堕天使様との恋は前途多難です!〜この恋は筋書きにありません!〜

明夏 向日葵

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孤独な城への招待

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黒い森を抜け、霧が立ち込める小道を進む馬車の車輪が、がたんと軋む音を立てた。

「……着いたぞ」

ラファエルの静かな声と共に、スカーレットは馬車の扉を押し開ける。
そこで彼女の視界に飛び込んできたのは、まるで時間に忘れられたような古びた城――

セレスタイン城。

どこか寂しげで、冷たい石造りの荘厳な古城。
だが、不思議とその佇まいに、スカーレットは心を惹かれた。

(ここが……堕天使・ラファエルの唯一の居場所)

“闇属性の力”を持って生まれたラファエルに、
王・カリオスが与えた「追放と同義の城」。

重々しい鉄の門が静かに開いたとき、
そこに立っていたのは、優しげな雰囲気を纏った一人の老人だった。

「ようこそ、セレスタイン城へ。スカーレット嬢。クラウスと申します。以後、お見知りおきくださいませ」

「……クラウス様、ね」

(確か彼……ゲームの中でも、ラファエルが唯一心を許していた執事。
どんな時でも彼の傍にいて、最後まで支えた人……)

彼女の視線が、ラファエルの背中に向けられる。

「後のことはクラウスから聞け」

冷ややかな声が、振り向くことなく言い放たれる。

「いいか。お互いの生活には干渉しない。それが、この結婚を続けるための条件だ」

(……ふん、言われなくても干渉するつもりなんてないわよ。
だってあなたを怒らせたら、私の命はないも同然だもの)

そう心の中で毒づきながら、表情は微動だにせず微笑みを保つ。

「承知いたしましたわ、ラファエル様。私も静かな暮らしを望んでおりますもの」

ラファエルはそれ以上何も言わず、そのまま静かに廊下の闇へと消えていった。

「ふふふ……お嬢様、よろしければお部屋へご案内いたします」

「ありがとう、クラウス様」

老執事の背中についていきながら、城内を歩くスカーレット。
その足音は、やがて木製の扉の前で止まる。

「こちらでございます。あまり手の込んだ部屋ではありませんが……」

扉を開けると、そこには――

「……すごい……」

月明かりが差し込む、温かなベッドルーム。
ふかふかの寝具。磨かれた家具。季節の花が小さな花瓶に飾られ、
部屋の隅には読みかけの本が積まれている。

「もしかして……これ、クラウス様が?」

「ええ、ぼっちゃまには無断でございますが、
お嬢様を迎えるにあたり、できるだけ居心地よくと思いまして」

「……ありがとう、本当に」

彼女はそっとベッドの端に腰を下ろし、
この“監視のための婚姻”という名の逃げ場なき日々が始まったことを、改めて噛みしめた。

(……でも、ここで生き延びるわ。絶対に)

そして彼女はまだ知らなかった。

この古城での生活こそが、ラファエルの過去と、彼の“心”の奥底に触れることになる、長い長い旅路の始まりだということを――
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