堕天使様との恋は前途多難です!〜この恋は筋書きにありません!〜

明夏 向日葵

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堕天使様の婚約

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祝宴の終わり。
婚約破棄は成立し、次にスカーレットに待ち受けていたのは――新たな“婚約者”ラファエルの元への護送だった。

場所は、王都から遠く離れた“森の奥深くの古城”。

それは「堕天使」と恐れられるラファエルが住まう、闇に閉ざされたセレスタイン城。
もはや幽閉に近い婚約生活の始まりだった。

カツ、カツ……。

馬車の中は重い沈黙に支配されていた。

窓の外には霧のかかった森が続き、馬車の車輪の音だけが静かに響いている。

向かいに座るのは、漆黒の衣を纏った青年――ラファエル。

その瞳には氷のような冷たさが宿り、言葉一つ発せずスカーレットを睨んでいた。

重苦しい空気に耐えかねて、スカーレットが紅茶でも飲みたいと内心で呟いたそのとき。

「勘違いしているなら訂正しておく。――この婚姻は、君を“監視”するための婚姻だ」

その声は低く、抑揚こそないものの、鋭さは刃のようだった。

スカーレットは眉ひとつ動かさずに、にっこりと笑った。

(やっぱり、そう来たわね)

彼の言葉は、さらに続く。

「マリアに手出しするような真似をすれば――君には“死”をもって償ってもらう」

スカーレットは、その言葉にわずかに肩をすくめ、ため息をついた。

「ええ、そうでしょうとも。……まぁ、そんなことする気なんて、毛ほどもありませんけど?」

「口ではどうとでも言える」

「ええ、本当にそうね。私もあなたの“その台詞”、ゲームの中で百回くらい聞いたわ」

「……何?」

(あ、やば。心の声が出そうになった)

スカーレットは慌てて微笑みでごまかした。

(彼はゲームでも終始マリア一筋で、どれだけセシル王子に奪われようと、健気にマリアを守り続ける“忠義の男”。でも、だからこそ……スカーレットは殺されたのよね。マリアを“傷つける存在”として)

(……でも実際、私は何もしてないのよ!! どのルートでも悪役令嬢にされてただけなんだから!!)

「本当にあなたって、愛に生きるわよね……」

小さな声で呟くと、ラファエルの眉がピクリと動いた。

「何か言ったか?」

「いいえ? ただの独り言ですわ。……にしても、静かで素敵な森ですわね。何かしら……こう、眠くなってくるというか……」

(いや実際は“魔物出没率ナンバーワン”の危険地帯なんだけど)

ラファエルはそれ以上口を開かなかった。だがその視線は終始、スカーレットから外れることはなかった。

彼の心には、確かに“何か”が渦巻いていた。

――噂に聞いた極悪非道な悪役令嬢。

「俺は信じない。マリア以外ー。」

馬車は静かに、闇の城へと進んでいく。
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