コミュ障じゃないボカロPが書いたラノベなんて読まない

ぼを

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カエルの歌が聴こえない

第8話

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「カエルの合唱、って言ってもなあ」友人と別れてからの帰路、歩きながら、僕はミコに言った。「ドレミファミレド、って作ればいいのかな」

 そういえば、どこかのアーティストが、ドレミファソラシドって順番に弾いていくどんな曲が出来るかと思って、作ってみた、という曲があったな。言われるまで、ただドレミファソラシドをやってるだけとは気づかなかったから、プロというのはそういう物なのかな。

「とりあえず、作ってみなよ」ミコが言った。「ちゃんとボクが歌ってあげるからさ」
 うん。そりゃあ、歌って貰うんだけれど。ドレミファミレドじゃあ、歌詞が思いつかないな。

「そうだ」僕が言った。「合作、って手もあるよな」
 ミコが、きょとんとした表情を僕に向けた。
「合作って?」ミコが言った。「ボクが歌って、キミが作るみたいな事?」
 僕はかぶりを振った。
「そうじゃなくってさ、歌詞をアウトソーシングするんだよ」
 それで、ミコは察したらしく、
「あ~。あの有香って女の人に頼むつもりでしょ」
 と言った。その通りです。
「過去に、僕の曲に歌をつけたい、って言ってくれた人は何人かいたんだけど、ついぞ誰もつけられなかったんだよね」
 ミコが小さく笑った。
「そんなものだよね。歌詞を作るなんて、ある程度慣れてないとできないだろうし、キミの曲は変拍子だしね」

 そう。確かに、17拍子とか23拍子の曲に歌詞をつけた事のある者なんて、世の中にそう沢山は居ないだろうな。でも、実際は変拍子じゃなかったとしても、きっと約束は守られなかったんだと思う。こういう距離感って、僕は凄く解るから、彼らに、別に本当に歌詞を持ってくる事を期待していないって伝えたいし、彼らもそのくらいのつもりで構えてて欲しいと思ったりする。

「有香が、変拍子の曲に歌詞をつけた経験があるのは良かったね」僕が言った。「頼みやすいから」
「でもさ」ミコが言った。「スランプって言ってるんだから、無理してカエルの歌を変拍子にする必要はないんじゃないの?」
 その通りなんだけれど、変拍子である事は、僕の楽曲のアイデンティティでも在り得るので、それを止めるのは、無線の発信周波数を変えて一から通信を始めるのと同義だ。
 僕の心を読んだのか、ミコは少し穏やかな笑顔を見せると、何度か頷いて見せた。
「もし、有香が合作に同意してくれたら」僕が言った。「ミコも一緒に、制作に参加してくれる?」
「それって」ミコが言った。「3人で一緒に作る、って事?」僕は首肯した。ミコは、少しだけ表情を強張らせ、考えるような素振りを見せた。それから、ふっ、と笑顔を作った。「いいよ。でも、ボク、でしゃばらないからね」
 僕には、ミコの反応がいまいち解らなかった。嫉妬をしている、という風でもない。なのに、何かを警戒しているようにも見える。

 兎に角、僕は有香に連絡を取り、合作の約束をとりつけた。彼女は、とても喜んだ。
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