堕天使様との恋は前途多難です!〜この恋は筋書きにありません!〜

明夏 向日葵

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悪役令嬢、嘘を暴く

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街の喧騒を抜け、石畳の坂道を上っていく。
目指す先は、月の神を祀る「星月の教会」。
そこは、スカーレットにとっても馴染みのある場所――だが、今はそれ以上に、「噂の根」を辿る鍵でもあった。

(街の人たちに聞き込みをした結果、噂の発信源はマリアの周囲にいた人間。中でも、噂を初めに口にしたのは……レビスだったことがわかったわ。彼女、ゲームの中でもほとんど影の薄い存在だったわよね。モブ中のモブ、名前だけのキャラ。だけど、確かマリアの教会仲間だった)

教会の門扉を開けると、木の香りと静謐な空気が鼻腔をくすぐる。
柔らかな光がステンドグラスを通して差し込んでいた。

「ようこそ……ご用件を伺っても?」

牧師は柔らかな笑みを浮かべて立っていた。
スカーレットは少しの間を置いて、静かに頭を下げる。

「失礼します。私、知人のレビスという女性に会いたくて来ました。ここで彼女が奉仕活動をしていると聞いたのですが……」

牧師はふと表情を曇らせる。

「レビス嬢ですか……残念ながら、ここ数日、姿を見せていません。ご家族からも心配の声がありましてね。……私共も手を尽くしているのですが」

(……まさか。噂の発信源が“行方不明”?)

スカーレットの胸がざわつく。

(タイミングが良すぎる。もしくは、悪すぎる。何かが起きてる)

思い切って、ダメ元で切り出した。

「あの……これは突飛なお願いかもしれませんが、レビス嬢が置いていった物の中に“手紙”はありませんでしたか? 聖女マリア様に宛てたものなのですが…。」

牧師は驚いた顔をしたが、やがて小さく頷いた。

「……マリア様宛か、までは分かりません。ただ、レビス嬢がいなくなる前日、机の上にこんな手紙が置かれていたのです」

彼は奥の部屋に入り、一通の封筒を持ってきた。
古びた羊皮紙に、丁寧な筆跡。封は開かれている。

スカーレットは指先が震えるのを抑えながら、中身を手に取った。

――そこには、明らかにスカーレットの名を騙り、聖女マリアへの敵意を匂わせる文が綴られていた。

「平民出身の貴女が王太子と結ばれるなど、許されることではない。
セシル様のそばから消えて。さもなくば――」

(……こんな手紙、私じゃない。書いた覚えなんて、一切ない!)

息を詰めるスカーレットの瞳に、牧師は静かに語りかけた。

「実は……手紙には不思議な点がありました。インクの一部が変色していたのです。普通のものであれば、年月が経たなければ色が変わることはありません。もしかすると、魔力が使われた“偽筆”かもしれません」

スカーレットは目を見開く。

(魔力による偽筆……それなら、誰かが意図的に“スカーレット”の名前でこの手紙を仕立てたということ。じゃあやっぱり、誰かが私を貶めようとしてる……!)

彼女は手紙をそっと畳み、深く息を吐いた。

スカーレットは静かに礼をして、教会を後にする。

(レビス。噂を流した貴女がなぜ姿を消したのか。そもそも、なぜこんな手紙を――)

風が吹き、フードの奥から赤髪がわずかに揺れた。

彼女の瞳はまっすぐに、遠くを見据えていた。

「この手紙、必ずアーサーに渡さなきゃ」

スカーレットはそっと胸に手を当て、ナイトの待つ裏道へと歩き出した――。
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