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華麗な断罪回避のはずだったー?
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王宮の式典の間は、朝から眩しいほどの陽光に照らされていた。
今日この場で何が起こるのか、予想もせぬ笑顔が貴族たちの間に咲いている。
スカーレットは、その中心に立っていた。
深紅の薔薇を散らした黒のドレスは、絢爛さの中に毅然とした気品を漂わせている。
装飾は控えめながら、細部まで仕立てに妥協はない。まさに今日の“舞台”にふさわしい装い。
(さあ――来なさい、“婚約破棄”)
そう心で呟いたその瞬間だった。
「オルビア・アリア・スカーレット!」
セシル王子の声が、会場に響いた。
「君には愛想が尽きた。マリアへの度重なる嫌がらせ……そんな女は信用ならぬ。婚約を破棄させてもらう」
その言葉に、会場がざわつき始める。
「きゃ……!」
「まさか、本当に婚約破棄……?」
「スカーレット様が、第一皇子殿下から――」
「まぁ、仕方ありませんわ。あの方は、貴族でありながら天使様からの加護を持たない唯一の令嬢ですもの」
「しかも聖女様にあんな仕打ちをしただなんて……」
スカーレットは、そんなざわめきにも微動だにしない。
ただ、冷静にセシルを見据え、にっこりと微笑んだ。
(ふふふ……来たわね。筋書き通り)
(なぁにが“嫌がらせ”よ。この一ヶ月、マリアに近づかないよう全力で逃げ回ってたのに。
嫌がらせする暇なんてあるわけないじゃない)
「承知いたしました、殿下」
その声は、まるで祝福でもするかのように明るかった。
「……っ!」
思わず言葉を詰まらせたのは、セシルだった。
(なんだ……なぜ、笑っている?)
スカーレットは優雅に会釈すると、セシルを見上げた。
「いえ、何もありませんわ、殿下。ですが――一つ、お願いがございますの」
「……な、なんだ」
「私に婚約破棄を命じるということは、当然、“離縁状”をご用意されているのでしょう?」
セシルは、明らかに動揺した。
「そ、それは……」
スカーレットはにっこりと微笑みながら、声のトーンを少しだけ低くする。
「……嫌ですわ、殿下。私の性格をよくご存知でしょう?」
「今はこうして婚約破棄を受け入れていても……明日には“やっぱり認めませんわ”なんて言い出すかもしれませんもの」
そう言いながら、セシルの隣に立つ聖女マリアへとちらりと視線を移す。
「せっかく……愛するお方と、巡り会えたというのに――」
「その方と添い遂げられないなんて、あまりにも残酷でしょう?」
「だからこそ、今、きちんと“終わらせる”べきですわ。私と、貴方の縁を」
スカーレットの強く美しい説得に、セシルは言葉を失う。
そしてついに――しぶしぶと懐から一通の封筒を取り出した。
それが、正式な“離縁状”だった。
スカーレットは、誰よりも優雅にそれを受け取り、
堂々とした筆致で自らの署名を――力強く、最後まで書き終える。
「これで、婚約は“正式に”解消されましたわね」
誰にも聞こえるように、清々しく言い放つ。
その表情は――満悦そのものだった。
(これで……これで私は、自由の身!)
(婚約式にも出る必要なし! 死亡エンド、回避完了!!)
そして彼女は、完璧な貴族の所作でドレスの裾を摘み、
セシルとマリアに向かって華麗に一礼する。
「殿下、聖女様。お二人の幸せを心よりお祈りいたしますわ」
会場が静まり返る中、スカーレットは踵を返した。
(よし、ここから去れば、任務完了!)
だが――
その時だった。
広間の扉の向こう。重たい扉がギィィ……と、軋んだ音を立てて開いた。
今日この場で何が起こるのか、予想もせぬ笑顔が貴族たちの間に咲いている。
スカーレットは、その中心に立っていた。
深紅の薔薇を散らした黒のドレスは、絢爛さの中に毅然とした気品を漂わせている。
装飾は控えめながら、細部まで仕立てに妥協はない。まさに今日の“舞台”にふさわしい装い。
(さあ――来なさい、“婚約破棄”)
そう心で呟いたその瞬間だった。
「オルビア・アリア・スカーレット!」
セシル王子の声が、会場に響いた。
「君には愛想が尽きた。マリアへの度重なる嫌がらせ……そんな女は信用ならぬ。婚約を破棄させてもらう」
その言葉に、会場がざわつき始める。
「きゃ……!」
「まさか、本当に婚約破棄……?」
「スカーレット様が、第一皇子殿下から――」
「まぁ、仕方ありませんわ。あの方は、貴族でありながら天使様からの加護を持たない唯一の令嬢ですもの」
「しかも聖女様にあんな仕打ちをしただなんて……」
スカーレットは、そんなざわめきにも微動だにしない。
ただ、冷静にセシルを見据え、にっこりと微笑んだ。
(ふふふ……来たわね。筋書き通り)
(なぁにが“嫌がらせ”よ。この一ヶ月、マリアに近づかないよう全力で逃げ回ってたのに。
嫌がらせする暇なんてあるわけないじゃない)
「承知いたしました、殿下」
その声は、まるで祝福でもするかのように明るかった。
「……っ!」
思わず言葉を詰まらせたのは、セシルだった。
(なんだ……なぜ、笑っている?)
スカーレットは優雅に会釈すると、セシルを見上げた。
「いえ、何もありませんわ、殿下。ですが――一つ、お願いがございますの」
「……な、なんだ」
「私に婚約破棄を命じるということは、当然、“離縁状”をご用意されているのでしょう?」
セシルは、明らかに動揺した。
「そ、それは……」
スカーレットはにっこりと微笑みながら、声のトーンを少しだけ低くする。
「……嫌ですわ、殿下。私の性格をよくご存知でしょう?」
「今はこうして婚約破棄を受け入れていても……明日には“やっぱり認めませんわ”なんて言い出すかもしれませんもの」
そう言いながら、セシルの隣に立つ聖女マリアへとちらりと視線を移す。
「せっかく……愛するお方と、巡り会えたというのに――」
「その方と添い遂げられないなんて、あまりにも残酷でしょう?」
「だからこそ、今、きちんと“終わらせる”べきですわ。私と、貴方の縁を」
スカーレットの強く美しい説得に、セシルは言葉を失う。
そしてついに――しぶしぶと懐から一通の封筒を取り出した。
それが、正式な“離縁状”だった。
スカーレットは、誰よりも優雅にそれを受け取り、
堂々とした筆致で自らの署名を――力強く、最後まで書き終える。
「これで、婚約は“正式に”解消されましたわね」
誰にも聞こえるように、清々しく言い放つ。
その表情は――満悦そのものだった。
(これで……これで私は、自由の身!)
(婚約式にも出る必要なし! 死亡エンド、回避完了!!)
そして彼女は、完璧な貴族の所作でドレスの裾を摘み、
セシルとマリアに向かって華麗に一礼する。
「殿下、聖女様。お二人の幸せを心よりお祈りいたしますわ」
会場が静まり返る中、スカーレットは踵を返した。
(よし、ここから去れば、任務完了!)
だが――
その時だった。
広間の扉の向こう。重たい扉がギィィ……と、軋んだ音を立てて開いた。
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