堕天使様との恋は前途多難です!〜この恋は筋書きにありません!〜

明夏 向日葵

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君と静かな夜

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夜の静寂がセレスタイン城を包む。
スカーレットはラファエルの胸にそっと顔を埋め、深く息を吐いた。
一日の疲れと緊張、そして甘い安堵感が、彼女の身体をゆっくりと沈めていく。

「……すぅ……」
小さな寝息を立て始めるスカーレットの頰に、ラファエルはそっと手を添え、優しく撫でた。

その指先の温もりと力強さに、彼女の呼吸はさらに穏やかになり、目は閉じられていく。

ラファエルは小さく息を吐き、静かに呟く。
「マリア以上に愛おしい存在ができるなんて、思ってもいなかった……」

その声は誰にも届かぬほど小さく、しかし確かな感情を帯びていた。

「いつも……どんな時も、俺のそばにいてくれて……俺に光を与えてくれる……俺の聖女」

胸の奥で深く感じる愛おしさに、言葉が自然と溢れる。

「……いつの間にか、俺は……とっくにお前に恋をしていたんだな」

静かにスカーレットのおでこに唇を落とす。
柔らかく温かいその感触に、眠りかけた彼女の身体は小さく震える。

そしてラファエルは、スカーレットを自分の胸にしっかりと抱きしめる。
互いの呼吸が重なり、心が重なり合う瞬間。
そのぬくもりに包まれながら、ラファエルも静かに目を閉じる。

夜は深く、しかし二人にとっては、初めての“完全な安らぎ”の時間だった。
穏やかで、甘くて、切ない――
悪役令嬢と堕天使の、二人だけの静かな夜。

***

柔らかな朝日が魔王城の窓から差し込み、薄いカーテンを通して部屋をほんのりと照らす。
スカーレットはまだ夢の余韻に包まれたまま、ラファエルの胸に顔をうずめている。

「……ん……」
小さく伸びをしながら目を開けると、隣にいるラファエルの胸に感じる温もりと、鼓動の力強さに改めて気づく。

ラファエルも微かに目を開け、半分眠ったままスカーレットの髪を指で優しく梳く。
「……おはよう」
低くて甘い声が、まだ眠気の残るスカーレットの耳に届く。

「……お、おはようございます……」
顔を赤く染めながらも、スカーレットは胸の温もりを離せずにいる。
ラファエルは小さく微笑み、彼女の肩に手を回して引き寄せる。

「朝からこんなに近いのは……ずるいですわ……」
「ずるい? 俺がそばにいたいだけだ」
指先で彼女の顎をそっと持ち上げ、視線を合わせるラファエル。
その目には、昨夜の甘いぬくもり以上の愛情が宿っていた。

「……ラファエル様……」
スカーレットの心臓は、まだドキドキと爆発しそうなほど高鳴っている。

「お前がここにいるだけで、朝の光よりも心地いい」
低くて甘い声に、スカーレットは思わず顔を胸に埋めたまま、ぽつりとつぶやく。
「……私も……ラファエル様と一緒にいると、安心します……」

ラファエルは笑いながら、そっと彼女の髪に唇を落とす。
「そうか……それなら、今日も一日、このままでいよう」
そのまま抱きしめ、互いのぬくもりを確かめ合うように少しの間、静かな朝の時間が流れる。

窓の外では、朝の光が城内をやさしく満たす。
だが、スカーレットとラファエルにとって、朝の光よりも甘くて柔らかいのは、互いの胸のぬくもりだった。

****

王宮、王妃の私室。ヴィラベラは大理石の机に手をつき、窓の外に広がる庭園を鋭い目で見つめていた。

「……なるほど、仮死状態で脱獄するとは、スカーレットもなかなか考えるようになったわね」
マリアが悔しげに口を噤む。

「貴女の小細工は見抜いている。手を尽くして、あの二人を共に消すのが最良の策」
ヴィラベラは冷たく微笑み、手元の書類を指先で撫でる。

マリアは瞳を鋭く光らせる。
「だからこそ、最終手段を使いましょう。誰にも知られず、二人を同時に手中に収める方法……」
マリアの指先が机に置かれた小さな宝石の上で光を帯びる。

「私の真の力――《レーヴ・オブスキュール(Rêve Obscur)》
“優雅な月の夢”と見せかけ、対象の心を奪い、思考すら操る。傀儡を作り出すことも可能……」
マリアの口元に微笑が浮かぶ。

「……これで、スカーレットもラファエルも、私たちの手の中に落ちる」
ヴィラベラは静かに頷き、マリアの計画書に目を落とした。

二人の女の野望が、影となって王宮を覆い始める。
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