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― 第五話:やっぱり、君は未来の僕の奥さんだ ―
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風間くんが、転校することになった。
突然のことだった。
理由は聞かなかったし、彼も詳しく話さなかった。
ただ、私の心にぽっかりと穴が空いた。
彼がいなくなることが、
思っていたよりずっと、怖かった。
「……未来が変わったんでしょ」
そう言う私に、風間くんは少しだけ笑って、言った。
「うん。でもね、それでも会いに来てよかったよ。
君のこと、ちゃんと好きになれたから」
見送りの日。
校門の前、誰もいない午後の時間。
私は、風間くんに最後の質問をした。
「ねえ……未来で私と結婚するって、本当に誰かから聞いたの?」
彼は少し黙って、
夕日に照らされた髪を揺らしながら、静かに言った。
「ううん。聞いてないよ」
──えっ。
「最初から、そんなこと言われてない。
でも、未来で君と一緒にいる記憶が、
……夢の中にだけ、あったんだ。
それが本当かどうかなんて、わからない。
でも、その夢の中の君が、すごく楽しそうで──
だから、信じてみたかったんだ。あの未来を」
私は、何も言えなかった。
胸の奥が、なぜか痛くて。
「未来が変わっても、また出会えたらいいなって。
そう思って、今日まで君のそばにいた。
だから──未来のどこかで、また会おうね」
手を振る彼の笑顔が、夕日の中に滲んでいく。
私は泣かなかった。泣けなかった。
でも、心のなかで何度も、言葉にならない声を叫んでいた。
──さよなら、なんて、言いたくなかった。
* * *
それから数年後。
成人式。
私は、思い出の校舎近くの神社で、小さなため息をついていた。
未来って、思っていたよりあっけなくて、
それでいて、ちょっとだけ愛おしい。
「……望月さん?」
聞き覚えのある声に、振り返る。
そこにいたのは──風間 蓮くんだった。
大人びたスーツに、見慣れた笑顔。
変わらない口調で、彼は言った。
「久しぶり。……また会えたね」
私は、少しだけ照れて、笑いながら答える。
「やっぱり“未来の旦那様”だったの?」
彼は、にこりと笑って、言った。
「うん。やっぱり、君は未来の僕の奥さんだ」
“自称”じゃなくて、“本物”かもしれないなんて。
そう思ってしまうくらい、
あの日見た夢が、今ここにあった。
──おわり。
突然のことだった。
理由は聞かなかったし、彼も詳しく話さなかった。
ただ、私の心にぽっかりと穴が空いた。
彼がいなくなることが、
思っていたよりずっと、怖かった。
「……未来が変わったんでしょ」
そう言う私に、風間くんは少しだけ笑って、言った。
「うん。でもね、それでも会いに来てよかったよ。
君のこと、ちゃんと好きになれたから」
見送りの日。
校門の前、誰もいない午後の時間。
私は、風間くんに最後の質問をした。
「ねえ……未来で私と結婚するって、本当に誰かから聞いたの?」
彼は少し黙って、
夕日に照らされた髪を揺らしながら、静かに言った。
「ううん。聞いてないよ」
──えっ。
「最初から、そんなこと言われてない。
でも、未来で君と一緒にいる記憶が、
……夢の中にだけ、あったんだ。
それが本当かどうかなんて、わからない。
でも、その夢の中の君が、すごく楽しそうで──
だから、信じてみたかったんだ。あの未来を」
私は、何も言えなかった。
胸の奥が、なぜか痛くて。
「未来が変わっても、また出会えたらいいなって。
そう思って、今日まで君のそばにいた。
だから──未来のどこかで、また会おうね」
手を振る彼の笑顔が、夕日の中に滲んでいく。
私は泣かなかった。泣けなかった。
でも、心のなかで何度も、言葉にならない声を叫んでいた。
──さよなら、なんて、言いたくなかった。
* * *
それから数年後。
成人式。
私は、思い出の校舎近くの神社で、小さなため息をついていた。
未来って、思っていたよりあっけなくて、
それでいて、ちょっとだけ愛おしい。
「……望月さん?」
聞き覚えのある声に、振り返る。
そこにいたのは──風間 蓮くんだった。
大人びたスーツに、見慣れた笑顔。
変わらない口調で、彼は言った。
「久しぶり。……また会えたね」
私は、少しだけ照れて、笑いながら答える。
「やっぱり“未来の旦那様”だったの?」
彼は、にこりと笑って、言った。
「うん。やっぱり、君は未来の僕の奥さんだ」
“自称”じゃなくて、“本物”かもしれないなんて。
そう思ってしまうくらい、
あの日見た夢が、今ここにあった。
──おわり。
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