堕天使様との恋は前途多難です!〜この恋は筋書きにありません!〜

明夏 向日葵

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近づく距離

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ベッドの隣で、スカーレットは目を覚ました。
ふと視線を上げると、そこには穏やかに眠るラファエルの顔。柔らかな寝息と、筋の通った綺麗な鼻、長いまつ毛の影——。

(……あれ? 私、昨日……薬を塗ったあと、ここで寝ちゃったのね)
彼を起こしてしまわないよう、慎重に手をそっと離す。布団から出ようとしたその瞬間——腕を掴まれた。

「……行かないでくれ。そばにいてくれ」

はっと息をのむスカーレット。ラファエルはまだ眠ったままのようだ。

(……寝てるのよね? でも、私がそばにいて、ラファエル様がぐっすり眠れるなら……)

スカーレットはそっと手を伸ばし、ラファエルの顔に触れる。指先が、彼の綺麗な鼻筋をなぞる。
小さな鼓動が胸に伝わる——本当に、彼は美しい顔をしている。

(……このまま、もう少しだけ。そばにいさせてほしい……)

二人の間には、言葉のない温もりと、互いを思う気持ちが静かに広がっていた。

スカーレットはそっとラファエルの寝顔を見つめながら、指先でその鼻筋をなぞる。
柔らかな光が彼の頬を優しく照らし、長いまつ毛がゆっくりと揺れる。

「……本当に、綺麗な顔……」

心の中で小さく呟いたその瞬間、ラファエルの瞼がかすかに動いた。
ゆっくりと、ゆっくりと目を開ける。まだ眠そうで、けれど、微かに意識が戻ったその視線が、スカーレットを捉えた。

「……スカーレット……?」

低く、少しハスキーな声が耳に届く。スカーレットの胸が跳ねる。
「……おはようございます、ラファエル様……」

声が震えそうになるのを必死に抑え、彼の腕をそっと握り返す。
すると、ラファエルはその手を優しく握り返し、身体を少しだけ引き寄せた。

二人の顔の距離が、自然に近づく。
目と目が触れ合い、息遣いが互いに伝わる。

(……こんなに、近くにいる……)

ラファエルの瞳は柔らかく、けれど少し緊張しているようで、まるで心の奥を覗かれるような気持ちになる。
スカーレットも呼吸を止め、思わず顔を近づける——唇が触れそうな距離まで。

「……スカーレット……」

囁くような彼の声に、スカーレットの心臓が飛び跳ねた。
二人の距離は、今にもキスが起きそうなほどに迫っている。
けれど、ラファエルはわずかに顔をそらし、微笑んだ——ほんの少し、いたずらっぽく。

「……まだ、目を覚まして間もないからな……」

その言葉に、スカーレットは小さく笑い、彼の手をぎゅっと握り直す。
「……わかりました。でも、もう少しだけ、そばにいてもいいですか……?」

ラファエルはその問いに、静かに、そして確かにうなずく。
二人の間に漂う甘くて柔らかな空気は、まだキスには至らないけれど、心と心が確かに繋がった瞬間だった。

──繋がれた手の温もり、互いの呼吸、触れそうで触れない距離。
そのすべてが、二人の間に芽生えた小さな恋の火を、そっと揺らしていた。
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