堕天使様との恋は前途多難です!〜この恋は筋書きにありません!〜

明夏 向日葵

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守りたいもの

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夜風が強く吹く中、ラファエルは剣を振るい、刺客たちを次々と撃退していった。
仮死状態のスカーレットを抱えたままの戦いは、通常の倍の困難を伴った。

「……逃がすわけにはいかない!」
冷酷な堕天使の瞳に炎が宿る。
影のように素早い動きで矢を避け、剣で刺客の攻撃を払いながら前へと進む。

しかし、最後の刺客が放った一矢は、彼の肩に深く刺さった。
「……っ!」
鋭い痛みと共に、ラファエルは矢の異質さに気づく。
指先で矢を押さえると、先端には微かに緑色の毒が滲んでいた。

「……くそ……毒……!」
仮死状態のスカーレットを抱え、ラファエルは力を振り絞ってセレスタイン城へと駆ける。
胸に走る痛みが増し、視界がかすむ。

やっと城門を抜けた瞬間、毒が全身に回ったのか、ラファエルの体が重くなる。
吐血と共に膝をつき、仮死状態のスカーレットの腕の中で崩れ落ちた。

「ラファ……エル様……!?」
ゆっくりと意識が戻るスカーレットの瞳に、目の前で血を吐き、呼吸もままならないラファエルの姿が映る。

「……私……どうすれば……!」
彼女は慌てて手を伸ばし、ラファエルの体を支える。
胸の奥が張り裂けるように痛む。
仮死状態から覚めた自分の生命を意識しつつも、ラファエルの命を救うため、スカーレットの心は一瞬で決まった。

「……ジルベール様……!
どうか……助けてください……!」

スカーレットは、まだ微かに意識のあるラファエルを抱え、夜の闇を駆け抜けた。
吐血で重くなった体を支えながら、ただ一つ──
「絶対に助ける……ラファエル様を!」

夜風が二人の影を押し流す。
そして、セレスタイン城から逃れるスカーレットの胸には、焦燥と決意が渦巻いていた。

***

魔王城・暗く静かな医療室。
スカーレットは震える手で、意識の薄れたラファエルを抱きしめていた。

「……スカーレット、落ち着いて。まずは毒を取り除く必要がある」

ジルベールは冷静に指示を出しつつ、ラファエルの肩に刺さった矢を慎重に抜き、解毒薬を注入する。
薬液が血管に回るにつれ、吐血は次第に収まっていく。

「……どうですか?」
スカーレットが問いかける。
ジルベールは深刻そうに首を振った。

「毒の拡散は止められた。だが完全な治癒には、月の力が必要だ」

「月の力……?」

ジルベールの眼差しは静かに、しかし鋭くスカーレットを見据える。

「お前自身に秘められた“ノクシア”の力だ。使えば、ラファエルの体内の毒を完全に浄化できる」

「ノクシア?私には加護なんて…。」

ジルベールは静かに頷く。
「お前はずっと加護がないと思っていたかもしれない。だが、ノクシアはお前自身の体に眠っている力だ。使い方さえわかれば、ラファエルを救える」

(私……本当に、加護なんてあるのかしら。
ずっとないと思ってたのに……でも、彼を助けるためなら、試してみるしかない)

スカーレットは静かに息を整え、ラファエルの顔を見下ろす。
胸の奥で熱い決意が燃え上がる。

(ラファエル様……こんなにも、迷いなく私を助けに来てくれた……
なら、私だって、全力で彼を救うわ!)

ジルベールが説明を続ける。
「ただし、ノクシアの加護を使えば、お前の力は半分ほど減る。怪我の回復が遅くなり、疲れやすくなるかもしれない」

スカーレットは微笑みながら首を振る。
「構いませんわ。ラファエル様を助けられるなら、私の加護が半分になっても問題ないです」

心の中で、小さく誓う。
(彼の命が最優先……それだけが、今の私のすべて)

ジルベールは深く頷き、慎重にスカーレットにノクシアの加護を注入する準備を始める。
スカーレットは力強くラファエルを抱きしめながら、心の中で静かに念じた。

「ラファエル様……どうか、私の力で……助けさせてください」

その瞬間、月の光が魔王城の窓から差し込み、二人の影を静かに照らした。

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