『自称・未来の旦那様』― 運命より、いまを信じたかった ―

だって、これも愛なの。

文字の大きさ
7 / 10

大学生編:未来の君と、過去の僕 ― 知らないことばかりの今を、君と選んでいく ―  

しおりを挟む
大学のキャンパス。
風間蓮と再会してから、もうすぐ1年が経とうとしていた。

あの成人式の日から、自然に連絡をとるようになって。
何度か会って、何度か笑って、
ふたりはいつのまにか、“また始まっていた”。

「ねえ、未来の旦那様は、予知夢とか見てないの?」

カフェの窓際で、冗談まじりに尋ねると、
蓮は苦笑して首をふった。

「ううん。もう、夢は見てない。全然」

 

──そう、あの頃の“魔法”は、もう使えない。

でも、それが寂しいとは思わなかった。
むしろ、今は自分で選んで、ふたりで歩いている気がする。

 

* * * 

 

ある日、蓮が言った。

「……実は、前の大学、やめたんだ」

「えっ……」

「本当は別の進路に進むはずだった。でも、夢を見なくなってから、自分が何をしたいのか、ちゃんと考えてみたくなって。
……そしたら、君と同じ大学を受けてた」

 

その言葉に、胸がぎゅっとなる。

「じゃあ、私のために?」

「ちがうよ。……君のそばにいたかっただけ」

「……それを“私のため”って言うんじゃない?」

笑いながら、少し泣きたくなった。

 

君が未来を“知っていたから”じゃなくて、
“知らなくても、そばにいたい”と思ったから──

その選択が、あの頃よりもずっと、尊く感じた。

 

* * * 

 

ふたりで図書館のテラスに出た帰り道、
夕陽のなかで、蓮がぽつりとつぶやいた。

「……最初に夢で見た君はね、
“たとえ未来が変わっても、あなたの言葉が私を変えた”って言ってたんだ」

「……そんなこと、言ってたの?」

「うん。たぶん、あれは未来の君じゃなくて、君の“願い”だったんだと思う」

 

私は、少し黙って、それから返した。

「……じゃあ、いまの私は、
“あなたと一緒にいるって、自分で決めた”って言えるようになりたいな」

蓮は静かに目を細めて、
「うん」とひとことだけ、答えた。

 

過去の夢が連れてきたのは、未来じゃなくて、
「この瞬間を選ぶ強さ」だったのかもしれない。

夢を見なくなったふたりは、
今日も“知らない未来”を、いっしょに選んで歩いていく。

 

──つづく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

18年愛

俊凛美流人《とし・りびると》
恋愛
声を失った青年と、かつてその声に恋をしたはずなのに、心をなくしてしまった女性。 18年前、東京駅で出会ったふたりは、いつしかすれ違い、それぞれ別の道を選んだ。 そして時を経て再び交わるその瞬間、止まっていた運命が静かに動き出す。 失われた言葉。思い出せない記憶。 それでも、胸の奥ではずっと──あの声を待ち続けていた。 音楽、記憶、そして“声”をめぐる物語が始まる。 ここに、記憶に埋もれた愛が、もう一度“声”としてよみがえる。 54話で完結しました!

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

その出会い、運命につき。

あさの紅茶
恋愛
背が高いことがコンプレックスの平野つばさが働く薬局に、つばさよりも背の高い胡桃洋平がやってきた。かっこよかったなと思っていたところ、雨の日にまさかの再会。そしてご飯を食べに行くことに。知れば知るほど彼を好きになってしまうつばさ。そんなある日、洋平と背の低い可愛らしい女性が歩いているところを偶然目撃。しかもその女性の名字も“胡桃”だった。つばさの恋はまさか不倫?!悩むつばさに洋平から次のお誘いが……。

Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。 本宮 のい。新社会人1年目。 永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。 なんだけど。 青井 奏。 高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、 和泉 碧。 初恋の相手らしき人も現れた。 幸せの青い鳥は一体どこに。 【完結】 ありがとうございました‼︎

【短編】ちゃんと好きになる前に、終わっただけ

月下花音
恋愛
曖昧な関係を続けていた男女の恋の物語。 (謝罪)以前のあらすじは初稿のでした。申し訳ございませんでした。

憧れの彼は一途で優しくて時々イジワル

RIKA
恋愛
営業課長・永瀬綋司は、その容姿や優秀ぶりから多くの女性社員にとって憧れの的。 久遠香澄もその一人だが、過去の恋愛で負ったトラウマから自分に自信がもてず恋愛を封印して過ごしていた。 ある日、香澄は会社帰りに偶然永瀬と駅で遭遇する。 永瀬に誘われて二人で食事に行くことになり緊張する香澄だが、話しているうちに少しずつ緊張もほぐれてゆく。 話題が恋愛の話になったとき、彼は香澄に向かって突然驚くべき言葉を口にした。 「好き。――俺の彼女になってくれない?」

処理中です...