コミュ障じゃないボカロPが書いたラノベなんて読まない

ぼを

文字の大きさ
24 / 94
どう考えても、そのおっぱいの大きさは間違っている。

第1話

しおりを挟む
 M3の当選通知を受け取ったのは、8月の頭だった。自室マンションの向かいは大きな公園で、そこから発生するセミの喧騒が喧しくもありながら、心地よいと感じる時期だった。

 僕はPCに向かいながら、ベッドに腰かけるミコに向かって、M3の参加抽選に当選したよ、と伝えた。途端、ミコは顔を明るませた。

「よかったね!」ミコは僕の肩に手を置いた。「という事は、益々ボクの出番って事だね」
 まあ、そうだね。
「今回は、今までのCDに加えて、新譜CDがあるから、全部で4種類だね」
「随分沢山あるね」ミコが、腰を小さく振りながら言った。「何枚作るの?」
 全部で200枚くらいかな…。
「え?」ミコが驚いた様に言った。「そんなに売れるの? 作っちゃって大丈夫?」
「冬コミにも応募してるから、その分も入れてるんだよ」

 とは言え、そこまでの枚数を売る自信がある訳ではない。通常、M3のミニスペース、これは長机の半分なのだが、で開催時間一杯の約4時間を全て販売に使ったとして、僕の様な底辺の名前も知られていないボカロPでは、20枚も売れたら上出来の部類だ。さらに、コミケは参加した事がないから、実際何枚作っておけばいいかなんて見当がつかない。だけれど、少なくともM3に関しては、僕は100枚程度は売る自信があった。というか、前回は実際に100枚以上を売った。これは完全にマーケティングの勝利なのだ。

 まず、僕の楽曲は、全てが変拍子だ。これは一曲残らず、該当する。この段階で、ターゲットが絞れる。変拍子が理解できる層と、出来ない層だ。そもそも、余程興味がない限り、自分が普段聴いている楽曲が何拍子かなんて気にする事はないだろう。何故なら、気にするまでもなく、世の中の殆ど全ての音楽が4拍子で作られているし、学校の音楽のテストで出るような拍子記号は、4分の4拍子か、3拍子くらいしかないのだから。つまり、今聴いている曲が、1小節にいくつの拍が入っているかなんて、気にしたって仕方がないのだ。全部同じなんだから。

 ところが、僕は違う。全ての曲が、5、7、11、13、17、23拍子で出来ている。分母は4か8だ。この素数で構成された拍子の楽曲を、一般的に変拍子と呼んでいる。通常、この手の変拍子の曲は違和感がある。なんか聴きづらい。ライブでやられた日には、手拍子がどうも狂う。しかし、僕の曲はここも違う。23拍子なんて超絶変拍子は、ともすればギネス記録物だが、気にせずに聴く分には変拍子とは思えない程自然に聴こえる楽曲を目指している。

 変拍子とは、僕にとって、大いなる強みであり、差別化ポイントだ。

 そもそも、何度も言う様に、ボカロ業界はコンテンツが飽和しきってしまっているのだ。だから、僕の様な、音楽の素養がなく楽器も弾けない後発組が少しでも曲を聴いてもらう為には、徹底した、圧倒的差別化ポイントが必要になってくる。何故なら、消費する側からしてみれば、M3の様な1,000サークル以上がひしめき合う中において、目を瞑って手探りで探し当てるCDの楽曲は、どれも同じだからだ。楽曲の作成水準が等しければ、それ以外は全て、今まで聴いた事のない新しい曲、でしかなく、どれを選んでも結局は同じ。だから、消費者に対し、解りやすい選択肢を用意する事が重要になってくる。

 で、僕の場合は、その変拍子をCD単位で使い分けている。つまり、7拍子ばかりが収録されたCD、13拍子ばかりが収録されたCD、23拍子ばかりが収録されたCD、といった具合に。こうすると、同じテーブルの上に置かれた3枚のCDでさえ、差別化が成される。つまり、この3枚においてさえ、どれを買っても一緒、ではない為、全てを一度に買い上げる、という選択肢が出てくるのだ。

 あとは、この解りやすいメッセージを、会場の通路を揺蕩う人々に対し端的に発信すればよい。リアルの世界は、これでなんとかなる。

 だけれど、そう容易くないのが、一番肝心なネットの世界だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...