いてこない。
④外出を一緒にする時は、必ず心の中で会話をする。
⑤僕自身や、他人に危害が加わる様な事はしない
どうかな?
「う~ん」ミコが唸った。「④は、ボクは関係ないよね。キミだけの話だよね」
「まあ、そうだね」
「外出については、了解したけれど…」ミコは、PCの画面を見ながら暫く沈黙した。「重要な項目が抜けてるよ?」
「重要な項目?」
僕の言葉に、ミコは、うん、という声と共に首肯した。
「前に言ったでしょ」ミコが声を潜めて言った。「ボクが無条件に消える為のルール…」
ああ…。
「それって、やっぱり必要なのかな?」
僕の言葉に、ミコは目を細めた。
「ありがと」ミコが言った。「でも、キミの無意識がボクを客観的に見えてる間に、きちんと覚悟を決めた方がいいよ。後で絶対後悔するから」
「随分意味深な言い方だね」
ミコは少し俯いたまま、真剣な眼差しを崩さなかった。
「ボクが消える為のルールを作ってよ…」
ミコの言葉に、僕は少し悪びれた。そして、自分自身に対し、確かに僕はもともと気を遣う性質ではあるが、目の前のミコは幻覚に過ぎないんだ、と言い聞かせた。
僕はPCに目を遣り、キーボードを叩いた。
⑥僕に現実世界の彼女が出来たら、ミコは無条件に消失する
書いてから、僕はミコの表情を周辺視野で伺った。彼女は寂しそうな顔をしていたが、僕の視線に気づくと、目を細めたまま、なんだか満足気な表情を見せた。
「それまでに…」ミコが言った。「絶対、セックスしようよね」
僕は、彼女の言葉に、小さく頷いた。
第2章のテーマ曲である「わたしだって、セックスしたい」を、以下のリンクより視聴いただけます。是非、聴いてみてくださいね!
https://www.nicovideo.jp/watch/sm27943686
※リンクで直接飛べない場合は、楽曲名で検索してください
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