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Zayin(ザイン)
第2話
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先輩に残りのブーズ作りを手伝ってもらい、開場になった。いつもは僕独りだけでブースに立つのだが、今回は2人だからちょっと雰囲気が違う。
「違うよ」ミコが突っ込んで来た。「3人でしょ」
はいはい、そうでした。
変拍子を際立たせたブースはそこそこ目立つのだが、大抵の来場者は始めに目当てのサークルのブースへ足を運ぶので、いつもなら開場後30分程度は客がつかない。けれども、今回は違った。単純に先輩が目立つので、足を止めてくれる人が多かった。で、先輩が絶妙なタイミングで足を止めた客に声を掛ける。そこにすかさず僕が視聴用のヘッドフォンを渡す、という算段。これはなかなか上手くいった。変拍子曲というのは、聴かれた後、理解されて驚かれ、そのままCDを買ってもらえるか、そもそも理解されずに無言で立ち去られるかのどちらかだ。前者に対して、僕はできるだけ早口を抑えながら、それぞれのCDの特徴、つまり、7拍子、13拍子、17拍子、23拍子で作られた楽曲群の良さについて説明をし、可能な限りまとめ買いをして貰えるように接客する。4枚まとめて買ってくれる人は稀だが、それでも複数枚買いは珍しくない。長テーブルに積まれたCDは、先輩の多大なる協力で以て、過去に比類ないスピードで無くなっていった。気づくと試聴待ちの人集りができており、若干騒然となった。ミコは、何か手伝おうにも何もできず、オタオタしていた。こればかりはどうしようもない。
昼頃になり、少し会場が落ちついた。昼食を食べる場所は少ないし、イベント時間自体長くないので、僕は毎回食事をとらないのだが、先輩に断食を強要する訳にはいかないので、休憩を促す事にした。先輩は承諾すると、ブースから抜けて、会場を出て行った。あ、コスプレのままでよかったかな。
先輩のいた場所に、ミコがはにかみながら立った。ここに本物のミコがいるのに、来場客に見えないなんて勿体ない。VRとかなら共有することもできるんだろうにな。
「沢山売れてよかったね」
ミコが言った。僕は首肯した。
「異性の売り子でミコのコスプレ、ってのは良かったね。抜群の集客効果だよ」
僕の言葉に、ミコは薄く笑みを漏らした。
「存在しない物を具現化している、という意味では、ボクと同じなのにね」ミコが言った。「ミコという共通概念の偶像を、先輩という媒体を経由して現実に表出させた、というだけだもんね」
僕は、急な彼女の言葉に少し鼻白んで、俯き気味の彼女の横顔を覗き込んだ。
「嫉妬してるの?」
僕が訊いた。すると、ミコは驚いた様な顔を見せ、それから表情を崩すと、照れながら、えへへ、と笑った。
「ほら、お客さんだよ」
ミコに言われて、僕は正面に向き直った。
中年の男性が、試聴を所望してきた。僕は、ヘッドフォンを差し出した。男性はそれを受け取ると、かなり真剣な表情で楽曲を聴いた。この瞬間はいつも手持無沙汰だ。声をかける訳にはいかないし、妙に畏まると試聴の邪魔になりそうだし。
何曲か試聴の後、男性はヘッドフォンを取ると、訊いてきた。
「違うよ」ミコが突っ込んで来た。「3人でしょ」
はいはい、そうでした。
変拍子を際立たせたブースはそこそこ目立つのだが、大抵の来場者は始めに目当てのサークルのブースへ足を運ぶので、いつもなら開場後30分程度は客がつかない。けれども、今回は違った。単純に先輩が目立つので、足を止めてくれる人が多かった。で、先輩が絶妙なタイミングで足を止めた客に声を掛ける。そこにすかさず僕が視聴用のヘッドフォンを渡す、という算段。これはなかなか上手くいった。変拍子曲というのは、聴かれた後、理解されて驚かれ、そのままCDを買ってもらえるか、そもそも理解されずに無言で立ち去られるかのどちらかだ。前者に対して、僕はできるだけ早口を抑えながら、それぞれのCDの特徴、つまり、7拍子、13拍子、17拍子、23拍子で作られた楽曲群の良さについて説明をし、可能な限りまとめ買いをして貰えるように接客する。4枚まとめて買ってくれる人は稀だが、それでも複数枚買いは珍しくない。長テーブルに積まれたCDは、先輩の多大なる協力で以て、過去に比類ないスピードで無くなっていった。気づくと試聴待ちの人集りができており、若干騒然となった。ミコは、何か手伝おうにも何もできず、オタオタしていた。こればかりはどうしようもない。
昼頃になり、少し会場が落ちついた。昼食を食べる場所は少ないし、イベント時間自体長くないので、僕は毎回食事をとらないのだが、先輩に断食を強要する訳にはいかないので、休憩を促す事にした。先輩は承諾すると、ブースから抜けて、会場を出て行った。あ、コスプレのままでよかったかな。
先輩のいた場所に、ミコがはにかみながら立った。ここに本物のミコがいるのに、来場客に見えないなんて勿体ない。VRとかなら共有することもできるんだろうにな。
「沢山売れてよかったね」
ミコが言った。僕は首肯した。
「異性の売り子でミコのコスプレ、ってのは良かったね。抜群の集客効果だよ」
僕の言葉に、ミコは薄く笑みを漏らした。
「存在しない物を具現化している、という意味では、ボクと同じなのにね」ミコが言った。「ミコという共通概念の偶像を、先輩という媒体を経由して現実に表出させた、というだけだもんね」
僕は、急な彼女の言葉に少し鼻白んで、俯き気味の彼女の横顔を覗き込んだ。
「嫉妬してるの?」
僕が訊いた。すると、ミコは驚いた様な顔を見せ、それから表情を崩すと、照れながら、えへへ、と笑った。
「ほら、お客さんだよ」
ミコに言われて、僕は正面に向き直った。
中年の男性が、試聴を所望してきた。僕は、ヘッドフォンを差し出した。男性はそれを受け取ると、かなり真剣な表情で楽曲を聴いた。この瞬間はいつも手持無沙汰だ。声をかける訳にはいかないし、妙に畏まると試聴の邪魔になりそうだし。
何曲か試聴の後、男性はヘッドフォンを取ると、訊いてきた。
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