堕天使様との恋は前途多難です!〜この恋は筋書きにありません!〜

明夏 向日葵

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堕天使様の愛情表現

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朝の柔らかな陽光がダイニングに差し込む。
クラウス様が丁寧に並べた朝食の香りが漂い、いつもの朝の静けさが城に広がる。

スカーレットはナプキンを整え、向かいの席に座るはずのラファエルを探した。
だが、目に入ったのは――ラファエルが自分の隣に腰を下ろしている姿。

(え、ちょ、待って……なんで……!?)

心臓が一気に跳ね上がり、頬が熱くなる。
思わずスプーンを握る手に力が入る。

ラファエルは、にこりと微笑みながらスカーレットの腰に手を軽く添えると、ぐっと引き寄せた。
思わず息を詰めるスカーレット。隣に座る距離ではなく、もはや体が密着してしまうほどの近さだ。

「……ラファエル様、一体、な、なにを……?」

小声で問いかけるも、彼はゆったりとした声で答える。

「……お前がそばにいると、安心する」

その一言に、スカーレットの心臓はさらに跳ね上がる。
鼓動が、はっきりと耳に届くほど近い距離。思わず息を整える。

ラファエルは静かにスープを口に運び、スカーレットに視線を送るでもなく、自然体で朝食を楽しんでいる。
だがスカーレットは落ち着けない。スプーンを持つ手がわずかに震え、食欲よりも隣にいるラファエルの距離感に意識が奪われる。

「……落ち着け、私……普通に……普通に食べるのよ……」

心の中で何度も自分に言い聞かせながらも、肩越しに感じる彼の存在に、思わず背中がぞくぞくする。
視線を下げると、ラファエルの腕が自然に自分の腰に添えられたままなのを見て、さらに動揺が加速する。

「……ラファエル様……」

声にならない小さな吐息とともに、スカーレットはそっとスープを口に運ぶ。
口元に浮かぶ小さな微笑みをラファエルは見逃さず、ただ隣で静かに微笑んでいる。

朝の光と温もり、そして彼の体温に包まれながら、スカーレットの心は一層甘く、もどかしく揺れるのであった。

スープを飲み終え、スプーンを置いたスカーレット。
やっと落ち着ける……と思った瞬間、ラファエルの体がさらに小さく距離を詰めてきた。

「……ラファエル様?」

耳元に届く低く落ち着いた声に、思わず声が震れる。
スカーレットの頭の中は、完全にパニック状態。

(え、え、ちょっと待って!?彼、冷酷無慈悲な堕天使様よね!?)

(この前まで、私をずっと監視してたじゃない!それなのに……)

(き、急に態度が変わりすぎて……私、どうすればいいの!?)

ラファエルは、スカーレットの肩にそっと手を添えたまま、静かに微笑む。
「……もう、安心していいよ」

その声に、スカーレットの思考は完全に停止。
鼓動はバクバク、体はこわばり、頭の中が真っ白になった。

「……あ、あの、な、なにを……?」
言葉にならない。問いかけようとするたび、ラファエルの瞳が深く見つめるたび、喉が詰まる。

彼は視線を逸らさず、静かに、しかし確実に距離を縮めていく。
肩が触れ、腕が密着し、腰のあたりまで軽く寄せられる。

「……お前のそばにいると……本当に落ち着くんだ」

その一言で、スカーレットの頭は完全にパニック。
(え、えええ!?落ち着く…!?この距離で!?心臓、どうにかなっちゃう!)
思考が全く働かず、ただ体が反応するだけ。

ラファエルは微笑みを崩さず、スカーレットの手にそっと触れる。
「あまり驚くなよ。……今日は、ずっと一緒にいてほしいだけだ」

「う、うぅ……は、はい……」
スカーレットは小さく頷くのが精一杯。頭は真っ白、心臓はドクンドクンと大暴れ。
何が起きているのか理解できず、ただラファエルの体温と鼓動の近さに意識が支配されてしまう。

ラファエルはそのまま優しく微笑み、スカーレットを見つめ続ける。
スカーレットは思考停止のまま、胸の奥に甘く、熱い感情がじわじわと広がっていくのを感じていた。

(……え、どうしよう……私、この距離……耐えられない……)
それでも、逃げられない。逃げる気も、なぜか起きない。
ただ、彼の隣で、甘くて少し怖い、心臓の高鳴りに身を委ねるしかなかった。スカーレットの胸はまさに爆発寸前だった。
ラファエルの腕と腰の距離、近すぎる体温、そして甘い声……

「ラ、ラファエル様……!き、急な密着は……私の心臓が持ちませんのっ!し、失礼いたしますわーー!!」

顔を真っ赤にして、スカーレットは椅子から飛び上がるように席を立った。
そのまま足早に、朝食のテーブルから去っていく。

ラファエルは、そんなスカーレットを見送る。
微かに口元を緩め、ふふ、と静かに微笑むだけだった。

***
ヴィラベラ王妃とマリアが向かい合い、低い声で密談していた。

「スカーレット嬢……まずあの子を、どうにかしなければならないわね」

マリアの声には、柔らかい微笑の奥に冷たい野心が潜んでいる。

「ええ。……彼女を“罪人”に仕立て上げるのです。聖女マリアを殺そうとした罪――そうでっち上げれば、誰も疑わないでしょう」

ヴィラベラはテーブルに肘をつき、指先でゆっくりと紅茶の縁を撫でる。
その瞳には、獲物を狙う鋭い光が宿っていた。

「罪をでっち上げて……スカーレットを処刑する、と」
マリアが小さく頷く。

「ふふ……王宮中の噂や証拠も、我々の手で操作すれば、十分に可能ですわ」

二人は微笑みを交わす。
その微笑みの裏には、暗殺計画の歯車が静かに動き始めたことを示す、冷たい決意があった。

──王宮に潜む“闇の計画”。
次に動くのは、スカーレットが最も警戒すべき時――彼女の無垢な笑顔や善意を逆手に取る形で、運命は静かに、しかし確実に迫っていた。
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