『〇〇夜に読む、お伽話の癒し帳』 ― どんな夜も、あなたの心に寄り添う小さな物語 ―

だって、これも愛なの。

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『月明かりに咲く、小さな恋のお伽話』― 優しさに包まれる、可憐な恋の短編集 ―

第三話 月明かりの温室

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 眠れない夜、令嬢ミラは屋敷の裏庭を歩いていた。
 月明かりに照らされた小道を進むと、いつの間にか見知らぬ扉が現れる。
 扉の向こうは、透明なガラスで囲まれた温室だった。

 中に一歩踏み入れると、草花が甘やかに香り、静かな虫の声が響く。
 色とりどりの花弁が夜露をまとい、月光を受けて宝石のように輝いていた。

「……おや。お客さまですか」

 声に振り向けば、そこには学者風の青年がいた。
 白衣の裾を少し土で汚しながらも、瞳は花々と同じくやわらかく光を帯びている。

「すみません、迷い込んでしまって……」
「迷い込む人しか、ここには来られませんよ」

 彼は笑い、そっと一輪の花を摘んで差し出した。
 淡い紫の花が、月光を受けてほのかに光る。

「この花の意味は『やすらぎ』です。どうぞ、今夜はそれをお守りに」
「……ありがとう」

 ミラは胸の奥が温かくなるのを感じた。
 優しい花の香りとともに、知らず肩にまとっていた緊張がほどけていく。

 彼と並んで温室の花々を眺める時間は、言葉少なでも心地よかった。
 まるで月明かりに守られているような、不思議な安らぎ。

 帰り際、扉をくぐる前に振り返ると、青年はまだ温室の奥に立っていた。
 花々に囲まれたその姿は、まるで月が人の形をとったようだった。

「また迷い込んでください。きっと……必要な夜に」

 その言葉は、ミラの胸にそっと灯る小さな魔法となった。
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